日本の核武装化をめぐる動き・江原 元
  「日本の核政策に関する基礎的研究」   1994年11月13日(朝日新聞)

「核開発可能だが持てぬ」
佐藤内閣、68・70年に秘密研究報告書
外交・財政から判断 非核3原則裏づける


冷戦さなかの1967年から約2年半にわたって、当時の佐藤内閣が日本の核武装の是非について、蝋山道雄上智大教授(当時、国際文化会館調査室長)をはじめ著名な国際政治学者、科学者ら十数人を集めて秘密研究をし、68年と70年の2回に分け報告書をまとめていた。朝日新聞が入手したこの研究報告書は、日本は(1)プルトニウム原爆の少量開発は可能(2)だが、核武装すれば周辺国の疑いを招き、外交的孤立は必至(3)わずかな核兵器で抑止力を維持するのは困難(4)財政負担も巨額(5)国民の支持が得にくい、などとして「核戦力は持てない」と明確に結論づけている。これは同政権が打ち出した非核3原則を理論的に裏づけたとみられ、佐藤栄作首相も内容を知っていたと関係者は証言している。

「日本の核政策に関する基礎的研究」と名づけられた報告書は、内閣調査室が外郭団体の社団法人「民主主義研究会」に委託する形で作成。旧海軍幹部や防衛庁、大蔵省の幹部、兵器産業関係者らの意見も聞いた。
報告書によると、この研究会は「独立核戦力創設の可能性」を検討した。技術の面では、当時日本にプルトニウムの再処理施設がなかったことなどの事情をあげながらも、起爆技術の開発がたやすいことや、8年程度で誘導装置の実用化が可能になるとの見通しを示した。
一方、技術者らの動員、また国民の支持を得るのにも困難があると指摘。財政面でも、核兵器に関する国連報告の試算に基づいて、当時、国際的に最小限の抑止力とみられた核戦力を持つのにも、当時の金額で10年間で年平均2000億円余りを要するとして、至難であるとした。
戦略面では、日本が中途半端な核武装をすれば、抑止力のバランスが崩れて中国やソ連(当時)の核攻撃を受ける可能性にも言及。米国の影響力排除をめざして政治的な意図から核武装したフランスと異なり、日本が核武装すれば外交的に孤立し、「安全保障が高まることにはならない」と指摘している。
研究が行われたのは、ベトナム戦争で東西対立が激化した時期。国内では67年末に佐藤首相が非核3原則を表明する一方で、核不拡散条約(NPT)の調印や沖縄の「核抜き」返還問題などを抱え、核政策の節目を迎えていた。研究メンバーの1人は「NPTに入って経済成長への原子力エネルギーを確保しなければならない、という切迫した事情もあった」と話す。
また、第2報告書は結論部分で「核兵器の所有が大国の条件であると考えうる時代はすでに去った」とも説いている。
報告書の作成時と比べ、日本を取り巻く核環境は変わった。プルトニウムを抽出する再処理工場が70年代に完成して稼働中で、技術面では報告書当時の障壁はほとんど乗り越えられている。このため、プルトニウム貯蔵と利用計画に国際的な疑念の目が向けられるなど、日本も核拡散問題の当事国とされている。期限切れに伴うNPTの再検討会議を来春に控え、軍縮専門家らは、能力はあっても核保有の選択を否定するとした報告書が「わが国における、冷戦後の新たな核政策づくりの原点ともなる」と話している。


1994年11月13日(朝日新聞)

日本の核政策に関する基礎的研究  [要旨]

内閣調査室からの委託でまとめられた「日本の核政策に関する基礎的研究」の要旨は次の通り。
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第1報告書(68年9月)
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第1章 核爆弾製造に関する問題点
日本が核爆弾を製造する場合、核分裂物質としては現在、濃縮ウランの製造能力がないからプルトニウムを材料にするほかない。プルトニウムは今でも東海村の原子炉で年間約100発たまるが、国際原子力機関(IAEA)の管理下にあり、軍事利用はできない。制約を無視するとしてもプルトニウムを核爆弾の素材とするには、再処理技術が必要で、計画中のプラントが動き出す1972年以降まで不可能。
かりにプルトニウム原爆ををつくるなら、起爆法としてはインプロージョン(内方爆圧)で、日本の技術水準から比較的容易に解決できると思われる。

第2章 核分裂性物質製造の問題点
世界的に1970年代半ばから後半にかけて原子力発電が電力生産の重要部分を占めると予想され、有利な原子炉は濃縮ウランを使う軽水炉である。日本も独自の濃縮ウラン製造能力を持つことが要請される。75年ころ日本独自の方法を選定し、80年代半ばまでに濃縮ウランの製造プラントを建設するようなスケジュールが考えられる。
濃縮方法はガス拡散法、遠心分離法、新しい技術による方法の3つがあるが、現在可能なのはガス拡散法だけ。遠心分離法は技術的に不可能ではないか。

第3章 ロケット技術開発の現状
(米国の弾道ミサイル潜水艦)ポラリス・ミサイル程度の戦略ロケットに使う固体燃料については技術的には可能。しかし、兵器として現在直ちに製造することは困難で、少数生産ではコストが高くつき、量産態勢にもって行くには相当の期間を要する。液体燃料についても技術的には軍事ロケット用燃料製造が可能と思われる。

第4章 誘導装置開発の現状
(ミサイルを目的地に到達させる)誘導装置の問題が解決しないと、軍事的には有用なミサイルにはならない。慣性誘導装置の開発については技術者や基礎資料が不足し、実用化までにはおおざっぱにみて8年くらい必要。

第5章 人的・組織的側面
核武装するためには、人的資源と組織的諸困難が大きい。国家的大規模な計画を必要とするが、機能化には日本的風土に固有の大きな隘路(あいろ)が予想される。そのような大計画には国民的規模での支持が不可欠で、困難が予見される。

第6章 財政上の問題点
ウ・タント国連事務総長報告の例でも小規模高性能核戦力(フランスの小型版)で10年間に年平均2016億円を必要とする。現在および近い将来の日本の財政状況からみてもきわめてむずかしい。

結び
単にプルトニウム原爆を少数製造することは可能で、また比較的容易だろう。しかし、近い将来有効な核戦力を創設するというのであれば、前述のような困難がある。日本の核戦力創設能力の検討に当たっては、技術的、財政的、人的・組織的条件だけからは最終結論を導き出すことは不可能。さらに戦略的、国民心理的、外交的側面について十分な検討を加える必要がある。

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第2報告書(70年1月)
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第1章 中国の核の脅威について
省略。

第2章 日本の直面する核戦略上の問題
日本が中途半端な核武装を行うならば、抑止に失敗して核攻撃を受けるかも知れないということを十分考慮に入れておく必要がある。
日本は核攻撃に対してきわめて脆弱(ぜいじゃく)な体質を持っている。総人口の50.1%が、総面積の18.9%を占めるに過ぎない東海道メガロポリスに集中し(68年10月現在)、主要産業もその地域に集中している現状にあっては、たった1発の水爆の爆発をも許容することはできない。

第3章 核武装と外交・政治問題
フランスの核武装は、実は米国の大きな核の傘の庇護(ひご)の下で、自国の上に小さな核の傘を広げたに過ぎない。欧州では、フランスの核武装が米国をいら立たせたということはあっても、他のNATO諸国をして脅威と感ぜしめたことはない。しかし日本が核武装したならば、単に中国に一層の警戒心を抱かしめるばかりでなく、ソ連や米国の対日猜疑心(さいぎしん)を高める結果になることはまず疑いのないところである。日本の外交的孤立感は上限のない階段を登り続けなければならなくなるだろう。

結論
日本の安全保障が高まるという保証があるとすれば、核武装は1つの政治的選択として考慮する価値があろう。しかし、これまでの分析を通じて、日本の安全保障が核武装によって高まるという結論は出てこない。
日本は、技術的、戦略的、外交的、政治的拘束によって核兵器を持つことができないのであるが、そのことは日本の安全保障にとって決してマイナスとはならないだろう。核保有国となることによって、たとえ国威を宣揚し、ナショナリズムを満足させることができたとしても、その効果は決して長続きすることができないばかりでなく、かえって新しいより困難な拘束条件を作り出してしまうからである。
核兵器の所有が大国の条件であると考えうる時代はすでに去った。核時代における新しい大国としての日本は、国家の安全保障の問題を伝統的な戦略観念からではなく、全く新しい観点から多角的に解決して行かねばならぬよう運命づけられているのである。

1994年11月13日(朝日新聞)

冷戦後、問われる「非核」
除かれた技術の壁 新たな理論の構築必要

このほど朝日新聞が入手した2部構成の報告書「日本の核政策に関する基礎的研究」は、核兵器の作り方から戦略・外交的側面の分析にいたるまで、2年余にわたって積み重ねられた共同研究を踏まえたものだ。
報告書の記述の一部には冷戦後の現状にそぐわないものがある。しかし、核武装に関して初めて各専門分野の知恵を結集したものとして、模索の段階にあった日本の原子力政策、安全保障政策の大きな指針となったことは間違いないようだ。(編集委員・小田川 興、政治部・峰久和哲、外報部・北島重司)

共同研究に参加したのは、垣花秀武東工大教授(元国際原子力機関次長)、永井陽之助東工大教授(現青山学院大教授)、蝋山道雄国際文化会館調査室長(現上智大教授)、上智大教授を務めた故前田寿氏ら。
67年の初夏以降、1カ月に1回のペースで研究会を開き、68年夏には軽井沢で合宿して討論を行った。その成果を踏まえて同年9月、技術面、組織面を中心にまとめた第1報告書(72ページ)を出した。研究会はその後も69年秋まで続き、70年1月に蝋山氏が戦略面、外交面を分析した第2報告書(32ページ)をまとめた。報告書は約200部ずつ印刷されたという。
内調の担当職員の1人は、「協力したことが知れると、学者としてのイメージダウンになることを心配していた人もいた」と回想する。定例研究会の部屋を予約する時にも内調の名は一切使わず、秘密保持に心を砕いたという。
旧海軍出身で、当時、防衛庁の技術担当参事官を務めた夏村繁雄氏は「防衛庁内部の議論では海幕の中に核武装論を唱える人がいた。ソ連の脅威にどう対処するかという問題を突き詰めれば、日本も核がなければだめだ、という結論になる。理論的には私も反論できなかった」と語る。81年3月30日の参院決算委員会で問題にされた、「わが国における自主防衛とその潜在能力について」という著者不詳のリポートは68年ごろに作られており、その中では日本が核武装するならSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)が最適とされていた。
日本が核保有能力のある国として初めて名指しされたのもこのころだ。68年7月に米原子力委員会は議会に提出した資料で、「十分に高度な核兵器の相当量とその運搬システムを、他国の援助なしに5年から10年以内に製造する能力のある国」として、日本など7カ国を挙げた。
当時、日本国内では核不拡散条約(NPT)調印に関しては賛否両論があった。そのころ外務省で核不拡散問題を担当していた金子熊夫東海大教授は、「外務省内には(核武装の)選択の余地を残さなければならないという意見もあった。核を頭から悪と決めつけるのではなく、冷静に利害得失を計算したうえで署名する、という趣旨の文書が省内で作られたことがある」と話す。
第1報告書は、日本には(1)ウラン原爆製造に必要な濃縮技術がない(2)プルトニウムを抽出する再処理技術がない(3)弾頭を目的地まで飛ばす慣性誘導装置の実用化までには8年間くらい必要──などの技術的問題点を指摘した。しかし、これらの問題点は今、ほとんど取り除かれている。
例えば、動力炉・核燃料事業団は79年、岡山県・人形峠事業所でウラン濃縮のパイロットプラントの運転を開始した。この濃縮技術は92年3月に操業を開始した民間の日本原燃・六ケ所村の商業プラントに引き継がれている。濃縮方法は遠心分離法で、世界最高水準といわれている。
使用済み燃料の再処理工場も、動燃が71年から茨城県東海村に建設を始め、77年に取り出すことに成功している。この再処理工場に今年度着工予定のリサイクル機器試験施設(RETF)は、兵器級といわれる純度の高いプルトニウム239を作り出す技術開発として反核グループの非難を受けている。
さらに、宇宙開発事業団は86年8月、自主開発の慣性誘導装置を乗せたH1ロケットの打ち上げに成功した。
このように技術的な困難が次々に解消された今、報告書の記述は皮肉にも、日本に核兵器開発能力があることの証明にすらなっている。現代の視点で理論の再構築をしなければ、日本が核武装しないことの裏付けは十分とはいえない。

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三沢に「核弾薬整備班」 米空軍 公式組織図に明記
米空軍三沢基地(青森県三沢市)に、核弾薬の整備を専門に担当する部隊が配備されている疑いが、基地の公式の部隊組織図から浮かび上がった。常駐するF16戦闘機が核爆弾搭載可能であることは米軍当局も認めている。ただちに核兵器の「常駐」を意味するものとは言えないが、「通過」や「立ち寄り」を指摘する関係者の声を強い。在日米軍で「核」を明記した部隊が明らかになったのは、1981年の沖縄駐留の海兵隊・辺野古弾薬庫の核弾薬小隊(NOP)に次ぐものだ。
F16を運用する第432戦術戦闘航空団の組織を表した図には、「NUCLEAR MUNITIONS MAINT」という部隊の名前が記されている。整備担当副司令官直属の装備品整備中隊の弾薬分隊の中に組み込まれており、直訳だと「核弾薬整備班」となる。
組織図は、同基地が作成した公式の文書。一昨年暮れ、米国の航空専門誌が「F16のエンジンに欠陥」と報じ、三沢市が三沢基地に説明を求めた。
これに対し、基地側は「整備の現場を見てほしい」と市幹部を招待。整備状況の説明の場で資料として配布されたのが、この組織図だった。
三沢基地の内部資料によると、装備品整備中隊は滑走路北側の弾薬庫地区にあり、中隊長以下、軍属も含め約360人。弾薬分隊など5つの分隊で構成されている。
同基地に長く勤めている日本人従業員によると、F4戦闘機が配備されていた70年代初めまでは、弾薬取扱員の資格を取り、特別の通行パスがあると出入りできたが、F16配備後は、日本人の立ち入りは認められなくなった、という。弾薬庫周辺には高い照明灯が設けられ、警備も厳重だ。
これについて、三沢基地報道部は「核兵器の使用、適用については議論しないのが、長年にわたっての米空軍のポリシー」として、その存在を否定も肯定もしていない。また、外務省北米局安全保障課は「そのような組織図は受け取っていないし、米側からも報告を受けていない。(核が)持ち込まれていることにはならない」としている。

鈴木重令市長の話 ありうべからざる存在、と言わざるを得ない。米軍には早急に照会し、どのような部隊なのか、納得できる説明を求めたい。(朝日新聞 1990/12/11)

“有事”訓練 陸自学校、占領下を想定 蜂起/破壊工作/家族の名で新聞投稿
陸上自衛隊の調査学校(東京都小平市)で、外国に占領された場合を想定し、宣伝文やアジ演説によって民衆の蜂起(ほうき)を促したり、破壊工作や盗聴などの非正規戦訓練を行っていたことが27日、関係者の証言や内部資料で明らかになった。「心理戦防護課程」と呼ばれる教育課程の一環で、実習では、他人の名前を使って自衛隊に有利になるような投書を新聞に投稿する訓練も行われていた。
調査学校は、外国語の習得と情報教育を目的に1959年に設立された。心理戦防護課程は同校に10ある情報教育課程の1つ。期間は15週間で、三佐以下の陸上自衛官が対象。受講者は毎年10人前後で今年度は8人が在籍している。
有事に仕掛けられる心理戦に備える目的をもつが、防衛庁はこの教育課程について、自衛隊法施行令で調査学校の目的を「情報関係部隊の運用等に関する調査研究を行う」と規定している以外は、その内容を明らかにしてこなかった。
同課程の内容を明らかにしたのは、10年ほど前に受講した幹部自衛官。平時に左翼思想から自衛隊を「防護」する教育に加え、「日本が他国に占領された時に、敵の後方に潜入して対抗勢力を組織し、扇動により蜂起させる訓練」も行われたという。
また受講生が終了時にまとめた文集や受講生OBの機関紙「青桐」などによると、1日8時限で座学と実習に分かれ、「欺騙(きへん)」「扇動」「偵察」など科目ごとに専門教官が担当している。
座学では、旧北ベトナム軍などの非正規戦活動や組織作りなどを題材に、侵略された場合に民衆に紛れてひそかに扇動や破壊を行う方法などについて学ぶ。
また実習では、暗やみでの書類撮影など特殊カメラ技術の習得や、民衆に蜂起を促すような内容のアジ演説の草稿を自分たちで実際に作って演説する訓練なども行われたという。
この中では、全国紙の投書欄の傾向を分析し、実在する隊員の家族の名前を使って、自衛隊に有利になるような投書をするものや、駐屯地を利用して民間人を装い、建物内部に侵入して宣伝ビラを張ったりする訓練も含まれていた。卒業文集には、当時の受講生が全国紙に投稿して掲載された6つの投書記事も載っている。
この幹部隊員は新聞投稿の訓練について「どうすれば載るか工夫して投稿するが、互いに掲載回数を競うこともあった。名前を借りた相手にはきちんと断った」と言っている。
こうした訓練が現在も続けられているかどうかについて、防衛庁教育訓練局では「至急確認しているが、明確に答えることはできない」と話している。(朝日新聞 1993/01/27)

核兵器使用想定し自衛隊が幹部教育 昭和30年代 関係者証言で裏付け
昭和30年代、陸上自衛隊の上級指揮官や幕僚ら「制服組」のトップを養成する陸上自衛隊幹部学校(東京都新宿区)で、核兵器の使用を想定した図上演習などの教育が行われていたことが、共同通信が入手した当時の「部外秘」訓練資料と、教育を推進した同学校教官や資料作成者ら当時の関係者の証言から20日までに分かった。
証言などによれば、こうした教育は自衛隊発足直後の29−30年から30年代いっぱい、一貫して続けられたとみられる。
自衛隊の核兵器使用教育については、これまで国会などで度々追及されたが、政府は「核教育は防護面だけ」と答弁していた。
推進した当時の幹部学校教官は「米国留学の経験から、自衛隊でも核の技術的、戦術的事項の教育は必要と考えた」と証言している。
教育は具体的に核攻撃を想定した図上演習を中心に続けられたが、旧陸軍出身の学校幹部(当時)が米軍方式の教育に反発。政治情勢の変化もあり、40年代以降は専ら核攻撃からの防護を研究、教育する方針に変わったという。
入手したのは、米軍テキストの翻訳と、陸自が独自に作った文書の計13点で、30年に幹部学校第1期指揮幕僚課程で使われたとされる資料。
幹部学校と陸上幕僚監部の発行で、陸自独自の文書では、原爆の効力や放射能汚染の除去方法を説明。翻訳テキストでは、各種原子兵器の紹介と攻撃方法などを解説しており、防衛庁広報課は、当時の訓練資料であることを認めている。(中日新聞 1993/03/21)

在日米軍基地から核兵器発射は可能 CIA59年の機密文書公開『日本政府の同意確信』
【ワシントン8日時事】日本が直接外国の軍事的脅威を受けた時、日本政府は在日米軍基地から、核兵器を発射することに同意するだろう──。1959年当時、日本の米軍基地からの核攻撃や攻撃機の出動を日本政府が間違いなく容認すると分析した中央情報局(CIA)の機密文書の存在が明らかになった。
これは、4日から一般公開が始まったCIA機密文書のうち「国家情報評価―自由世界の意味と核能力を増強し続ける共産圏」と題した文書の中で詳述されている。
59年に作成された同文書は、日本は米国の抑止力に依存し続けており、今後も米国の同盟国として西側陣営にとどまるとの意思を弱めることはないと指摘。そのうえで「核兵器に対する一般大衆の強い嫌悪感および核攻撃に対する対抗手段の欠如から、日本政府は核兵器の持ち込み反対など、日本が関与する危険を極力少なくするための措置を取ることを余儀なくされてきた」と強調している。
しかし、文書は「にもかかわらず、日本の指導者は日本自身が直接の脅威にさらされたと感じた際に、航空機攻撃や核兵器発射のために在日米軍基地を使用することに同意するものと確信している」と分析、CIAが在日米軍による有事の核使用は可能と判断していたことを明らかにした。(中日新聞 1993/10/10)

自衛隊が『交戦規則』 有事を想定 文民統制の逸脱も
陸海空の3自衛隊が、今秋実施した過去最大規模の統合演習に当たって、武力行使の条件や限界など軍事行動の基本的枠組みを定めた本格的な「交戦規則(ROE)」を作成し、演習に適用していたことが30日、明らかになった。防衛庁内局は「あくまで研究が目的」と説明、内容は一切明らかにしていない。しかしROEは文民統制(シビリアンコントロール)を確立するための根幹であり、自衛権がどの範囲まで行使できるかなど憲法問題とも直接かかわる性格を持つだけに、制服組主導の在り方は今後論議を呼びそうだ。
防衛庁はこれまで、領空侵犯に対する措置や国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の武器使用について、事実上のROEを個別に決めた例はあるが、有事を想定した全自衛隊レべルでの導入は初めて。
ROEは、米国など西側を中心に確立した。政府が国際危機や紛争で軍事力を使う際、文民統制を徹底、武力の行使を管理していく役割を果たす。
各国とも政府の指示で軍当局が作成しており、軍事関係者によると、一般的には危機や紛争に応じた政府の総合的な情勢判断と対応策をまず明記。次いで軍事作戦の目的、方針から、指揮統制の方法、敵と味方、中立国の区別などについて詳細に規定されるという。
防衛庁筋によると、今回の統合演習は、日本周辺の軍事緊張が高まり、大規模な侵略を受けるシナリオで進められた。ROEは反撃作戦を想定し、演習を主催した統合幕僚会議が各自衛隊とともにまとめた。
演習では「戦闘状態に入る前に、日本や同盟国の艦船、航空機が国籍不明の相手に攻撃された時、どんな自衛措置が許されるのか」などが具体的に設定されたもようだ。

<交戦規則(ROE)> 「Rules of Engagement」の訳語。米統合参謀本部は「軍が戦闘を開始、または継続する条件や限界を明確に定めた政府の指示」と定義している。平時、戦時を問わず、政府が軍への「シビリアンコントロール」を維持。行き過ぎた武力行使による紛争の拡大などを防止し、危機管理を図る重要な役割を担う。軍事的条件に加え、外交など国の基本政策や国内、国際法の法的要素を総合して策定される。(中日新聞 1993/12/31)

日独の常任理入り容認 軍事参加が条件 米上院決議
【ワシントン28日=吉田慎一】米議会上院は28日、日独両国が国連平和維持活動(PKO)に軍事活動を含めて参加できるようになるまで、両国の安保理常任理事国入りは認めるべきでないとする決議を発声投票による事実上の全会一致で可決した。完全に責任を果たせない常任理事国が国連軍事行動の決定に加わると、安保理をかえって弱めることになるとするもので、共和党のウィリアム・ロス議員が提案した。米政府を拘束する性格の決議ではなく、両国に「国内法上の制限を撤廃するよう」(同議員)促すのが狙いだ。
決議は、両国の安保理入りを基本的には支持しながらも、「両国では現在、常任理事国の責任を完全に果たすことは禁じられているとの見方が大勢で、かつ、(PKO)完全参加の能力を持つために必要な変革は乗り気でない」とし、この状態での安保理入りに反対を打ち出した。米政府はすでに、両国の安保理入りを支持する姿勢を打ち出しているが、具体的な行動を起こしてはいない。
提案説明の中でロス議員は、日独両国が自国の軍隊の不参加を前提にしながら、米軍を危険にさらしかねない国連の軍事活動に賛成するような事態は「安保理をばらばらにする」と警告。さらに「日独両国の憲法はPKO参加をとくに禁じてはいないが、伝統的に解釈で禁止されているとしてきた」とし、「両国は常任理事国の責任能力を持てるようにしようともしないで、なぜ、理事国入りを求めているのか」と疑問を投げかけた。(朝日新聞 1994/01/29)

「日本に核武装の能力」
【ロンドン30日=林修平】30日付の英紙サンデー・タイムズは、日本が核兵器製造に必要なすべての部品をすでに保有しているうえ、さらに濃縮プルトニウムを組み込むだけで完成する爆弾を製造した可能性もあるとする英国防省の秘密報告が昨年12月、内閣に提出されていたと伝えた。
同紙は、英国防省が首相官邸に対し、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核・ミサイル開発をめぐる危機によって、日本が非核政策を放棄する恐れがあると警告したとしている。
秘密報告は、日本はプルトニウムや電子起爆装置などを含めた核爆弾の製造に必要な構成要素を持ち、極めて速やかに核兵器を保有するための専門知識もあると指摘。一方、現段階で日本が核爆弾開発計画の推進を決定したり、核不拡散条約(NPT)に違反した証拠はないと強調しているという。(朝日新聞 1994/01/31)

プルトニウム大量残量 動燃東海の製造工程 IAEAが注意
動力炉・核燃料開発事業団のプルトニウム燃料工場(茨城県東海村)の製造工程の機器に、操業開始から5年半で約70キロという、予想を超える大量のプルトニウムが残留していたことが9日明らかになった。動燃は核拡散防止のうえで直ちに問題とされる行方不明分ではないとしているが、国際原子力機関(IAEA)は、査察の信頼性を揺るがしかねない残留量だとして動燃に注意を促した。
この工場はプルトニウム燃料第3開発室といい、1988年10月に運転を始めた。プルトニウムとウランの各酸化物の粉末から、高速増殖原型炉「もんじゅ」などの燃料棒を製造している。
プルトニウムが残留していたのは、グローブボックスと呼ばれる密閉箱。この中で粉末を混ぜたり固めたりして、燃料棒に詰めるペレットをつくっている。4月に運転を始めた「もんじゅ」の燃料製造で、最近、残留量が増えたのではないかとみられる。
動燃はプルトニウムの受け入れ量と工程から出した量の差から、残留量は約70キロとIAEAに申告。IAEAも査察で残留が同量であることを確認した。
IAEAが問題にするのは、残留量が多いため、査察での計測誤差を考慮すると、核爆弾を製造できる量(有意量)を見過ごす恐れがあるためだ。計測の誤差は10−15%とされており、仮に10%とすれば、残留が70キロにもなると7キロ紛失しても把握できない可能性がある。プルトニウムの有意量は8キロとされている。
動燃は「計測上、行方不明量が出ることはあるが、今回の残留量はそれとは違う」と説明しているが、予想を上回る量だったことから「プルトニウムの回収やグローブボックスの更新で、残留量を減らしたい」としている。(朝日新聞 1994/05/10)

核兵器の使用「国際法に違反せず」 政府、国際司法裁へ陳述準備
政府が「核兵器の使用は国際法上、必ずしも違法とは言えない」とした意見陳述書を用意し、オランダ・ハーグの国際司法裁判所に提出する準備をしていることがわかった。政府はこれまで、自衛のための必要最小限の核兵器保有は憲法に反しないとしてきたが、使用についても国際法上違反しないとの踏み込んだ見解を示したもので、法解釈によるものとはいえ、最初の被爆国の「核兵器使用容認」には連立与党内からも反対の声が出るなど、内外で大きな波紋を広げそうだ。

陳述書は、世界保健機関(WHO)が昨年5月の総会で「核兵器の使用が健康や環境上の観点から国際法上違反かどうか」について国際司法裁判所の判断を求める決議をしたことを受け、同裁判所が各国に「6月10日までに陳述書を提出できる」と通知している。日本はWHOの決議は棄権した。
陳述書について外務省の寺田輝介外務報道官は、3日の記者会見で、「提出に向けて内容を検討中だが、政府の法律的な考え方は従来と変わらない」としたうえ、日本の従来の立場として「核兵器の使用は国際法の人道主義の精神には合致しないが、純粋に実定国際法上の評価として言えば、諸国の慣行や学説などを客観的に判断した場合、実定国際法に違反するという判断が国際社会の法的認識として成立するに至っているとは言えない」と述べた。
外務報道官の見解は、人道主義には反するが、現在の国際社会で認められている慣習法や条約などに照らして見る限り、核兵器の使用が禁止されているとは言えない、というものだ。
外務省は2日の連立与党政策幹事会で、「核兵器の使用は国際法上必ずしも違反とは言えない」とした陳述書の概要を口頭で説明した。その際、連立与党側から、「それはおかしい」「承服しがたい」と反対の声が上がった。
日本は非核3原則で核兵器保有を否定しており、原子力基本法や核不拡散条約(NPT)でも一切の核兵器を持てないことになっている。
一方で、自衛的な核兵器の保有は法的には認められるとの見解を示しており、昨年12月には、当時の細川護煕首相が立木洋参議院議員(共産)に対する答弁書で「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度のものであれば保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」「広島市及び長崎市に対する原爆投下も含め、核兵器の使用が国際法上違反であるとは言いきれないが、人道主義に合致しないもので国際法の精神に反する」などとしていた。(朝日新聞 1994/06/04)

「違反と言えぬ」を削除 核兵器使用の陳述書で政府
政府は8日、国際司法裁判所に提出するため準備している核兵器使用の法的解釈に関する陳述書のなかで、政治問題化した「今日の実定国際法に違反するとまでは言えない」とする部分を削除することを決めた。同日の衆院予算委員会で、自民、社会、共産各党が「唯一の被爆国の国民感情にあわない」などと修正や撤回を求め、柿沢弘治外相が同委で削除する方針を表明した。野党の追及に加え、閣僚や連立与党内からも再考を促す声が強まり、修正を余儀なくされた。ただ、政府高官はこの削除にあたって「従来の法解釈を変えるものではない」としており、政府の核兵器に対する見解をめぐる論議はなお尾を引きそうだ。
政府は8日の同委員会に、当初国際司法裁判所に提出を予定していた陳述書の「概要」を提出したが、それによると、「核兵器使用の国際法上の評価」について、「純粋に法的観点から言えば、諸国の国家慣行や国際法学者の学説等を客観的に判断した場合、今日の実定国際法に違反するとまでは言えないが、その絶大な破壊力、殺傷力の故に国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないものであると言える」とされていた。
政府が8日になって削除を決めた個所は、このうち「純粋に法的観点……」から「……違反するとまでは言えないが、」の部分。この結果、核兵器の使用に関する国際法上の判断には直接言及しない内容となった。
8日の衆院予算委では、当初の陳述書内容に対して、「核抑止力の肯定論だけが独り歩きする」(社会党の中西績介氏)、「核兵器使用は実定法に明文がないから違反とは言えないというが、明らかに(無差別爆撃の禁止などを規定した)ハーグ条約違反ではないか」(自民党の江藤隆美氏)など批判が続出した。
柿沢外相は「核兵器が大量殺りく兵器になる、非戦闘員を巻き込む、という意味では(ハーグ条約の)規定に非常に近いものがあるが、外務省が従来とってきた実定法上の違法性との関連では、(ハーグ条約を)引用していなかった」などと答弁したが、野党側は納得せず、審議は約1時間中断。政府側は検討の結果、問題の部分の削除を決めた。
今回の陳述書の内容が明らかになって以来、与野党や市民団体の間などから、(1)日本は唯一の被爆国として、核兵器の廃絶を訴える立場にある(2)国際法と核兵器との関係について「原爆投下は実定国際法違反」とする東京地裁の過去の判例があるなどとして、修正を求める声が相次ぎ、政府内でも石田幸四郎総務庁長官ら閣僚から、見直しを求める声が出ていた。

核兵器使用についての政府陳述書概要

外務省が8日衆院予算委員会に提出した、国際司法裁判所に出す「陳述書」の「概要」は、以下の通り。
(1)核兵器使用の国際法上の評価
今回のWHOの勧告的意見に係る国際司法裁判所の管轄権問題については慎重な検討が行われるべきと考えるが、核兵器使用に関する我が国の考えは次の通りである。
核兵器の使用は、(純粋に法的観点から言えば、今日までの諸国の国家慣行や国際法学者の学説等を客観的に判断した場合、今日の実定国際法に違反するとまでは言えないが、)その絶大な破壊力、殺傷力の故に、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないものであると言える。
この日本政府の見解は、これまで再三明らかにされてきている。
(2)核廃絶に対する我が国の考え方
唯一の被爆国であるわが国としては、核兵器が2度と使用されるようなことがあってはならないと考える。わが国は、非核3原則を堅持するとともに、今後とも核軍縮、核不拡散の推進に努力し、核兵器の究極的廃絶に向けて努力していく。

注:( )はもとの陳述書から削除する部分。(朝日新聞 1994/06/09)

「日本は核兵器持つ能力ある」 首相 政府見解と異なる発言
羽田孜首相は17日、国会内などで記者団に「確かに日本は核兵器を持つ能力はある。(科学技術や経済など)すべての面で」と語った。同日の参院予算委員会の質疑に関連した記者団の質問に答えた発言だが、政府が日本の核兵器保有能力を認めたことは、「過去に例がない」(防衛庁筋)。
熊谷弘官房長官は同日夕の記者会見で「日本の原子力は平和目的に限られており、(軍事利用の)ノウハウはない」と打ち消したが、海外で「日本核武装論」が根強くささやかれているときだけに、首相の発言は「舌足らず」(熊谷氏)にとどまらず、国際社会に波紋を広げる可能性もありそうだ。
首相はこの日の参院予算委で、自民党の大木浩議員に「日本も本当のことを言えば核兵力を持つ能力は持っているが、あえてそれを抑えて核不拡散に協力していると理解しているが、間違いないか」と問われ、「まったく同意見です」と答えた。
首相はこのあと真意をただす記者団に「本当にそんなこと言ったかなあ。覚えていない」と弁明しつつ、日本の核兵器保有能力そのものは肯定。続けて「能力はあるけれども、非核ということを強調したということなんだよ。核兵器は今後も一切持たない。これは間違いない」と、保有の「意思」は否定した。
政府は従来、核兵器保有について、「仮に自衛のための必要最小限度の範囲内にとどまるものがあるとすれば、憲法9条の下でも許される」との解釈を取ったうえで、実際には非核3原則を掲げて、一切の核兵器を保有しないという「政策的選択」の立場をとってきた。
また、「能力」については「原子力利用は原子力基本法で平和目的に限定されているうえ、これを国際原子力機関(IAEA)の保障措置で担保しており、軍事転用はできない」(外務省当局者)と否定してきた。
首相はこうした公式見解を踏まえないで、「能力」に言及したとみられるが、発言は政府見解を変更するものと受けとられかねない。まして朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核問題の緊迫や日本のプルトニウム政策にからんで、「日本は核武装の能力も意思もあるのではないか」という疑心暗鬼が国際社会に広がり、今年2月には細川護熙首相(当時)が米国の講演で、核保有の意思がないことを改めて明確にしたばかりだった。
このため、外務省などは首相発言に当惑しており、熊谷長官は「(国際社会の視線があるからこそ)一層厳しい姿勢でなければいけない。首相には厳しく言っておかなくちゃ」と苦しい表情だった。(朝日新聞 1994/06/18)

米空母に海自一佐 リムパック統一指揮の疑い浮上
【ホノルル17日共同】ハワイ周辺での環太平洋合同演習(リムパック94)で、海上自衛隊の参加部隊指揮官の1人が、演習期間を通じ米空母インディペンデンスへ乗り組み、米側部隊との作戦実施に直接関与していた可能性が高いことが、17日分かった。
リムパックでの指揮権問題について、防衛庁は「参加国が個別に責任を持ち、相互乗り入れなどによる統一した形はとらない」としてきた。
しかし、演習関係筋は「日本が派遣した指揮官は、日米一体で対潜水艦作戦などの指揮、命令に携わっている」と指摘しており、政府が違憲とする集団的自衛権の行使の問題と絡んであらためて注目されそうだ。
関係筋の話を総合すると、インディペンデンスに乗った指揮官は海自参加部隊の1つ。第46護衛隊の司令(一佐)とみられている。(中日新聞 1994/06/18)

商用プルトニウムで核兵器製造 米が62年実験成功
エネルギー省 公表し危険性アピール
【ワシントン27日共同】米エネルギー省は27日、米国が1962年に民間用原発から取り出した商業用プルトニウムで核兵器が開発できるかどうかを試すためネバダで地下核実験を実施し、成功していた事実を公表した。
実験成功の事実は77年に秘密指定を解除されていたが、一部専門家にしか知られていなかった。同省は、商業用プルトニウムが持つ核拡散の危険性を広く知らせるため公表を決めたと説明している。
同省によると、実験は英国が提供した商業用プルトニウムを使い、爆発の規模は20キロトン以下だった。
核兵器に使うプルトニウムは普通、核分裂を起こすプルトニウム239が93%以上含まれるが、この実験によって、同位体のプルトニウム240を7%以上含んでいるため核反応が不安定とされる商業用プルトニウムでも核兵器ができることが立証された。核兵器開発への悪用を防ぐため、詳細は今後も秘密指定が続くという。(中日新聞 1994/06/28)

「核武装化推進」と日本を非難 平壌放送
【RP6日東京】朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌放送は6日、広島への原爆投下49周年にあたり、「広島と長崎の惨禍は繰り返されてはならない」と題する論評を伝え、「日本は地球上から核兵器を完全に廃棄するうえで当然、先頭に立つべきだ」と主張する一方、「日本当局はそれとは正反対の道を歩んでおり、非核3原則に反して全領土を米国の核基地として提供しているだけではなく、彼らと合同して核戦争演習を頻繁に繰り広げている。それだけではなく自国の核武装化も急速に進めている」と非難した。(毎日新聞 1994/08/07)

「プルトニウム1キロで原爆可能」 管理強化求める 米研究機関
【ワシントン22日=大塚隆】米の民間研究機関自然資源防衛評議会(NRDC)は22日、「最新技術を使えばプルトニウム1キロで原爆が作れる」と警告、国際原子力機関(IAEA)が核物質管理の基準にしている量をプルトニウムの場合、8キロから1キロに減らして管理を徹底するよう求め、IAEAと米エネルギー省に書簡を送ったと発表した。ドイツで続発している核物質摘発を契機に、核拡散の防止を実質的なものにするのが狙い。NRDCは核兵器保有国だけでなく、日本の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)などの再処理にも同様の管理強化を求めている。
NRDCの核兵器専門家トーマス・コクラン博士らが最新の技術を検討、核爆弾製造可能量を計算し直した結果をまとめた。最新技術を使えばプルトニウム1キロで大都市なら数千人以上を殺傷する1キロトン級原爆ができ、多くの国が持つ中程度の技術でも1.5キロで原爆ができるという。NRDCはやはり核兵器の材料になる高濃縮ウランについても、25キロを8分の1の3キロにするよう求めている。
IAEAは核爆弾が製造可能な核物質の量を「有意量」として核物質管理の指標にしている。プルトニウムの場合、長崎に落とされた原爆に6.1キロのプルトニウムが使用されたことから、製造ロスを見込んで8キロを有意量にしたという。
しかし、コクラン博士は当時でもプルトニウムが3キロあれば小型原爆の製造は可能だったとし、「基準は時代遅れ。核物質がブラック・マーケットに流れる現状を考えると基準強化が緊急課題」と指摘する。
提言通りプルトニウムの有意量が小さくなれば、再処理やプルトニウム燃料製造などの各段階で工場設備の大幅な改善のほか、細かい運用を迫られるなど負担を強いられることになる。
同博士は日本の再処理にも触れ、「動燃東海工場では70キロを超えるプルトニウム残留があった」と非難、日本を規制強化の標的のひとつにしていることを明言した。(朝日新聞 1994/08/23)

プルトニウム 日本の備蓄過剰と指摘 韓国議員
日韓議員連盟と韓日議員連盟の合同総会が6日、東京都内のホテルで開かれた。総会の前の「安保・外交委員会」で、韓国側は日本のプルトニウム備蓄について「過剰に備蓄している日本の核エネルギー政策は理解に苦しむ面がある。しかも核兵器の製造に必要なあらゆる部品と技術を保有しているから、いつでも核兵器の製造が可能だ。こういう政策を再考すべきだ」と指摘した。日本側は「日本はあくまでもプルトニウムを平和利用しているし、非核3原則があるから安心してほしい」と応じた。(朝日新聞 1994/09/07)

国連総会委「核廃絶」決議を採択 日本が単独で提案
【ニューヨーク18日=佐藤吉雄】日本が提出していた「核廃絶」をうたった核軍縮決議案が、18日の国連総会第1委員会(軍縮・安全保障)で採決され、賛成140、棄権8で採択された。国連総会でも、正式に採択される。国連外交筋によれば、軍縮の分野で日本が単独で決議案を国連総会に提出したのは初めて。総会決議は拘束力を持つものではないが、「核廃絶」を掲げる決議の採択は、国連史上初めてという。
採択されたのは「核兵器の究極的廃絶に向けた核軍縮に関する決議」。決議は前文の冒頭で「冷戦後、核戦争の恐怖のない世界の創造の可能性が増した」と述べ、米国とロシアの核軍縮への取り組み、核実験全面禁止条約締結に向けた進展を歓迎すると表明した。
そのうえで、(1)核不拡散条約(NPT)の未加盟国に対し、可能な限りの早期加盟を要請する(2)核兵器廃絶を究極の目標とする核軍縮の努力を呼び掛け、すべての国に対し、大量破壊兵器の不拡散、軍縮への約束履行を呼び掛ける──ことを求めている。
米国、英国、フランスの核保有国のほか、ブラジル、インド、イスラエル、キューバ、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が棄権した。核保有国以外の5カ国は北朝鮮を除けばいずれもNPT未加盟国だ。核保有国のうち、ロシアと中国は賛成に回った。
国連外交筋によれば、核軍縮決議は何度も、国連総会で採択されているが、核兵器全廃をうたう「核廃絶」決議は核保有国の抵抗が強く、冷戦後も採択されたことはなかった。
今回も米国、英国、フランスなど核保有国は日本の動きに強く反発して決議案の撤回を求めたが、日本が「唯一の被爆国として、どうしても採択させたい」と繰り返し説得した結果、「反対はしない」という態度に変わったという。(朝日新聞 1994/11/19)

核兵器使用、21カ国が「違法」 NGO調査
陳述書提出は35カ国に
核兵器使用の違法性をめぐり、国際司法裁判所(オランダ・ハーグ)が各国政府の見解を求めていた問題で、最終的に35カ国が陳述書を提出していることが5日、わかった。国際反核法律家協会(IALANA、国際事務局・ハーグ)などの調べでは、このうち21カ国が「国際法違反」と主張している。これだけ広範に陳述書が集まったのは、1946年の国際司法裁判所開設以来初めて。
国際司法裁判所は世界保健機関(WHO)から「司法判断」の要請を受け、今年9月を期限に各国の陳述書を集めた。しかし、内容が公表されないため、法律家グループらが独自に各国の情報を集め、分析した。
それによると、核兵器の違法性を主張したのは、非同盟諸国を中心に21カ国。違法とした理由は「無差別殺りくなどを禁じた多くの国際条約に反する」(インド)、「健康と環境の観点から国際法上の義務違反」(モルドバ)など。
米国、英国、ロシア、フランスの核保有4カ国をはじめフィンランド、オランダなどの計9カ国は「WHOには核兵器について国際司法裁判所の意見を求める権限がない」など、司法判断に否定的だった。
また、「実定法上、違法とまでいえない」との表現を削除しつつも、違法性の明記をしなかった日本について、国際反核法律家協会などでは「違法かどうかの判断を巧みに避けている」とみて「あいまいな態度」に分類した。ノルウェー、ニュージーランドも同じ。他の2カ国は「態度不明」。

陳述書を出した35カ国(IALANAなどの調べ)

「核兵器使用は違法」はアイルランド(消極支持)、イラン、インド、ウガンダ、ウクライナ、カザフスタン、コスタリカ、コロンビア、スウェーデン、スリランカ、ソロモン諸島、朝鮮民主主義人民共和国、ナウル、西サモア、パプアニューギニア、フィリピン、マレーシア、メキシコ、モルドバ、リトアニア、ルワンダ
「司法判断などに反対」はアメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリア、オランダ、ドイツ、フィンランド、フランス、ロシア。理由は「核兵器は政治的問題」「WHOは裁判所に意見を求める権限がない」など
「あいまいな態度」は日本、ニュージーランド、ノルウェー
「態度不明」はアゼルバイジャン、サウジアラビア(朝日新聞 1994/12/06)

国連総会「核廃絶」決議を採択 日本提案、国連史上で初
【ニューヨーク15日=佐藤吉雄】日本が提案した「核兵器廃絶」をうたった核軍縮決議が15日の国連総会で、賛成163、反対0、棄権8で正式に採択された。核兵器保有国では中国、ロシアが賛成、米国、英国、フランスは棄権した。核兵器全廃を掲げる「核廃絶」決議の採択は、国連史上初めてという。
決議は、「冷戦後、核戦争の恐怖のない世界が創造される可能性が増した」とし、(1)核不拡散条約(NPT)の未加盟国に対し、可能な限りの早期加盟を要請する(2)核保有国に対し、核兵器廃絶を究極の目標とする核軍縮の努力を呼び掛ける(3)すべての国に対し、大量破壊兵器の軍縮と不拡散の約束履行を呼び掛ける──ことを求めている。
核保有国以外の棄権はブラジル、インド、イスラエル、キューバ、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)で、北朝鮮を除けばいずれもNPT未加盟国。
核軍縮決議はこれまで何度も採択されているが、「核廃絶」には核保有国の抵抗が強く、冷戦後も採択されたことはなかった。国連総会第1委員会(軍縮・安全保障)にまず提出された日本の決議案に対して、米国、英国、フランスなどは強く反発して撤回を求めたが、日本は、「唯一の被爆国」の立場を強調して納得したという。(朝日新聞 1994/12/16)

国連総会、核使用の違法問う決議採択 日本は棄権
【ニューヨーク15日=佐藤吉雄】核兵器の使用、威嚇が国際法に違反するかどうかについて、国際司法裁判所(ICJ)に勧告的意見を求める決議が15日の国連総会で、賛成78、反対43、棄権38で採択された。日本は棄権した。
この問題では、世界保健機関(WHO)の同様の要請を受けて、ICJが各国の見解を求め、日本など35カ国が陳述書を提出している。核保有国の米国、英国、ロシア、フランスなどが「WHOには核兵器について意見を求める権限がない」と主張していることを受け、インドネシアなど非同盟諸国が、国連総会が国連機関であるICJに要求する形で、同じ問題の諮問を行うことを提案していた。(朝日新聞 1994/12/16)

原発からのプルトニウム 小型の原爆 製造可能 米国立研報告
【ワシントン10日=北島重司】原発の使用済み燃料から取り出されるプルトニウムでも、戦場でも使う小型の戦術核兵器を製造できるとの報告書を米国立研究所が米政府に提出していた。日本や欧州では、こうしたプルトニウムは軍事用に適さないとの見方があるが、それを真っ向から否定した内容。米政府筋も「必要以上に持つ国には、見直しを促したい」としており、日本も含め、管理強化や保有量の抑制などが核拡散防止の新たな枠組みづくりの政策課題に浮上する可能性が出てきた。

前ホワイトハウス科学技術政策局次長のフランク・フォン・ヒッペル氏(現プリンストン大教授)が朝日新聞とのインタビューで明らかにした。報告書は昨年9月、ホワイトハウスとエネルギー省の担当官に出された。全容は秘密扱いだが、核兵器の設計図などを削除した概要説明書が作成されたという。
ヒッペル氏と概要説明書によると、ロスアラモス、ローレンスリバモア両国立研究所の核兵器設計の専門家グループは、使用済み燃料を再処理して出るプルトニウム(原子炉級プルトニウム)でどれぐらいの性能の核弾頭を製造できるか、核実験データなどをもとに検討した。
テロ集団などが核開発を企てる場合、核弾頭には初期の設計が使われる公算が大きいとして、とくに1950年代に米国が開発した核弾頭をつくるとして分析。その結果、設計上の爆発力よりやや落ちる可能性があるものの、高性能火薬に換算して、少なくても1キロトンほどの爆発規模を確保できると結論づけた。

<原子炉級プルトニウム> プルトニウムには15種類の「兄弟」が知られているが、核兵器の材料には、核分裂性の239が多いだけでなく、240の割合が少ないほど適しているとされる。240は、起爆剤で一気に爆発させる前に、勝手に爆発を誘発する「やっかい者」だからだ。240の割合が2−3%のプルトニウムをスーパー級、7%以下を兵器級と呼び、プルトニウム生産用の特殊な炉でないと作れない。240が18%以上を原子炉級という。(朝日新聞 1995/06/11)

『日本、核兵器開発着手も』 中国が内部報告で懸念
【北京1日共同】日本は中国や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への警戒感から軍備増強を加速しており、今後は核兵器開発に着手する可能性もある、と分析した中国政府の内部報告の内容が1日までに分かった。この報告は今年4月、党・政府・軍の閣僚級以上の幹部向けに配布された。日本の軍事大国化への強い懸念を示しており、指導部内のこうした共通認識が中国の国防力増強路線や核実験強行の重要な理由付けの1つとなっているとみられる。

中国では日本の戦後50年国会決議について、江沢民国家主席自ら「真の反省」に疑義を呈し、メディアも批判の声を強めているが、その背景にはこの報告に象徴される対日不信感があるとみられる。
報告は(1)北方重視戦略の転換(2)戦域ミサイル防衛(TMD)の重視(3)自衛隊の精鋭化──の3部構成で、まず「冷戦終結によって、日本は従来の対ロシア中心の北方重視戦略から、朝鮮半島、中国など西南部を加えたバランス型戦略に転換した」と分析。
理由として、北朝鮮の核疑惑や、尖閣諸島(釣魚島)、南沙・西沙諸島など中国絡みの領土問題への懸念に加え「特にここ数年、中国の経済力、軍事力が強まり、既に中国の“脅威”に直面している。将来、中国が超大国となる前提で新戦略を練り直すべきだ、と主張する者もいる」と中国脅威論の高まりを挙げた。
さらに、北朝鮮の中距離ミサイル「ノドン」発射実験を引き金に、日本はTMD構想参加の検討を始めた、と指摘。「日本は米国の“核の傘”では、局地的な核兵器使用抑止は難しいと考えている。今後、核による自衛を口実とし、核兵器開発に着手する可能性がある」と決め付けた。
また報告は、F15戦闘機など新鋭兵器配備や、高性能の次期支援戦闘機(FSX)の開発などを挙げ、日本の先進的な軍備の「脅威」を強調した。

『核兵器開発あり得ない』 政府が否定

政府は1日、中国政府が内部報告で日本の核兵器開発などに懸念を示したことについて「核兵器開発はあり得ない話だ。日本は非核3原則を堅持し核拡散防止条約(NPT)に加盟し、国際原子力機関(IAEA)の査察も受けている」(樽井澄夫外務省安全保障政策課長)と否定。1995年版防衛白書で「相手国の壊滅的破壊にのみ用いる攻撃的兵器の保有はいかなる場合にも(憲法上)許されない」と明記しており「核実験を繰り返す中国に言いがかりを付けられる理由はない」(防衛庁筋)と反発している。(中日新聞 1995/07/02)

大戦中の日本 北朝鮮で核兵器研究 米学者が新説紹介
【ワシントン21日共同】米空軍歴史博物館の主催で21日開かれた「太平洋における第2次世界大戦」と題するシンポジウムで、日本が戦時中、現在の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本海沿岸にある咸鏡南道・興南で核兵器の研究開発に当たっていた、との説を米学者が紹介し注目された。この学者はメリーランド大学のシオドア・マクネリー名誉教授(政治学)。連合国軍総司令部(GHQ)民間諜報局(CIS)勤務の経験があり、この情報は米情報当局関係者や各種資料から得たとしている。
興南では核分裂物質トリウムによる核開発を進めていたとみられ、敗戦後に侵攻したソ連が施設を接収、要員らを逮捕したという。
開発がどれほどのレベルにまで進んでいたかは不明だが「重要施設があったのは事実」とマクネリー博士は述べている。(中日新聞 1995/07/23)

50年代末 三沢、板付に「核」あった 米の元整備兵3人が証言
【ニューヨーク28日共同】1950年代末に沖縄に駐留していた米空軍の第7戦術弾薬補給中隊の3人の元部隊員が、28日までに共同通信のインタビューに応じ、沖縄のほか米軍三沢基地(青森県三沢市)、同板付基地(福岡市)に派遣され、両基地にあった核兵器(複数)を整備した、と証言した。核積載米艦船の日本寄港と異なり、核兵器が陸上の基地にも持ち込まれていたとの当事者の証言が明るみに出たのは初めて。
3人のうちの1人、米ペンシルベニア州の地元紙のコラムニストであるポール・カーペンター氏は核兵器整備兵としての体験を、原爆投下50周年に合わせて、同紙に公表した。
3人は沖縄の嘉手納基地の同中隊に57年に配属され、核兵器の各部分が使用時に設計通り作動するかどうかを点検する「核兵器整備班」に所属、戦闘機搭載用の核爆弾MK7の整備を担当した。
カーペンター氏が保管する命令書によると、3人は58年3月末に「緊急任務のための特別命令」を受けて三沢基地への出張を命じられ、4月1日ごろから2カ月間三沢に滞在しMK7を整備した。
キューバ危機が起きた62年10月には、同氏は韓国・群山の米軍基地に急派され、核兵器の戦闘機搭載を準備した。「核は中国に投下すると思った」とカーペンター氏は語った。この後、沖縄では最新式水爆のMK28の整備が主な任務となった。
匿名を条件に取材に応じた残り2人の元隊員は、カーペンター氏と共に三沢に派遣されたほか、2人とも57年から59年にかけて三沢に1回、板付に1回出張し、核兵器を整備した。
2人は、両基地の核兵器にはコアと呼ばれるプルトニウムやウランの核物質部分がなく、コアは緊急時に、当時まだ米施政権下にあった硫黄島(68年に日本へ返還)から運び込む態勢になっていたなどと指摘、コアも基地内にあったとの同氏の証言と食い違った。
初期の核兵器は事故爆発を防ぐため、コアを分離して保管していたが、2人が起爆装置専門の整備兵だったため、コアを見る機会がなかったと同氏は説明している。

<MK7> 最高60−70キロトンの破壊力(広島型原爆は12.5−15キロトン)を持つ核爆弾。核爆弾の小型化に成功し量産され、1952年7月から67年半ばまでの間に、約470個造られ空軍、海軍に実戦配備された。最も長期間にわたって配備された核爆弾の1つ。重さは約770キロ、長さ約5.5メートルなど10種類がある。

<MK28> 最高1.4メガトンの破壊力を持つ水爆。58年8月から米空軍、海軍に配備された。実戦配備の水爆としては米核兵器史上草分け的存在。87年半ばで、約1000個が貯蔵された。重さ約930キロ、長さ約4.2メートルなど5種類ある。(中日新聞 1995/08/29)

米艦船入港 核搭載の有無問わず 日本政府『約束』 米公文書で初確認
【ワシントン27日共同】日本政府は、米核兵器搭載艦船の日本への入港に際しては「核兵器の存在を肯定も否定もしない」(NCND)との米海軍の原則を尊重して、核搭載の有無を問うことを避け、自由な通航を認めてきたことが27日、米外交文書と元米政府高官の証言で初めて確認された。
このほど秘密扱いを解除された米国務省メモによると、日本政府は沖縄沖で起きた核搭載機転落事故(1965年発生)が明るみに出た89年5月、「NCNDの厳格な維持の重要性」を米側に伝達、現実には米核艦船の寄港と領海通過を事前協議の対象にしないことを約束してきたことが分かった。
また、60年安保改定交渉に詳しい元米政府高官は共同通信に対し「安保条約調印の際、岸首相とアイゼンハワー大統領が、日本はNCNDを尊重するとの秘密文書を交わした」と指摘。米核艦船通航の根拠が35年前に交わされた日米間の秘密文書にあると明言した。
政府は公式には、一時寄港・領海通過を含む核持ち込みは安保改定の際の岸・ハーター(国務長官)交換公文により事前協議の対象となった、との解釈を示し、これまで「米側からの事前協議がない以上、核兵器の持ち込みはない」との立場をとってきた。
核の存在を肯定も否定もしないとの米海軍の原則を日本側が尊重するという形で、抜け道が設けられたことが判明したのは初めて。過去何度も繰り返された持ち込み疑惑の真相がこれで解明された。
国務省メモは89年5月15日付でベーカー国務長官(当時)あて。沖縄の東沖合で65年12月、空母タイコンデロガの艦載機が搭載した水爆とともに甲板から転落、空母はその2日後、横須賀に入港した──との事実を国際環境保護団体グリーンピースが89年5月米海軍文書を入手し暴露、波紋を広げたことに関するもの。

『米軍核兵器の持ち込みない』 政府、従来見解を強調

政府は27日、「核兵器の存在を肯定も否定もしない」(NCND)との原則を日本政府が尊重する方針を表明した米外交文書について「文書を確認していないため、論評はできない」(外務省)としているが、核持ち込みについては事前協議制度が機能しており、NCNDにかかわりなく、これまでに核が持ち込まれたことはない、との従来の見解を強調している。
また、1960年の日米安保条約改定交渉の際に、当時の岸信介首相とアイゼンハワー米大統領との間で交わされた、と指摘された「日本はNCNDを尊重する」との秘密文書の存在についても否定している。

米国務省メモ全文

米国務省の1989年5月15日付「日本―1965年核兵器紛失事故」と題する国務長官あて重要メモの全文は次の通り。
一、沖縄東方約128キロ沖での米海軍機と水爆の紛失に関する報道は、日本国内で強い不安を起こし、米マスコミもかなりの報道をしている。
一、この空母が2日後に横須賀に停泊した事実は、米国の核搭載可能艦船が核艦船通航に関する日本の政策を日常的に「無視」しているとの疑惑を強めた。
一、加えて、核兵器搭載に関する元乗組員のマスコミへの証言は、核兵器の存在に関しては肯定も否定もしないとする米国の政策への圧力を高めた。
一、われわれは環境への影響評価(無害)とともに、事故に関するさらに詳しい内容を国会での利用のために日本政府に提供した。日本政府はこの追加情報を高く評価し、肯定も否定もしないとする米国の政策を厳格に維持することの重要性を強調した。(ワシントン、共同)(中日新聞 1995/10/28)

広島・長崎市長「核使用は違法」 国際司法裁判所で証言
政府は判断示さず
【ハーグ(オランダ)7日=国末憲人、星井麻紀】核兵器の使用や威嚇が違法かどうかをめぐり、国連総会などから勧告的意見を求められている国際司法裁判所(ICJ)は7日、口頭陳述法廷を開き、被爆地を代表して広島市の平岡敬、長崎市の伊藤一長両市長がそれぞれ日本政府証人として証言した。両市長は、市民を大量無差別に殺傷し、放射線障害による苦痛を与え続ける核兵器の使用が「国際法に違反する」と明言し、政府の基本姿勢と食い違いを見せた。一方、日本政府を代表した外務省の河村武和軍備管理・科学審議官は、核使用が「人道主義の精神に合致しない」という従来の見解をあらためて述べ、違法かどうかの政府判断を示さなかった。

口頭陳述は10月30日から始まり、アルファベット順でオーストラリア、フランス、ドイツなどがこれまでに陳述、7日までに10カ国の政府代表が陳述した。15日まで行われ、さらに米英など11カ国が陳述の予定だ。
平岡市長は「やけどで皮膚が縮まって耳たぶが半分になり、左手の指が付け根のところで寄り集まってしまった」という被爆女性の手記などを通じて、核攻撃が生む惨状を説明。「戦後50年たった今なお、多くの人が放射線による障害に苦しんでいる」と証言し、「核兵器による被害は、国際法で使用を禁じられているどの兵器よりも残酷で非人道的だ」と、核使用の違法性に言及した。
そのうえで、市民を無差別に殺傷し放射線障害による苦痛を継続的に与える核兵器使用は「国際法に違反する」と明言した。
このあと証言した伊藤市長は、原爆の惨状を描写した写真パネルを裁判官の前に並べ、核による無差別攻撃の非人道性を訴えた。
さらに、戦闘に関する国際法では兵器の選択は無制限ではなく、(1)文民を攻撃すること(2)不必要な苦痛を与えること(3)環境を破壊することが、禁止されていると陳述。核兵器の使用はこれらの禁止事項に該当するとして、違法性を具体的に指摘した。
両市長の証言に先立ち、陳述した河村審議官は、国際法の見地からの論議をほとんど展開せず、核兵器の使用は「国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しない」と述べるにとどまった。さらに同審議官は陳述の中で、両市長の証言について「事実以外の発言があれば、必ずしも政府の見解を表明するものではない」と語った。
政府は昨年、「核使用は国際法上、違法とまでは言えない」という文言を盛り込んだ陳述書を提出しようとしたが、国会などで批判され、この部分を削除した。しかし政府は、この基本姿勢は「変わらない」との立場だ。
ICJは、世界保健機関(WHO)や国連総会から核兵器の使用に関する法的判断の「勧告的意見」を求められていた。来春にもICJとしてどのように対応するか、の結論が出る見通しだ。(朝日新聞 1995/11/08)

国際司法裁で証言 被爆の実態、赤裸々に
広島市長「人間の知性の退廃」 長崎市長 爆死の写真手にとり
【ハーグ(オランダ)7日=国末憲人、星井麻紀】むごたらしい被爆地の写真パネルが、半世紀前の記憶を「世界法廷」によみがえらせた。7日、ハーグの国際司法裁判所で、広島の平岡敬市長(67)と長崎の伊藤一長市長(50)は、原爆による無差別大量殺りくの悲惨さを証言した。そして、「核兵器の使用が国際法に違反するのは明らかだ」。千羽づるを持った被爆2世や被爆者、海外の平和運動家たちが傍聴する中で、被爆都市と、「違法かどうか」を言うことを避けた日本政府との落差が際立った。

午前10時すぎ、黒い法服を着た14人の裁判官が、一列に並んで左手のドアから大法廷に入って来た。中央にアルジェリア出身のベジャウィ所長。日本から選ばれている小田滋裁判官も、その隣に着席した。
まず、外務省の河村武和審議官が陳述台に立った。「非核3原則」を紹介し、日本政府が軍縮に貢献してきたことを説明した。しかし、肝心の「違法かどうか」には直接ふれず、避けて通った。
平岡市長はモーニング姿の背筋を伸ばした。ハーグの大法廷では礼服を着るのが慣例だ。「非業の死を遂げた多くの死者たち、放射線障害に苦しむ被爆者たちに代わって核兵器の残虐性、非人道性を証言します」。日本語で読み上げる証言は英語とフランス語に同時通訳された。
平岡市長は約30分の証言の中で、核抑止論を「人間の知性の退廃」と述べ、「人類の運命は、いま、あなた方の手の中にある。神のごとき明察と人間への愛をもって、判断を下していただきたい」と締めくくった。
長崎の伊藤市長は、よく通る声で一言ずつ言葉を区切りながら「私たち長崎市民を最後として、原子爆弾による犠牲が2度と再び、生み出されることがないよう厳正なる審理を願う」と語り始めた。
持参した50センチ四方の大きさの写真パネルを4枚、裁判官席からよく見えるように、陳述台の後ろにある台の上に置いた。その中の1枚は、爆心付近で焼け死んだ黒焦げの少年の遺体の写真だ。
「この子どもたちに何の罪があるのでしょうか」。裁判官の中には、思わず目をそむける人もいた。「すべての核保有国の指導者は、この写真を見るべきです。この子らの無言の叫びを感じてほしい」。伊藤市長は何度も写真を手に取って持ち上げた。
証言が終わると、ベジャウィ所長が「感動的な証言に感謝します」と述べた。
外務省がハーグへの出廷を申請した9月に伊藤市長は「国際法違反を言いたい」と話した。しかし、「違法とまではいえない」とする外務省から再三にわたって証言内容に「指導」を受けた。最後は広島市に支えられる形で「違法」明言にふみきった。

「政府の言葉腹立つ」 被爆者

傍聴席では、日本からの代表団や被爆者ら十数人が証言に聴き入った。
4歳の時、広島の爆心から4キロのところで被爆した東京都在住の月下美紀(よしのり)さん(54)は両市長の証言を聞いて、「これだけのメッセージが世界に向けて、伝えられたのは初めてだ。広島の役割がますます大きくなった」と語った。
伊勢市在住の被爆者西山辰雄さん(67)は、政府代表が両市長の証言に対し、「政府の見解ではない」とあえて付け加えたことについて、「2人の市長の証言が感動的だっただけに、政府のあの言葉には腹が立った。日本人として情けない」と語った。
千羽づるを首にかけて傍聴席から陳述台を見つめていた広島市西区の上本全代さん(40)は被爆2世。
「いくら被爆体験を語っても、違法だと明言しない限り、市長が証言する意味はない。違法性をあやふやにしては、悲劇は繰り返されてしまう」。市長の証言に期待をかけ、生協のハーグ訪問団に参加した。聞き終えて、「感無量です。裁判官が広島を訪問し、被爆者の声を直接聞いてほしい」。(朝日新聞 1995/11/08)

2市長・政府の証言要旨
平岡・広島市長
【ハーグ(オランダ)7日=国末憲人】私はここで、核兵器廃絶を願う広島市民を代表し、特に原爆により非業の死を遂げた多くの死者たち、そして50年後の今もなお放射線障害で苦しんでいる被爆者たちに代わって、核兵器の持つ残虐性、非人道性について証言します。
当日、広島市には約35万人がいました。原爆投下で1945年12月末までに、約14万人が死亡したと推定しています。急性障害は、4カ月くらいで下火になりましたが、被爆後5、6年して、後障害が大きな問題となりました。ケロイド、白内障、白血病、がん、胎内被爆者に生じた知的障害・発育不全を伴う小頭症などです。
私の親せきや多数の友人が犠牲となりました。当時、女学校1年生だったいとこは爆心地から800メートルの地点で被爆し、亡くなりました。裁判官の皆様方には、ぜひ広島・長崎を訪れて、被爆の実相を検証し、理解を深めていただくようお願いします。核兵器の問題を考えるためには、まず、生き残った人々の悲惨な体験を聞き、被爆資料に触れることは欠かせないことだからです。
市民を大量無差別に殺傷し、放射線障害による苦痛を与え続ける核兵器の使用が国際法に違反することは明らかであり、その開発・保有・実験も非核保有国にとっては、強烈な威嚇であり、国際法に反するものです。
人類の運命は、今あなた方の手の中にあります。どうか、神のごとき英知と明察と人間への愛をもって、この核兵器の問題に対して、正しい判断を下していただくようお願いします。

伊藤・長崎市長
【ハーグ(オランダ)7日=星井麻紀】この機会に、私たち長崎市民を最後として、原子爆弾による犠牲が、地球上で再び生み出されないよう訴えます。核兵器廃絶を願う長崎市民の切なる思いを述べます。
被爆から4カ月後、死者約7万4000人、負傷者約7万5000人、市民の3分の2が犠牲となりました。
戦闘に関する国際法では、兵器の選択について無制限な自由は認められておらず、禁止を明文化されていない兵器でも、(1)文民を攻撃すること(2)不必要な苦痛を与えること(3)環境を破壊することは禁止されていると聞いております。核兵器の使用は、まさしくこれらの禁止事項に該当し、国際法に違反していることは明らかであります。
長崎では、毎年8月9日の平和祈念式で「長崎平和宣言」をしています。私は今年の平和宣言で、我が国は、核兵器使用が国際法違反であることを明確に主張するとともに、国是としている「核兵器をつくらず、持たず、持ち込ませず」の非核3原則を法制化し、同時にアジア太平洋地域の非核地帯創設に務めるよう、我が国政府に提唱しました。
核兵器の保有によって、敵対する相手の核兵器使用を抑制しようとする「核抑止論」は、恐怖の均衡を保つことにほかなりません。
長崎では毎年、被爆者約1300人が亡くなり、6万2000人が原爆後障害の恐怖におびえる日々を送っております。人類の文化と歴史に終止符が打たれないよう、人類愛の見地に立った判断を心から願います。

日本政府
核兵器の使用は、その絶大な破壊力、殺傷力の故に、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないと考える。
我が国は、広島・長崎の悲惨な被爆体験を踏まえ、核兵器が2度と使用されることがあってはならないと考える。惨禍を2度と起こさないために、国際社会が一致して努力していくことが重要であると考えている。
具体的には、非核3原則を堅持するとともに、核兵器の究極的廃絶に向けて努力していく。すべての核保有国に、究極的廃絶という目標に向けて一層の核軍縮を行うよう求める。
さらに、核不拡散条約(NPT)会議でも第1目標として決定された包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期妥結に積極的に貢献していくとともに、あらゆる核実験の即時停止を強く訴えたい。(朝日新聞 1995/11/08)

防衛庁に「情報本部」新年度発足 狙いは“日本版CIA”
戦略分析し長官へ 将来は偵察衛星も
防衛庁は日本の安全保障に必要な情報の収集、分析をする情報本部を新年度から発足させる。これまで内局や陸海空の各自衛隊ごとにあった情報組織を整理統合し再編するもので、防衛庁全体の情報機能を向上させる狙い。偵察衛星の保有も、と構想は膨らむ。「日本版CIA」ともいわれる情報本部の実態は──。(東京社会部・半田 滋)

防衛庁の計画によると、情報本部は統合幕僚会議の下に置かれ、総務、計画、分析、画像、電波の5部で構成する。本部長は将官、副本部長には内局審議官クラスを充てる。人員は1650人。これに対し内閣情報調査室は120人、外務省国際情報局は60人だから、日本で最大の情報組織になるのは間違いない。
内局と統幕や陸海空各幕僚監部にある情報部門を整理して、人員の合理化を図ることが目的のひとつ。より大きな狙いは戦略情報を一元的に分析し、判断材料として長官に提供することにある。日本の安全保障に必要な「情報の総本山」となることを目指しているようだ。
注目されるのは、かつてはその存在さえ秘密にされた陸幕調査2課の下にある調査別室、いわゆる調別を廃止し、吸収すること。
調別は海外の電波などをキャッチする専門組織で、全国6カ所に通信所を持つ。人員は1300人。このうち北海道東千歳駐屯地と鳥取県美保基地にある電波監視装置、すなわち「象のオリ」と呼ばれる巨大な円形アンテナは、ロシアや朝鮮半島、中国の交信を傍受する通信情報(コミント)の収集源になっている。
大韓航空機撃墜事件の交信傍受が公表され、脚光を浴びた稚内通信所は通信情報のほか、電子情報(エリント)も収集。市ケ谷駐屯地にある調別の施設には米国防総省情報局(DIA)のエージェントが連日、出入りしているが、そうした事実さえ伏せられているほど調別は秘匿性の高い組織なのだ。
調別がそっくり移行するため、情報本部の8割は調別隊員で占めることになる。シビリアンコントロール確保のため、事務次官を委員長とする「防衛庁情報委員会」を置き、内局主導の形を確保するという。米中央情報局(CIA)と決定的に違うのは人的情報(ヒューミント)を収集する、スパイと称される人物がいないことだろう。
情報本部の誕生によって「自衛隊の情報活動が根底から変わる」とみられている。「情報を活用するのは長官や統幕議長。これまでは各幕の幕僚長だった。情報の使用目的が変われば、活動もおのずと変わる」と情報分析の専門家。防衛庁が情報機関としての地位を固めるとの見方もある。
防衛庁筋は「将来構想のひとつに偵察衛星の打ち上げがある」という。現在は民間から衛星写真を購入しているが、地域の指定をすることで意図が漏れてしまうことや価格が高いなどの難点がある。自前の衛星を持つことで、こうした問題は消えるが、国会決議である「宇宙の平和利用」との整合性が新たな問題になりそうだ。
情報本部の構想が浮上したのは1980年代半ば。だが、すぐには具体化しなかった。冷戦中、防衛庁が注目していた情報は、どの国にどんな武器があるかという武器情報。この情報を基にソ連に対抗する武器を自衛隊がそろえた、という事実を西側諸国の一員として西側に示すことこそが肝心だったからだ。
転機は、自衛隊の国連平和維持活動(PKO)。一昨年のルワンダ難民救援活動で、自衛隊は派遣から撤収に至るまで独自対処する必要に迫られた。情報が単なる情報で済む時代から、運用に直結する時代へ。情報本部はポスト冷戦によって生まれたといえる。
防衛庁は本庁の移転先でもある陸自市ケ谷駐屯地に10月の完成を目指し、情報本部2棟の建設を進めている。幹部はこう言う。「6万人規模といわれる米国国家安全保障局(NSA)に少しでも近づくことができれば……」。防衛庁の権限強化を超えて、将来は情報庁の誕生があるのだろうか。(中日新聞 1996/03/16)

「日本は第4の軍事大国」 米軍縮局報告
【ワシントン5日時事】米軍備管理軍縮局がこのほど公表した世界の軍事費と兵器移転に関する年次報告(1995年版)で、日本の94年の軍事費は458億ドルと、米(2881億ドル)、ロシア(968億ドル)、中国(528億ドル)に次ぐ「世界第4の軍事大国」に位置づけられた。以下、フランス、ドイツ、英国、イタリアの順。
報告によれば、日本の軍事費が4位になったのは3年連続で、89年には世界7位だったが、90年に英国、92年にフランスとドイツを抜いた。防衛庁関係者は「急激な円高や人件費の高騰が原因であり、軍事大国化とは言えない」としている。
報告によると、94年の兵器輸入でも日本は6億5000万ドルで世界第8位。総兵力は23万3000人で24位だが、国民総生産(GNP)比の軍事支出は1%で、138位。
日本は武器輸出3原則で武器の輸出を禁止しているが、報告は94年の日本の兵器輸出額を1000万ドルと記載している。日本の兵器輸出は93年も1000万ドルとされており、防衛庁関係者は「汎用(はんよう)性のある民生品が輸出後に軍用の転用されたのではないか」と推測している。(中日新聞 1996/07/06)

核使用「一般的には違法」 国際司法裁が「意見」
自衛での使用は判断回避 核軍縮の義務、明言
【ハーグ(オランダ)8日=吉田文彦】核兵器使用・威嚇が国際法に照らして違法かどうかについて、国連の国際司法裁判所(ICJ、ベジャウィ裁判長)は8日、国連総会への勧告的意見として核兵器使用・威嚇は紛争に関する国際法、人道法の原則に一般的に反するとの判断を言い渡した。ただ、国家の存亡の危機に直面するような極限状況における自衛権としての核兵器使用については「合法か違法かの結論を出せない」と判断を示さなかった。ICJはまた、核兵器保有国による核軍縮交渉で合意する義務があると明言した。核兵器使用について国際的な司法判断が示されたのは初めてで、今後の核軍縮交渉や軍事戦略に大きな影響を与えそうだ。

勧告的意見の骨子

8日、ICJが、核兵器使用に関する国連総会と世界保健機関に対して示した見解の骨子は次の通り。

◇国連の要請に対し
一、国際慣習法上も条約上も、核兵器による威嚇または使用を認めたり包括的に禁止したりしたものはない
一、核兵器による威嚇または使用は、一般的には武力紛争に適用される国際法、特に人道法に反する
一、しかし、国家の存亡にかかわるような極限的な自衛状況での核兵器による威嚇や使用が合法か違法かについて、明確な結論は出せない

◇WHOの要請に対し
一、WHOは公衆衛生、健康を扱う専門機関であり、要請の内容は、その活動内容に含まれない

WHOの要請「門前払い」に

ICJは、言い渡しの理由として、(1)文民を攻撃しない(2)不必要な苦痛を与えない──といった紛争に関する国際法、人道法の規則や原則が核兵器にもあてはまるとした。
だが、核兵器保有国が強く主張した「自衛権としての核兵器使用」については、一般論としては別扱いにし、判断しなかった。
こうした結論の支持、不支持をめぐり、裁判長を含む14人の判事は7対7に割れ、規定によって、裁判長が決めた。反対した7人の中で3人は、自衛を含む、あらゆる核使用は違法との立場だった。
日本の小田滋判事はただ1人、勧告的意見の要請に応じることに反対した。
ICJはこの日、国連総会への言い渡しに先立ち、健康や環境の与える悪影響という点から、「核兵器の使用は国際法上違反か」を問うたWHOの要請について、「健康問題を担当する専門機関であるWHO憲章からみても勧告的意見を求める権限はない」と門前払いした。14人中11人がこれを支持した。
WHO総会は1993年5月、ICJへの勧告的意見を求めることを決定。国連総会は94年12月、「核兵器の使用や核兵器による威嚇は、あらゆる場合に違法かどうか」について勧告的意見を求める決議を採択した。
昨年秋に開かれた口頭陳述に立った22カ国のうちオーストラリアや非同盟諸国など15カ国が、現代の戦争法規の底流を形づくったハーグ陸戦規則(1907年採択)が、「不必要な苦痛」を与える兵器の使用を禁止していることなどから、人体を長期間むしばむ放射線障害をもたらす核兵器の使用を、あらゆる場合に違法とするよう求めた。一方、米国などの核保有国は、(1)政治的問題であり司法判断になじまない(2)もし司法判断する場合は、使用する核兵器の規模や目的などに応じて判断すべきで、すべての核使用を違法とすべきではない──と反論した。中でも米国は自衛権を主張するとともに、「核兵器は、通常兵器がそうであるように、さまざまな方法で使うことができる」とし、文民への被害を小さく抑える「限定核戦争」は違法ではないとの考えを強調していた。

【解説】国連の国際司法裁判所(ICJ)が8日、核使用・威嚇が一般的には違法としたのは、核使用に「法の支配」を広げようとする点で画期的なことだ。ただし自衛権による核使用を例外的扱いし、法的判断を示さなかった。自衛による限定的な核攻撃が、地球の文明、生命進化にも甚大な影響を与える恐れのある全面核戦争に拡大する恐れは消えていない。ある国がICJの判断に沿って「違法ではない」と考えた限定核攻撃が、とても合法とは言い難い大規模な核戦争に突き進む危険をはらんでいる。
核戦争を局地的に限定できるかどうか。米政府代表団は、昨年秋にICJが開いた口頭陳述で、「核兵器は、通常兵器がそうであると同様に、さまざまな方法で使うことができる。文民に対する被害、攻撃にともなう破壊の規模を大きくも、小さくもできる」と言いきった。
冷戦が終結し、軍事的には米国が圧倒的な力を持つようになった。冷戦時代のような核保有国間の危険は大きく後退したと言えるだろう。だが、今なお核保有国は合わせて2万発を超える核弾頭を所有しており、依然として局地的な核使用が大規模な核戦争につながる可能性がゼロになったとは言い切れない。こうした点に危惧を持つオーストラリアは口頭陳述で、「核攻撃は必ず大規模な核戦争に拡大する」と懸念を示した。だがICJは勧告的意見の中で、この疑問には十分に答えないまま、違法と合法の判断を避けた。
ICJの勧告的意見は、一般論として核兵器使用・威嚇を違法とみたことで、少なくとも、大規模な核戦争の違法化をめざしたとも読める。半面、核抑止を重視して「あらゆる核使用が違法とはいえない」と主張した核保有国と、核廃絶を目指して核使用は絶対違法と主張してきた南太平洋諸国などとのはざまで、「一般的には違法、自衛目的の核使用は判断せず」という玉虫色の意見となった側面もある。
だが、限定的核攻撃と、大規模な核戦争を完全に断ち切れない限り、そうした試みは地球規模の危うさと背中合わせのままだろう。
こうした危うさを減らしていくには、核軍縮が不可欠だ。ICJも、核兵器保有国には誠実に核軍縮を追求する義務があると強調しており、9月調印をめざす包括的核実験禁止条約(CTBT)の最終妥結や、交渉がとどこおっている軍事用核物質生産禁止条約の推進、米ロ間の第2次戦略兵器削減条約(START II)の発効などを核兵器保有国が率先して実施する必要があるだろう。(ハーグ=吉田文彦)(朝日新聞 1996/07/09)

「拘束力ない」政府なお静観
核兵器使用・威嚇の違法性をめぐって国際司法裁判所(ICJ)が8日、「国際法上、一般的に違法」としたことについて、日本政府は「内容についてコメントしない。ICJの勧告的意見は、法的拘束力を有しない」(外務省の橋本宏報道官)とのコメントを発表するだけで、一貫して事態を静観した。一般論とは言え「違法」に言及したICJに対して、政府は最後まで被爆国としての存在感を示せなかった。この機会にも核使用の是非について姿勢を示せなかったことで、今後の核軍縮をめぐる日本の国際的な発言力に影響が出るのは必至だ。
政府は8日、「国際法上、違法とは言えないが、同法の人道主義の精神に合致しない」(外務省幹部)とする従来の政府見解を繰り返した。唯一の被爆国として「あれだけの大量破壊兵器を合法とは言えない」という立場と、国際社会の一員として「米国の核抑止力に頼っている以上、違法とは言い切れない」という立場の双方を考慮したものだ。
外務省は「ICJの口頭陳述で、違法を明言した広島、長崎両市とは、早さに違いがあるだけで、究極的に核兵器の廃絶を求める考えに違いはない」として、矛盾点がないことを強調する。しかし、政府は違法性についての判断を避けただけでなく、ICJに勧告的意見を求めた世界保健機関(WHO)と国連総会の決議でも、「核保有国を含む先進国と非同盟諸国の対立を深める懸念がある」(五十嵐広三官房長官=当時)などとして、決議を棄権している。
一方、日本は1994年11月の国連総会第1委員会で「核兵器の究極的廃絶に向けた核軍縮に関する決議」を単独提案。米英仏など核保有国を説得して、国連総会での決議採択にこぎつけた。しかし、今回のICJの判断をめぐる一件で、国連決議でせっかく示した日本の存在感を薄めたのも事実。
政府としては、難航している包括的核実験禁止条約(CTBT)交渉で、条約案の7月末までの採択をめざし、核保有国などへの働きかけを強めようという考えもある。しかし、政府のICJの判断に対するあいまいな態度は、CTBT早期締結に向けた日本の働きかけの迫力をそぐ結果になりかねない。(朝日新聞 1996/07/09)

旧日本海軍も原爆開発 第2次大戦末期
米機密公文書で判明
【ワシントン1日時事】旧日本海軍が第2次世界大戦末期、秘密裏に原爆開発を進め、1944年末から45年初めにかけて上海で130キロの酸化ウランを購入していたことが、機密指定を解かれた米軍機密文着で明らかになった。ウランは海軍から委託された京都大学の荒勝文策教授の元に送られたとされるが、その後の用途などは不明。旧陸軍が大戦中、理化学研究所に原爆開発を要請、原料のウラン収集を進めていた事実は知られているが、海軍も原爆研究を具体化させていたことになる。
米国立公文書館に保存されている米軍情報将校、ラッセル・フィッシャー少佐が戦後、上海から米陸軍省に送った報告(46年3月27日付)によると、日本海軍上海基地のエージェントが酸化ウラン130キロを上海のブラックマーケットでブローカーから購入、船で日本に輸送された。代金は海軍が用意した1億円の資金から支払われたという。
報告は「購入は海軍の委託を受けた京都帝国大学の原子力エネルギー計画用の調達」と指摘、荒勝教授は当初ウラン1500キロの購入を要請したとしている。報告はまた、日本が支援した上海の自然科学研究所でも原子力研究や関連物質調達が行われた可能性があると伝えた。報告の情報源は、日本人科学者、海軍当局者、中国人情報提供者らで、「信頼できる」とされている。
荒勝教授は当時、科学研究推進協会原子核小委員会の主任研究員を務め、41年に「ウランおよびトリウムのガンマ光線による光分裂」と題する論文を発表していた。

湯川博士らも参画

米歴史家チャールズ・ストーン氏の話 わたしの調査では、旧日本海軍が原爆研究に着手したのは1942年ごろで、精力的な実験家だった荒勝文策氏に白羽の矢を立てた。極めて小規模な研究ながら、後にノーベル物理学賞を受ける湯川秀樹博士ら有能な物理学者が動員された。陸軍が委託した仁科芳雄博士の理化学研究所と京都大学は協力せず、独立して研究を進めたが、最終的にはウラン分離方法などで手を結んだようだ。日本本土ではウラン供給源は限られており、日本軍は朝鮮半島や旧満州(中国東北部)など各地でウラン調達に躍起になっていた。(ワシントン、時事)(中日新聞 1996/12/02)

大量のウラン化合物 1946年に徳山で押収
米軍文書 日本の原爆開発裏付け
【ワシントン30日時事】第2次世界大戦後の1946年2月、日本を占領統治中の連合国軍総司令部(GHQ)が、日本政府に原子力研究全面禁止の秘密指令を通達、各地でウランなど原子爆弾の製造につながる物質を大量に押収していたことが、このほど機密指定を解かれた米軍文書で分かった。大戦中の日本軍の原爆開発を察知した米軍が、研究を根絶するために実行したもので、この捜索で山口県徳山市の旧日本海軍燃料工廠(こうしょう)などで550キロに上るウラン化合物が発見されたという。
GHQが終戦直後、陸軍の委託で原爆開発を行っていた東京の理化学研究所(理研)を閉鎖し、サイクロトロン(イオン加速器)などを没収したことは知られているが、核関連物質大量押収の経緯が公表されたのは初めて。被爆国・日本でも精力的に原爆開発が進められた事実をあらためて裏付けるものだ。
日本政府の核関連物質を摘発する特別捜査班がGHQ内に設置され、米国の原爆開発計画に参画したラッセル・フィッシャー少佐が陣頭指揮。同少佐が46年3月1日付で作成した報告は、京都大学の核物理学研究室などを捜索し、京大から三酸化ウラン86キロ、八酸化三ウラン11キロなどを押収したとしている。(中日新聞 1996/12/31)

100大軍需企業 日本勢も9社 1位は米ロッキード 96年番付米誌発表
【ワシントン23日時事】23日発表の米軍事専門週刊誌ディフェンス・ニューズ最新号は独自の調査を基に、昨年の世界の軍需関連企業上位100社の番付を公表した。トップは総合軍需企業に発展した米ロッキード・マーチン社で、昨年の軍事関連収入は143億ドル。100大軍需企業の中に、日本企業も9社がランクされている。
番付によれば、2位は米マクドネル・ダグラス社(101億ドル)、3位は英ブリティッシュ・エアロスペース社(90億ドル)、4位は米ノースロップ・グラマン社(67億ドル)で、10位内を6社の米企業が占めた。
日本勢では、トップの三菱重工業が16位で、昨年の軍事関連収入は28億ドル、総収入に占める軍事部門の内訳は10.5%。以下、三菱電機(30位)、川崎重工業(43位)、石川島播磨重工業(49位)、NEC(66位)、東芝(69位)、日立造船(82位)、小松製作所(92位)、三井造船(97位)。
100大企業の国別内訳では、米国の44社がトップで、フランス(12社)、日本(9社)、英国(9社)、ドイツ(6社)の順。同紙は日本企業については、「自衛隊からの防衛契約が中心」としている。(中日新聞 1997/07/24)

海保に対テロ特殊部隊 核ジャック警戒 装備『外国』並み
海上保安庁に、リマの日本大使公邸人質事件でペルー軍部隊も突入作戦に使ったドイツ製短機関銃MP5や、光と大音響で人間を数秒間、抵抗不能の状態にする特殊せん光手投げ弾など、海外の特殊部隊並みの装備と能力を持つ対テロ特殊部隊が存在することが4日、分かった。
部隊の正式な発足は1996年5月だが、前身の部隊は92−93年のフランスから日本へのプルトニウム輸送で隊員13人が運搬船あかつき丸に極秘裏に乗り込み、核ジャックの警戒に当たった。
発生から1年たった大使公邸事件の教訓から警察の特殊部隊「SAT」を強化する動きが出ているが、海上保安庁の特殊部隊の実態や活動が明らかになったのは初めて。部隊誕生の背景にはプルトニウム輸送の安全性を懸念した米国の意向も働いたという。
部隊は「特殊警備隊(SST)」という名称で、第5管区海上保安本部(神戸)の大阪特殊警備基地(大阪府泉佐野市)にある。同庁筋によると、そもそもの部隊の前身は過激派による海からのテロを警戒して約10年前にできた関西空港の警備隊。プルトニウム輸送を前に、より高度な能力を持つ別の部隊が発足し、この2つの部隊を96年に統合して特殊警備隊としてスタートした。同庁は部隊の装備など詳細についてこれまで一切公表していない。
特殊警備隊が持つMP5は、近接戦闘で強力な威力を発揮する9ミリ口径のサブマシンガン。ロンドンのイラン大使館占拠事件(80年)の突入作戦で有名な英国陸軍特殊空てい部隊(SAS)など世界の特殊部隊が装備している。
武器はほかに、自衛隊の89式自動小銃、狙撃用高性能ライフル、15連発の自動けん銃P226を装備し、特殊せん光手投げ弾、消音器、暗視ゴーグルといった対テロ作戦に不可欠な特殊装備を持つ。隊員は自衛隊で爆発物や機雷の取り
扱いを学び、自衛隊の演習場でも訓練している。
隊員は40人弱で、全国から選抜された体力、射撃、格闘技に優れた若手の海上保安官で構成。シージャック事件などの際には、同庁のヘリコプターで全国に緊急展開し、ヘリからロープで降下しテロリストを急襲、制圧する。
89年8月には前身の部隊が沖縄近くの東シナ海を航行中のパナマ船籍の鉱石運搬船(約86,000トン)でフィリピン人船員らが、船長ら英国人船員を監禁した暴動事件に関係国の要請で出動。けが人を出すことなく鎮圧した。
海上保安庁は、同庁法で海上保安官には武器の携帯が認められており、特殊部隊の装備は問題がないとしている。(中日新聞 1998/01/05)

「レーザー核融合は兵器研究」 米シンクタンク 阪大などに中止要求
【ワシントン15日共同】米国や欧州、ロシアの各国が研究を推進し、日本では大阪大などが進めているレーザー核融合研究について、米民間シンクタンクのエネルギー環境研究所15日、核融合が実現した場合、あらゆる核爆発を禁止した包括的核実験禁止条約(CTBT)に違反するとして各国の研究中止を求める報告書を発表した。
報告書は、レーザー核融合は起爆用の原爆を必要としない「純核融合爆弾」の研究につながると指摘している。
レーザー核融合は、小さな容器に閉じ込めた水素に四方八方からレーザーを浴びせて高温高圧状態を作り、水素原子を融合する技術。
まだこの方法での核融合は実現していないが2002年の完成を目指し、米国立ローレンスリバモア研究所で建設中の巨大レーザー施設NIFは出力が従来よりけた違いに大きく、核融合の点火が可能とされる。
報告書は「レーザー核融合は爆発的にエネルギー放出するためCTBT違反」と指摘。実現可能性が実証された後では兵器への技術転用を押しとどめるのは困難として、NIFとフランスが計画中の同規模の施設「メガジュール」の中止を訴えた。
将来の発電など平和利用を目的としている大阪大の研究についても、エネルギー環境研究所は実験装置の出力を拡大する構想は放棄すべきだとしている。

平和目的に限定

三間圀興・大阪大レーザー核融合研究センター長の話 米国がNIFを核兵器の維持管理にも使おうとしているのは事実だが、レーザー核融合で原爆のいらない核兵器ができるというのは根拠のない非科学的な主張だ。われわれの研究は平和目的に徹しており、目的の異なる軍事目的に簡単に応用できるものではない。(中日新聞 1998/07/16)

沖縄で核戦争も辞さず 1950年代に計画 米軍、有事防衛で 秘密文書判明
沖縄が米国の施政権下にあった1950年代後半、現地駐留の米軍が、旧ソ連など敵の侵攻を受けた際に備え、核兵器の使用を含む沖縄本島の防衛作戦計画を立てていたことが1日、米海兵隊の秘密指定文書で明らかになった。作戦計画には、米軍が損害を受け反撃能力を失ってしまったような最悪の場合などに、敵の進撃や占拠、利用を阻むため、自ら核攻撃を加える島内の主要な軍事拠点や使用核弾頭の種類を事前に定めたリストも添えられている。住民を巻き込み大きな犠牲を出した激戦地を今度は、「核の戦場」ともしかねなかった計画は、冷戦時のアジア太平洋における米軍事戦略の一端を示す新たな史料。
この文書は、沖縄のキャンプ・コートニーに今も司令部を置く米第3海兵師団が57年10月14日付で作成した「作戦計画4−57(琉球諸島の地上防衛戦)」の一部。米原子力法の制限に基づき公開されていないが、沖縄をめぐる日米外交史を調べていた米国の研究者がワシシトンの海兵隊歴史センターで見つけた。
同計画によると、琉球諸島の有事の際、在琉球米陸軍・陸軍第9軍団は沖縄本島の防衛を最優先に地上戦闘を遂行し「核兵器が発射可能な8インチ(203ミリ)りゅう弾砲、もしくはオネストジョン・ミサイルの部隊の展開準備を行う」などとしている。
その上で、第3海兵師団を陸上の反撃部隊の主力と位置付け「嘉手納飛行場、関連核兵器貯蔵施設など最重要防衛地点」が集中する島中部の石川地区から南を「いかなる犠牲を払っても守る」よう努め、必要なら核兵器を用いると明記している。(中日新聞 1998/08/02)

三菱電・米ロッキード提携 防衛分野で共同研究 レーダーなど電子機器
三菱電機と米防衛最大手のロッキード・マーチンは24日、防衛分野で広範に提携することで基本合意した。次世代のミサイル、レーダーなどの防衛装備品の主要部分を業界で初めて共同開発するほか、防衛庁への受注活動でも共同歩調をとる。米社の最先端技術を導入し研究開発を効率化したい三菱電機と、日本市場でのシェア拡大や日本の高度な電子技術の取り込みを狙うロッキードの利害が一致した。両社の提携は縮小する日本の防衛市場で日米企業が生き残りを目指したもので、世界で進む防衛産業再編の波が日本にも及んできた。
両社が提携するのは、航空機や艦艇に搭載するレーダーや武器管制装置、電子戦システム、ミサイル用の各種電子機器など防衛エレクトロニクス分野。合意内容は(1)両社の持つ防衛技術や市場情報を交換する(2)防衛庁向けに新製品・技術を共同で提案活動する(3)ロッキードは電子機器の日本でのライセンス先として三菱電機との提携を深める──などが骨子。
具体的な提携内容を詰め、近く合意文書を交わす。ミサイルの心臓部となる誘導制御装置などを第1弾の開発候補として検討していると見られる。
日本の98年度防衛予算のうち戦闘機や艦船などの正面装備費は、ピークだった90年度の約3割減となる7980億円まで減少する見込み。国内防衛産業は大幅な受注減に見舞われ、対策を迫られていた。
ロッキードの97年の売上高は280億ドル。日本へは対戦哨戒機P3Cやイージス艦などを納め、納入額は海外勢では長年トップだった。しかし、市場が縮小してきたため、三菱電機との提携により、日本国内の研究開発プログラムに参画して需要を開拓する。
一方、三菱電機は97年度防衛庁向け売上高が約300億円で国内3位だが、すべて防衛エレクトロニクス分野が占め、同分野ではNEC、東芝を引き離してトップ。戦闘機用レーダーやミサイル制御装置などは電子化が技術のかなめとなっており、同分野での技術力を強化するため、電子化で定評のあるロッキードと手を組むことにした。(日本経済新聞 1998/08/25)

米の核搭載艦 定期寄港 日本政府は黙認 冷戦時代の米公文書公開
【ワシントン22日時事】米軍が1960−70年代の冷戦期を通じ、日本の非核3原則を無視して定期的に核兵器を日本に持ち込み、日本政府も事前協議なしに寄港を容認してきたことを示す米機密文書が多数解禁され、21日公開された。沖縄の嘉手納基地や東京の横田、府中両基地が米軍の核戦略任務の一端を担っていたことも初めて判明した。
核兵器搭載の米艦船は寄港・通過していないとする戦後の日本政府の主張は、今回の文書公開で覆される可能性がある。
解禁された文書は、米国家安全保障会議(NSC)や太平洋軍司令部(ハワイ)の報告など計23点。
米シンクタンク、ノーチラス研究所が情報公開法(FOIA)に沿って入手、「核の傘の下の日本」のテーマで公表した。
それによれば、沖縄返還交渉の行われていた69年4月29日付でNSCが作成した対日政策文書は、「日本は核兵器を装備した海軍艦船の一時通過(トランジット)を黙認しており、この権利は自動的に沖縄にも適用される。核搭載航空機の沖縄通過は作戦の柔軟性を高める」と指摘、日本政府が事前協議なしの通過権を了承したことを明記している。
太平洋軍が73年に作成した司令部記録も、「日本政府はこれまで核搭載艦船の寄港を黙って受け入れてきた」とし、「国務省は日本への寄港前に核兵器を外すよう求めたが、海軍作戦部は戦術上受け入れられないとして拒否した」ことを明らかにした。
また、佐藤栄作元首相が非核3原則を表明していた67年、太平洋軍司令部は日本に空対空核ミサイルを配備する緊急計画を策定。62年には、米軍と自衛隊が核使用を想定した空軍演習を行っていた。
一方、米軍は60年代半ばから70年代にかけて在日米軍基地に核戦略任務を負わせ、府中基地に核計画を担当する太平洋軍作戦連絡事務所を置いたほか、嘉手納基地は沖縄返還後の74年、核戦略に関する単一統合作戦計画(SIOP)への関与が強化された。嘉手納、横田両基地は65年、核指令・統制用航空機の寄航地になったという。
核搭載艦船の日本への寄港・通過容認については、ライシャワー元駐日大使が81年、「日米間に口頭了解があり、実際に核を積んだまま寄港している」と発言、63年に大平正芳元外相が同大使に「了解」したことを示す米側文書も最近発見されている。(中日新聞 1999/07/23)

「旧日本軍が終戦直前、原爆実験?」 朝鮮半島東岸沖合 GHQに極秘情報
【ワシントン5日時事】旧日本軍が第2次世界大戦の終戦直前、現在は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)領となっている朝鮮半島東岸の興南沖合で原爆実験を実施したとの情報を米軍がつかみ、戦後日本を占領統治した連合国軍総司令部(GHQ)などが秘密裏に調査していたことが、米国立公文書館で時事通信が入手した米軍機密文書(約300ページ)で分かった。1947年の米軍防ちょう機関の報告は「原爆に似た爆発があった」と伝えているが、真相は解明できなかったもようだ。
また、これらの文書から、米軍は興南にあった化学コンビナートで日本海軍が秘密裏に核開発を進めていたとみて、朝鮮戦争(50―53年)に乗じて疑惑施設を徹底的に爆撃していたことも明らかになった。
米軍犯罪調査部隊のデービッド・スネル氏は、旧日本軍が45年8月12日未明、興南沖三十数キロの海上で原爆実験を行い、巨大なきのこ雲が上がったとの情報を、ソウルで元日本軍情報将校から入手。退役後の46年、米ジョージア州アトランタの新聞に公表したが、一笑に付されていた。
しかし、在朝鮮米軍司令部防ちょう部隊が47年1月16日付で作成した報告は、調査結果として、「日本軍は朝鮮北部東海岸沖に浮かべた小さな船で爆破を伴う実験を行い、原爆に似た爆発が起きた。関与した科学者らの名も(スネル報告は)正確だ」と指摘、科学者は旧ソ連軍によってソ連に抑留されたと伝えた。興南は8月12日、進攻ソ連軍に占領された。
興南での日本軍の核開発説について、45年のGHQ文書は(1)日本軍復員者によると、興南の化学工場で原子力関係の実験が行われていた(2)日本海軍は興南の化学工場の秘密部門で、「NZ計画」と呼ばれる水素化合物によるジェット燃料実験を実施していた(3)ソ連による興南占領後、秘密施設がソ連軍に接収され、日ソ両国科学者の共同研究が行われている―などの情報を挙げて、徹底調査を命じた。
興南には戦前、日本窒素肥料(チッソの前身)の大型化学工場があり、海軍と共同で重水などを生産していた。
一方、朝鮮戦争中の米軍文書(50年12月29日付)によれば、米軍は興南の化学工場施設に空爆を加え、施設の95パーセントを破壊したという。(西日本新聞 1999/08/06)

東京に核戦略拠点 67年から5年間偵察計画など作成 米太平洋軍
東京都府中市に1945年から74年まであった米・第5空軍基地施設内に、67年から5年間、米太平洋軍(司令部・ハワイ)の核戦争を想定した作戦連絡事務所が設置され、日本が米国の重要な核戦略拠点になっていたことが、このほど初公開された米太平洋軍の62〜92年の年次記録などで明らかになった。冷戦期、「核の傘」がどういう実態だったかが示された。
安全保障問題などが専門の「ノーチラス研究所」(カリフォルニア州)のハンス・クリステンセン研究員が情報公開法により入手、原文をインターネットで公開した。
それによると、米軍の核戦略に核兵器を搭載した航空機や艦船を一体として運用する「単一統合作戦計画」が存在。この遂行のため、府中市に太平洋司令作戦連絡事務所が67年から72年まで置かれ、作戦計画が立てられた。
4人の将校と3人の事務員が勤務。核戦争に備える太平洋地域の「事前偵察計画」作成や核を使用した場合に敵の軍事施設などにどの程度のダメージを与えるかの分析にもあたった。
事務所閉鎖後も「作戦計画そのものは横田基地(東京都)や嘉手納基地(沖縄県)で引き続き遂行された」と記され、75年には核戦争時に作戦を指揮する航空機「ブルー・イーグル」が両基地とフィリピン基地で10回の核戦争の「地上警戒待機」訓練を実施していた。
別の公開資料には、79年10月、韓国の朴正煕(パクチョンヒ)大統領が暗殺された直後、米国は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)から攻撃があった場合に韓国を支援するため、空母キティホークを横須賀から東シナ海に派遣したとあった。当時の「キティホーク 西太平洋・インド洋派遣リポート」には「11月、韓国からフィリピンへ向かう途中に実施した演習は、模擬核爆弾11発を投下した」と書かれていた。
62年日本近海とみられる地域で行われた防空・空爆演習で「核戦争の伝達過程のための訓練を実施した」との記述もあった。クリステンセン研究員によると、核兵器を装備したすべての部隊に、無線などで作戦司令を伝達する訓練という。
これらの資料について米国の核戦略に詳しい軍縮問題専門家の梅林宏道さんは「日本国民が何も知らされないうちに、領土や領海が米国の核作戦に利用されており、『核の傘』の代償の大きさを証明している。驚いた」と話している。【高村洋一】(毎日新聞 1999/08/09)

日本の核武装に警戒を 米調査機関が報告書発表
【ワシントン9日共同】米国の安全保障問題の調査機関「国家安全保障ニュース・サービス」は9日、核兵器開発に必要な科学技術水準の高さや朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)・中国情勢など地政学的な理由を背景に、日本の核武装の可能性を指摘する報告書を発表した。
唯一の被ばく国として「核アレルギー」が強いとの常識の一方で、歴代の日本政府高官は過去30年間にわたって核武装の可能性を否定していないとして、報告書は「米国が核の傘の提供を止めれば、日本は真剣に核武装を検討するだろう」と述べている。
報告書は(1)日本は核兵器用に使える大量のプルトニウム、運搬用のミサイル技術を保持している(2)日本に対する国際原子力機関(IAEA)の監視体制が弱い──などを指摘し、国際社会に日本の原子力・宇宙開発政策への警戒を強めるよう呼び掛けている。
また、報告書は1995年までに日本は核武装すると予想した米中央情報局(CIA)の79年の報告書や、佐藤栄作首相がジョンソン大統領に日本の核武装の必要性を説いた1965年の日米首脳会談の議事録などを基にしている。
同サービスは記者会見で、日本が1992年にロシアからソ連製の中距離ミサイルSS20技術を購入し、ミサイル技術を向上させたとの独自に得た情報も公開した。同サービスは安全保障問題に関する情報を米情報自由法(FOIA)やニュース報道などで入手し分析している組織。(共同通信 1999/08/10)

日本本土の核兵器配備
【ワシントン20日共同】米核軍縮団体である天然資源保護協会のノリス上級研究員らは22日、米国防総省の機密解除文書を分析し、返還前の沖縄に合計1200発以上の核爆弾・弾頭が配備され、本土にも1950、60年代に核物質部分を除いた核爆弾の容器が配備されていた、とする論文を発表した。
返還前の沖縄の核配備はこれまでも知られていたが、論文は合計18種の配備核兵器など初めて具体的に明示。核物質を積み込むだけで爆弾となる半製核爆弾が日本に配備されていたと指摘し、対共産圏の最前線として日本列島が米核戦略の重要拠点だったことを裏付けた。米政府は日本への半製爆弾の配備について日米関係への影響を懸念し明らかにしなかったという。
国防総省の文書は「核兵器の管理・配備の歴史」(1978年2月)。同氏らの情報公開請求を受けて同省がこのほど一部を公開した。
同省文書は一部の国名を安全保障上の理由で黒塗りで消し「日本」「沖縄」とは明記していないが、国名がアルファベット順の配列となっていることや他の公開情報を基に、論文は特定している。
沖縄には台湾海峡の緊張を受けて、まず核爆弾の容器を54年7月に初配備し、完全な核爆弾(54年12月)、対潜水艦核爆弾(57年12月)、地対地ミサイル、マタドール(57年11月)などを順次配備、ベトナム戦争が激化した最多期の67年にはアジア太平洋の合計3200発のうち、1200発以上が沖縄にあった。50年代末には嘉手納空軍基地だけで800発あった。
沖縄の核はグアム島、韓国よりも大量に配備されていたが、返還が実現した72年にすべて撤去された。日本の核爆弾の容器部分の配備はアイゼンハワー政権が54年12月に命じ、最終的な撤去は65年6月となっている。(共同通信 1999/10/20)

日本に核物質抜き核爆弾 沖縄には完全な「核」配備
1954−65年 米国防総省文書で判明
【ワシントン柑日=林路郎】ソ連軍や中国軍との軍事衝突を想定した米国が1954年末から翌年にかけ、核物質部品だけを取り除いた核兵器の本体(核物質抜き核爆弾)を日本本土の米軍基地へ持ち込み、その存在を日本政府に知らせず、65年半ばに撤去していたことが、19日までに解禁された米国防総省公文書などで明らかになった。
また、「核物質抜き爆弾」の配備と同時に、返還前の沖縄には完全な形で核兵器が持ち込まれた。文書は、その数が19種類、最大1200発に上った、と指摘している。日本配備が具体的に判明したのは初めて。
解禁されたのは国防総省が78年にまとめた「1945−77年の核兵器保管・配備の歴史」と題する文書。米国領を含む27か国・地域に配備された最大1万2000発の核兵器配備状況が、付属文書に記されている。
解禁された公文書に、核配備国として国名が明記されているのは、米国領を除けば英国、西ドイツだけ。国名が伏せられた日本などの情報は、核戦略に詳しい民間機関「国家安全保障公文書館」と「天然資源防護評議会」(NRDC)のメンバーらが、数千ページに上る過去の文書や関係者の証言と詳細に照合し、特定した。
日本本土に配備されていた「核物質抜き核爆弾」は、有事の際、別に管理される核物質入りカプセルと一緒に組み立てる仕組み。米軍では通称「非核爆弾」と呼ばれた。在日米軍に詳しい同公文書館のボブ・ウォンプラ一研究員は「有事に、在日米軍を核爆弾の補給基地として使う計画だったことを示すものだ」と指摘する。
アイゼンハワー大統領は54年12月に同爆弾の日本配備を承認したが、米国が配備の事実を日本へ伝えたとの記録はなく、解禁文書によると、65年6月、「核物質抜き核爆弾」はすべて撤去された。撤去に至る状況は依然として機密扱いとされている。
一方、本土への「核物質抜き核爆弾」配備と同時に、沖縄には核兵器が完全な形で持ち込まれた。投下型爆弾、地上発射の弾道・巡航ミサイルなど陸海空3軍が使用する19種類にのぼり、米軍が世界へ展開した機種の半分を占めた。60年には約800発の核兵器が保管されていたが、緊張の高まりを背景に、ピークの67年には沖縄の核は約1200発に膨張。当時、アジア太平洋地域に米軍が配備した総数の3分の1を占めた。
文書はまた、沖縄からの核兵器撤去が完了した日を「72年6月」と記している。同年5月15日の沖縄返還では核撤去が重要な前提条件の1つとなったが、文書によれば、核撤去は返還の翌月にずれ込んでおり、返還前の「核抜き」という日米合意と矛盾する内容となっている。
文書を分析した論文は、米誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」上で発表されるが、同誌は、日本のほか、台湾、アイスランド、デンマーク領グリーンランドでも、ホスト国に秘密で核兵器が配されたと指摘している。(読売新聞 1999/10/21)

プルトニウム埋設を提唱 兵器転用阻止にと米長官
【ワシントン1日共同】リチャードソン米エネルギー省長官は1日、コロラド州デンバーで開かれた核廃棄物処分国際会議で、核燃料として使い切れる見通しがないプルトニウムを、兵器に転用できないように固化して埋設処分する選択肢を、国際的に追求すべきだと提案した。
同長官は9月末の国際原子力機関総会でも、日本などが貯蔵するプルトニウムについて「核兵器に利用可能」と強調しており、処分を求める国際的圧力が強まる事態も予想される。
日本は、原発の使用済み燃料からプルトニウムを取り出す核燃料リサイクルを原則にしているが、高速増殖炉もんじゅ事故などの影響で利用が進まずプルトニウムは余り気味だ。
同省によると、軽水炉などで利用するために使用済み燃料から再処理で取り出されたプルトニウムは、日本の保有分を含め世界で200トン以上が蓄積、毎年数トンずつ増え続けている。
リチャードソン長官は「蓄積したプルトニウムのほとんどは原発で使用する見通しが立っていない」と述べ、固化して埋設処分する研究開発を進めるべきだと強調。来年、米国で固化技術の国際会議を開催する考えを明らかにした。(共同通信 1999/11/02)

13基地で核扱い可能 50年代在日米軍基地で
【ワシントン12日共同】米核監視団体、天然資源保護協会は12日、米軍は冷戦時代に三沢、板付、厚木、岩国、小牧、入間などの米軍基地にプルトニウムなど核物質部分を取り外した核爆弾を配備、佐世保や横須賀には核搭載艦が常時出入りしていたことが、米文書で確認されたと明らかにした。
同協会のロバート・ノリス氏によると、核兵器の一部が配備されたり、核兵器配備を想定していた在日米軍施設は計13あったという。「1956―57年米極東司令部核兵器作戦手続き」で明らかになった。
核物質を除いた核爆弾を日本に前方配備し、有事の際に沖縄などから核物質を緊急輸送し、完全な核爆弾にする態勢を米軍が50年代に取っていたことは、同氏らの研究や元米兵の証言で既に知られている。
同氏によると、米国防総省や統合参謀本部は日本本土に完全な核爆弾を配備する許可を最後まで得られず、特に米国務省は核配備が日本国民に漏れた場合に、反米・反日本政府感情が高揚し、親米の自民党政権が崩壊するのを嫌ったという。(共同通信 1999/12/13)

父島、硫黄島にも核兵器 返還後も有事再配備の密約
【ワシントン12日共同=杉田弘毅】1968年に日本に返還された小笠原諸島の父島と硫黄島に、米国が50年代から返還直前まで対ソ連・中国戦を想定し核兵器を配備、返還後も有事の際の再配備を認める日米両政府間の密約があったことが、公開された米政府の機密文書などで12日明らかになった。
米核監視団体の天然資源保護協会が発表した。小笠原諸島の核配備や返還後の密約が明らかになったのは初めて。同協会は、再配備に関する密約は後の沖縄返還の際の核持ち込み・通過の密約の先例になったとみている。
同協会のロバート・ノリス氏らは10月、沖縄に1200個の核が配備されていたなど冷戦時代の米核配備状況を発表したが、この時特定できなかった2地点がその後両島だと分かった。
米統合参謀本部文書(57年6月)は、56年2月に父島に核爆弾配備が始まったと記録。海洋発射核ミサイルのレグルス、タロスと合わせ3種類の核兵器が65年12月まで配備されていたことが確認された。
硫黄島には、プルトニウム部分を外した核爆弾を56年2月から返還の2年前まで配備。56年9月―59年12月の間は、同部分
も含む完全な核爆弾も置かれた。両島とも配備数は不明。
同氏らは、両島が核ミサイルを発射した潜水艦がミサイルを再装てんする基地と位置づけられており、日本などの基地が破壊された後も、米軍が目立たない両島からの核攻撃継続を想定していたとしている。
小笠原返還に伴う有事の核再配備の密約は、米軍の強い意向を受けジョンソン政権が佐藤政権と交渉、秘密合意に達し、後の日本政権も従う方向で協議が進んだことが、国務省文書で確認された。
返還直前の68年4月10日に「小笠原諸島核貯蔵の合意」を交わしたことも記録されており、この合意自体は公開されていないが、同氏らは米軍による核再持ち込みの権利を認めた文書と断定した。(共同通信 1999/12/13)

日本、核武装の可能性研究 2件の報告書、と韓国紙
【ソウル15日共同】韓国の中央日報は16日付早版で、日本が佐藤栄作内閣時代の1960年代後半から核兵器開発を検討した報告書を作成し「原爆の製造は技術的に可能だが、外交的な孤立を招くおそれがある」との結論を下していたと報じた。
同紙が独占入手したとする報告書は、内閣調査室(現在の内閣情報調査室)が、蝋山道雄元上智大教授ら数人の核問題専門家に依頼。68年、70年の2回にわたり、日本の核兵器開発能力と核兵器保有の外交的影響などについて、それぞれ分析している。
佐藤元首相は65年の日米会談で「中国が核武装するなら日本も核を持つべきだ」と個人的見解を表明したことが米側の会議録草稿で明らかになっているが、核兵器開発を政府が検討、分析したことを裏付ける資料はこれまで見つかっていない。
報道によると、68年の報告書は「少量の原爆製造は可能だが、濃縮ウランを独自に製造するには80年代半ばまでかかる」と予測、核弾頭搭載のミサイル開発にも時間がかかると指摘した。
続く70年の報告書は「日本より核兵器開発が先行している中国から、核攻撃を受ける可能性もある」と中国の脅威を指摘。しかし「中国をしのぐ核攻撃能力を持つのは不可能で、狭い国土で地下核実験も難しい」と分析し「米国の(日本への)不信感も増し、外交的孤立は避けられず、日本の安全保障(能力)は核武装で高まることはない」と否定的な見解をまとめたという。(共同通信 2000/02/15)

日本に核兵器「貯蔵」 米参謀本部、62年に構想
日米安保条約改定から2年後の1962年、米軍を統括する統合参謀本部が、日本に核兵器を常時配備する「貯蔵」構想を提案、日本での混乱を恐れた国務省やライシャワー駐日大使(当時)の反対で実現しなかったことが18日、機密指定を解除された複数の国務省公文書から明らかになった。
文書はいずれも米メリーランド州の国立公文書館とボストンのケネディ大統領図書館から見つかった。
国務省極東局アジア部が62年3月、ハリマン国務次官補(極東担当)に提出したメモは、統合参謀本部が貯蔵問題を提起したと記載。参謀本部は太平洋軍司令官に対し「核兵器の防衛上の利点」について自衛隊当局者と「内密に協議するよう」指示したとしている。
これを受けてラスク国務長官は4月1日、ライシャワー大使にこれまでの経過を打電。「日本への打診は時期尚早」とする国務省内部の見解を伝えた。
大使は長官あての返電で、「(現在の状況下で)貯蔵問題を協議しても不毛だ」と主張。「(貯蔵問題が)漏れたら、池田(勇人首相)は公式に反対を表明せざるを得ない」と断じた。(ワシントン=共同)(日本経済新聞 2000/02/19)

日本本土から核攻撃計画 60年代、米機密文書明記
【ワシントン7日共同=太田昌克】ソ連に加え中国が核開発を進めた1960年代に米軍が朝鮮半島などの有事に備え、返還前の沖縄に配備した核兵器を横田(東京都)や三沢(青森県)板付(福岡県)の米軍3基地へ即時搬入できる態勢を取り、爆撃機などで日本本土から当時のソ連や中国を核攻撃する作戦計画を立てていた。7日までに、機密指定を解除された米公文書から明らかになった。
日本を巻き込んだ米核戦略の一端が明るみになるのは異例。日本の歴代政権が核持ち込み拒否の姿勢をみせる裏で、米軍が在日基地を核戦争の出撃拠点と位置付けていた事実を示す。
62年3月22日付の国務省極東局フィアリー日本課長あてのメモは米空軍が「ハイ・ギア計画」の暗号名で本土に核兵器を運ぶ輸送機C130を沖縄・嘉手納基地に24時間待機させている状況を明記。
嘉手納から核兵器を持ち出し、横田基地のB57爆撃機(36機)、三沢、板付両基地のF100戦闘機(計51機)に装備させるまで、4―6時間かかると見積もっている。
また同日付のライス国務副次官補(極東担当)発信のメモ「日本での核兵器貯蔵」は統合参謀本部が反撃に要する時間を短縮するため、日本への核配備を要望している経緯を指摘。日本の反核感情から「核兵器を速やかに搬入するために特別に編み出した手順」を取らざるを得ないと説明している。
さらに同メモは、軍部が核貯蔵の秘密合意を日本側と結ぶことや、核搭載のC130を交代で在日基地へ展開させる方策を検討している事実を記載しているが、当時の複数の政府関係者はいずれも日本の政治状況などへの配慮などから実現しなかったと語っている。(共同通信 2000/05/08)

有事なら今も核の前線に 日本組み込む米戦略 本土から出撃
【ワシントン7日共同=太田昌克】米国務省機密文書から7日までに明らかになった、沖縄配備の核兵器を搬入し日本本土から出撃するという作戦計画は、非核政策を内外に訴えてきた日本が米核戦略にいかに深く組み込まれていたかを見せつけている。
同時に、いまも米国の「核の傘」の下にある日本が、有事には簡単に核戦力の前線となり得る現実をあらためて思い起こさせる。
米国は第2次大戦後、ソ連の圧倒的な通常戦力に対抗するため核戦力を強化してソ連の西欧侵攻を抑止。極東では朝鮮半島や台湾海峡の火種を抱え、核使用を想定したシナリオも描いていた。
緊張状態を背景にかつては沖縄へ核兵器を配備。沖縄の核は日本復帰の72年までに引き揚げられたとされるものの、米国はその後も大陸間弾道ミサイルなどで日本に傘を提供。その下で日本の歴代政権は“非核政策”を堅持してこられた。
もちろん、核持ち込みは日米安保条約の「事前協議」の対象で日本側は拒否できる。しかし、米核戦力に国防の根本を預けながらいざ有事が発生した場合、「核の傘」を抜け出て非核の国是を貫けるのか。
そうした意味で、秘密文書は決して過去の冷戦秘話ではなく、今なお「核の傘」が内包する現実を日本に突き付けている。(共同通信 2000/05/08)

日本に核武装の懸念 アジア重視へ転換提言 米諮問
【ワシントン26日共同=杉田弘毅】米国防総省の諮問機関が「2025年のアジア」と題した報告書で、南北朝鮮統一後の在日米軍の撤退、日本の核武装化や米中衝突など懸念されるシナリオを想定し、これを防ぐために米軍事戦略を現在の欧州重視からアジア重視に切り替えるよう提言していたことが26日分かった。
報告書は「米国の関心は欧州に向いているが、脅威があるのはアジアだ」と結論付け「より実体のある米軍のアジアでのプレゼンス」の増強を今から策定するよう促した。
報告書は官民のアジア研究者でつくるスローコム国防次官(政策担当)の諮問機関が昨年夏に答申。同省が26日に明らかにした。
朝鮮半島統一の場合は、日本と韓国の民族主義勢力が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の脅威の消滅を理由に米軍駐留の反対論を高め、米軍は沖縄も含めて徐々に撤退を開始。日本が朝鮮半島と中国の脅威への懸念として核武装、軍事力増強の道を進む可能性を指摘した。
一方、中国が強大化した場合、東南アジア、中央アジアへの影響力を強め、経済的問題を克服できず弱体化した日本に対して、在日米軍の段階的撤退を迫ることを想定。中国が弱体化する場合は、実権を握る軍の冒険主義的な周辺諸国への介入が米中衝突を招くシナリオを挙げた。
報告書は中国を封じ込める形で米国とインド、日本とインドの同盟関係にも触れ、米国防総省と軍の中国に対する警戒心の強さを浮き彫りにした。
米統合参謀本部はこの報告書などを基に近く世界全体に対する2020年の戦略「ジョイントビジョン2020」を発表する。(共同通信 2000/05/27)

日米安保密約の全容判明 60年改定時 国務省文書に明記
核積み寄港 事前協議対象外 朝鮮有事の出撃も
1960年の日米安保条約改定の際に日米両政府が結んだ秘密合意の全容が、米国の研究機関が入手した米国務省文書から明らかになった。秘密合意は、核兵器を積んだ米艦船が日本に寄港したり、朝鮮半島有事で米軍が日本国内の基地から出撃したりする場合には、日本との事前協議は必要ないとの内容を明記している。事前協議方式は安保改定の柱で、日本の主体的な判断を保証しているはずだが、肝心のところで骨抜きになっていたことを意味する。秘密合意は、これまでも故ライシャワー駐日大使ら元米当局者の証言や関連の米外交文書から存在が指摘されたが、日本政府は一貫して否定してきた。しかし、条約交渉を担当した国務省のファイルから合意内容そのものを含む文書が出たことで、密約の存在は動かせなくなった。

この文書は、米国立公文書館で機密解除された国務省北東アジア部のファイル「議会用説明資料集(コングレッショナル・ブリーフィング・ブック)」の中にあった。ワシントンで情報公開に取り組んでいる民間研究機関ナショナル・セキュリティー・アーカイブ(NSA)が昨年秋に入手したが、その直後に「安全保障」上の理由で再び非公開となった。米政府が60年6月、上院に安保条約の批准を求めた際、ハーター国務長官用の説明資料としてつくったとみられる。
このうち秘密合意の内容を示すのは、密約の全体像を記した「日米安保条約に関連して結ばれた非公開合意の要約」、日米の交渉結果をまとめた「討議記録」、米国の立場から論点を整理した「日米安保における事前協議方式の解説」の3点だ。
「討議記録」は、新たに導入される事前協議方式について、「米軍機の日本飛来、米海軍艦艇の日本領海並びに港湾への進入に関する現行の手続きに影響を与えるものと解釈されない」と記載。核搭載の有無を問わず改定前の旧安保条約下で行われていた艦船の寄港などを協議の対象から外した。
この合意に基づき日米は63年、事前協議の対象となる「核の持ち込み」は核兵器の陸揚げ・貯蔵に限るという解釈を確認した。佐藤栄作首相が67年に「持たず」「つくらず」「持ち込ませず」の非核3原則を表明したが、密約に変更はなかった。国是となった非核3原則のうち、3番目の「持ち込ませず」は当初から空洞化していたことになる。
「事前協議方式の解説」は、朝鮮半島有事への対応として、安保条約発効後に開かれる第1回日米安保協議委員会で藤山愛一郎外相が「在韓国連軍が武力攻撃を受けた場合には、戦闘作戦行動のために在日米軍基地の使用を認める」と発言すると明記。朝鮮半島についての密約は、外相の発言として議事録に盛り込まれる段取りになった。
いずれの場合も、討議記録や議事録という形で密約が残されており、外交交渉で通常取り交わされる交換公文の書式をとっていない。だが、藤山外相とマッカーサー駐日大使がイニシャルで署名しており、政府間の合意として拘束力があることには変わりはない。発覚しても「密約の存在」を否定できるように日本側がこういう形式を求めたという舞台裏が、沖縄返還関連の別の米外交文書の中で明かされている。
事前協議は、旧安保条約にあった不平等性を攻めるため、日本側の要求で60年改定時に安保に付随する交換公文として設けられた。米軍の配置・装備の重要な変更や、日本から出撃する米軍の戦闘作戦行動について米国が事前に日本と協議する仕組みだ。日本政府はこれにより米側に異議を申し立てる「対等性」が確保されたとしていた。
しかし、米国は表向き、日本の主張する事前協議方式を受け入れながらも、密約で核搭載艦の寄港や朝鮮半島への出撃の自由を確保していた。密約の全体像が明るみに出たことで、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)で想定する「周辺有事」の際の日本のかかわり方や非核政策の位置づけなど、外交・安全保障について論議の見直しを求める声が出そうだ。

密約は一切存在しない

藤崎一郎外務省北米局長の話 日米安保に密約は一切存在しない。これが日本政府の一貫した立場である。こういう文書のひとつひとつについて米政府に問い合わせたり、政府が調査したりすることはない。(朝日新聞 2000/08/30)

【安保条約に関連して結ばれた非公開合意の要約】

1 事前協議−討議記録(秘)
交換公文の形になった事前協議をより正確に定義する秘密の解釈である。その趣旨は、米国が事前協議の義務を負う「配置」とは、核兵器と大型ミサイルの日本への持ちこみに限定する。また、同じく事前協議の義務を負う「行動」とは、日本から日本外に対して行われる戦闘作戦行動に限定する。

2 事前協議−安全保障協議委員会議事録(極秘)
この秘密の取り決めにより、日本は米国に対して、朝鮮半島で共産主義勢力が再び攻撃をしかけた際には米軍が在日米軍基地からただちに反撃することにあらかじめ同意を与える。

3 行政協定第26条に基づく共同合同委員会の合意−議事録(取り扱い注意)(略)

4 米軍基地の権利と請求権の放棄−義事録(取り扱い注意)(略)

5 相互防衛援助協定(非機密)(略)

【日米安保条約・討議記録(秘)】(東京、1959年)

1 条約第6条の実施に関する交換公文草案のための参照として、以下のとおり実施する。
 「米軍の日本への配置における重要な変更、装備における重要な変更並びに日本から行われる戦闘作戦行動(前記の条約第5条の規定に基づいて行われるものを除く)のための基地として日本国内の施設および区域の使用は、日本政府との事前協議の主題とする」

2 同公文は検討され理解されたものとして以下の諸点を作成した。
 a 「装備における重要な変更」とは、中・長距離ミサイルならびにそれらの基地を含めて核兵器の日本への持ちこみを意味すると理解されるが、例えば、核兵器を積まない短距離ミサイルを含む核以外の兵器の持ち込みはそれに該当しない。
 b 「戦闘作戦行動」とは、「日本から日本以外の地域に行われる戦闘作戦行動を意味する。
 c 「事前協議」は、重要な配置の変更を除き、米軍の日本への配置、ならびに装備における変更、また米軍機の日本飛来、米海軍艦艇の日本領海ならびに港湾への進入に関する現行の手続きに影響を与えるものと解釈されない。
 d 交換公文において、米軍の部隊ならびに装備の日本からの移動に際して「事前協議」を必要とするとは解釈されない。

【事前協議の解説】(米外交文書)

1 日本との協議が必要な項目(秘)
 A 日本から日本国外の地域に行われる戦闘作戦行動
 B 日本への核兵器の持ちこみ
 C 日本への中・長距離ミサイルの持ちこみ
 D 日本における中・長距離ミサイルを含む核兵器基地の建設
 E 米軍の日本への配置における重要な変更
2 事前協議に関する大統領の保証(非機密)
 (1960年1月19日のアイゼンハワー米大統領と岸信介首相との共同コミュニケから抜粋)
 「大統領は首相に対し、日米安保条約の下における事前協議にかかる事項については米国政府は日本国政府の意思に反して行動する意図のないことを保証した」
3 日本との協議が必要とされない項目
 A 兵たん・補給のための日本国内の基地の使用(非機密)
 B 日本から米国または極東の他の地域への米軍及び装備の移動(非機密)
 C 米国の艦船及び航空機の日本国内の港、基地への立ち寄り。装備の内容は問わない(秘)
 D 核以外の兵器の日本への持ちこみ。核弾頭を積まない短距離ミサイルも含む(秘)
4 すでに終了した事前協議の取り決め(極秘)
 新安保条約が効力を発した後に行われる最初の日米安保協議委員会で、藤山外相は日本政府の見解として次のように述べる。「在韓国連軍に対する攻撃によって生起する緊急事態において、国連統一司令部の下で在日米軍が戦闘作戦行動を緊急にとる必要がある際には、在韓国連軍が休戦協定に違反する武力攻撃を撃退できるように、例外的な対応として日本の米軍基地を利用してもよい」

「集団的自衛権」政策転換求める 米のアジア専門家ら
米国のアーミテージ元国防次官補ら超党派のアジア専門家のグループが11日、来年の新政権発足に向け対日政策の指針となる報告書を発表した。日本重視の姿勢を明確に打ち出す一方、日本政府が集団的自衛権の行使は現行憲法下では許されないとの立場を取っていることは「同盟協力の制約になっている」と指摘、政策転換を求めている。沖縄に駐留する海兵隊の訓練をアジア太平洋全域に分散することで、地元の負担をさらに軽減する考えも示している。
このグループにはアーミテージ氏やウォルフォビッツ元国務次官補ら共和党系の元政府高官に加え、クリントン政権で日米安保「再定義」を手がけたナイ元国防次官補、キャンベル同代理ら民主党系の専門家も参加している。提言は大統領選の結果にかかわらず、次期政権の政策に大きな影響を与えると見られている。
報告書はまず朝鮮半島や台湾海峡の情勢が不安定であることを指摘し、日米安保関係は「これまで以上に重要性を増している」とし、強化の必要性を強調した。
両国の同盟関係は単に「負担の分かち合い」にとどまらず「力を共有する時が来た」とし、集団的自衛権の行使のほか、有事法制の制定、国連平和維持軍(PKF)本隊業務への参加凍結の解除、情報面での協力の強化などを提唱している。
沖縄については、日米特別行動委員会(SACO)合意が目指す基地の「再編」「統合」「削減」に加え、海兵隊の施設や訓練を「アジア太平洋地域に分散する」という新たな目標も模索すべきだとの考えを打ち出している。この日、会見したアーミテージ氏は、最終的には駐留軍の規模削減につながると見ていることも明らかにした。
経済面では構造改革に向けた一層の努力を求めているほか、短期的には財政・金融面での景気刺激策が必要だとしている。(朝日新聞 2000/10/12)

自衛隊核装備の選択肢検討 60年代の国務省文書明記
中国の核兵器開発などを背景に日米防衛協力が進んだ1960年代前半、米軍主導で自衛隊を核装備する選択肢が米国務省の一部で検討されたことを示す米公文書が29日までに、メリーランド州の国立公文書館で見つかった。
北大西洋条約機構(NATO)並みの核の共同管理方式で、自衛隊を核武装する考えがあった事実を明らかにしている。当時のケネディ政権首脳は「自衛隊の核武装が上層部で協議されたことはない」としているが、米軍内にもそうした動きがあったと指摘する関係者の証言もあり、核搭載艦船の日本寄港を軸とした「核の傘」の成立過程を検証する上で興味深い。
文書は62年12月3日付で国務省極東局で作成された部内協議用の秘密メモ「共産中国の核爆発」。
メモは中国の核開発を受けた日本の防衛力強化を論じる中で「NATOタイプの安全管理対策下で核兵器を装備した日本の軍事力強化」が「究極の目的」だと明記。同盟国に配備された核兵器の使用に対し米国が“最後の決定権”を握る方式で、自衛隊を核装備する考えを示している。
メモは半面、核を拒絶する日本国内世論の動向を踏まえ、日本が自ら「領土内や自軍(自衛隊)に核兵器を導入しようとする傾向はほとんどない」と分析。日本独自の核開発の可能性を回避しながら、中国の脅威をてこに日本の再軍備を促進させ、日本が「対中均衡勢力」となることが「米国の利益」にかなうとしている。
メモを起草した元極東局スタッフのスウェイン氏(80)は「詳細は忘れた」としながらも、日本への核持ち込みを検討していた軍部の意向でメモが作成された可能性が高いと指摘。他の複数の極東局元幹部も「一部軍関係者が日本の核装備を考えていた」と証言した。
これに対し、当時の国防長官マクナマラ氏は「政権の高いレベルで協議されたことはない。中国や旧ソ連の反応を考えると危険だったからだ」としている。(太田昌克共同記者)(共同通信 2000/11/29)

NATO方式の核共同管理 日本は極東の「要石」
自衛隊の「核武装化」が国務省の一部で検討されたことを伝える秘密メモは、中国の核開発という極東での新たな危機に直面した米国が、日本を対中冷戦政策の「要(かなめ)石」と位置付け、北大西洋条約機構(NATO)レベルの同盟体制構築をも視野に入れていた事実を伝えている。
米国は1950年代から、英国、西ドイツなどNATO諸国と同盟国軍への核兵器導入の協議を重ね、核弾頭の最終的な管理は自らの手中に残したまま、核爆弾や中距離ミサイルなどを各国領土内へ配備。60年代に入ると、海上配備の核戦力の共有化についても同盟内で検討が進んだ。
こうした背景には、旧ソ連から中国への核技術流出や東欧への「核拡散」の懸念があり、59年には国務省が「選ばれた同盟国の核能力を高めなくてはならない」(国家安全保障会議への同年7月6日付国務省メモ)との見解を示している。
この時点で「選ばれた同盟国」に日本が含まれていた可能性は極めて低いが、今回見つかった秘密メモから、核武装を目指す中国の動きを受け、60年代に入り、日本に対してもNATO並みの検討を加えようという動きがあった事実が読み取れる。(共同通信 2000/11/29)

NMD推進、日本の核武装化もたらす=米上院議員が警告
【ワシントン6日時事】米上院外交委員会のバイデン議員(民主、デラウェア州)は6日、記者会見し、「ブッシュ政権が全米ミサイル防衛(NMD)構想を推進するなら、将来は日本の核武装につながる」と指摘。日本の核武装化の可能性にも言及して、同構想に強く反対する考えを示した。
バイデン議員は「ブッシュ大統領が欧州諸国の反対を押し切ってNMD構想を進めることは可能だが、その代償は非常に大きい。特に中国が対抗して核兵器を増強することは間違いない」と語った。その上で、「こうした状況は日本や朝鮮半島の核武装を招くことになる」と述べ、NMD構想の推進は日本や朝鮮半島の核武装に発展すると警告した。(時事通信社 2001/02/07)

集団的自衛権行使に道 小泉首相
小泉純一郎首相は27日午後、就任後初めての記者会見に臨み、内政、外交、安全保障についての見解を明らかにした。このうち、政府が「憲法上できない」としてきた集団的自衛権の行使については米軍と自衛隊が公海上で共同訓練を実施している際に米軍が他国の軍隊に攻撃を受けた場合を例示、「(自衛隊が)何もしないということができるか」と述べ、日米同盟関係の実効性を高めるためにも行使を認めるべきだとの考えを示した。
首相は集団的自衛権の行使について「本来、憲法を改正した方が望ましい」としながらも、「今の政治課題にのせるのはなかなか難しい」と指摘。そのうえで、「あらゆる事態について検討していく必要がある」と述べた。

<集団的自衛権> 国と密接な関係にある国に対する武力攻撃に対して、自国が直接攻撃されていないのに実力をもって阻止する権利。国際法上すべての国に認められており、国連憲章も主権国は個別的自衛権と集団的自衛権をもつことを認めている。しかし、日本政府は昭和56年の答弁書で「わが国でも国際法上、集団的自衛権を有していることは当然だが、憲法9条で許容する自衛権の行使は、わが国を防衛する必要最小限の範囲にとどめるべきだと考えられており、他国に加えられた武力攻撃を阻止する集団的自衛権を行使することは憲法上許されない」との憲法解釈を示し、その後、変更されていない。(産経新聞 2001/04/28)

日本が米安保戦略の中心に 在日米軍司令官が言明
【ワシントン9日共同】ヘスター在日米軍司令官は9日までにロイター通信と行ったインタビューで、米国が安全保障政策の重点を欧州からアジア・太平洋地域に移す結果、地理的に日本が米国の安保戦略の中心になるとの見解を表明した。
この発言は日米同盟重視を公言しているブッシュ米政権の意向を反映したもので、安全保障の分野で米国が今後、日本に対し一層の責任分担を求めることは確実とみられる。
司令官は、米安保戦略見直しの結果「日本がアジア・太平洋地域の安保機構の中心になる。日本は(アジア安保戦略上)地理的に理想的な位置にある」と述べた。
ラムズフェルド米国防長官は、ペルシャ湾と朝鮮半島での2つの大規模紛争に同時対処する「2正面戦略」を事実上放棄、今後は中国の急速な軍事力の近代化をにらみ、安保政策の重点をアジア・太平洋地域に置くべきだとの報告を今週中にブッシュ大統領に進言する方針を決めている。フライシャー大統領報道官らによると、大統領はこの進言に沿ったかたちで米政府の新安保政策を近く正式表明する予定。
ヘスター司令官はまた、米原潜と愛媛県の実習船の衝突事故で日本国民の反基地感情が高まったという事実は「確かにある」と指摘。さらに沖縄県などでの米軍基地撤退要求について「地域を代表する地元政治家がそう主張するのは当然だ」としながらも「(米軍駐留の是非は)日本政府と米国政府の間の問題だ。われわれは日本のよき隣人でありたい」と述べ、米軍駐留は必要と主張した。(共同通信 2001/05/09)

集団的自衛権行使、国会決議で可能・自民検討
自民党は13日、憲法論議の焦点である集団的自衛権の行使について、憲法改正を伴わなくても国会決議によって容認できるよう具体策の検討に入る方針を固めた。党幹部の1人は「憲法改正までの暫定的措置」と位置付けており、新法によって行使の範囲を制限する案なども浮上している。小泉純一郎総裁(首相)の直属機関「国家戦略本部」で近く検討を開始する考えで、野党の対応も絡み、論議を呼びそうだ。
自民党内では集団的自衛権行使を認めるため政府の憲法解釈の変更や憲法改正を求める声が根強いが、連立与党の公明党は反対姿勢を強めており、代替措置の意味合いから国会決議導入が浮上した。首相も国会答弁などで集団的自衛権に関する多角的な議論を歓迎する意向を明確にしている。
自民党の山崎拓幹事長は同日のNHK番組で「改憲には時間がかかる。立法府が国会決議を行って認めるなら一つの考え方だ」と表明。保守党の野田毅幹事長も「基本的に結構だ」と賛意を示し、野党側でも自由党の藤井裕久幹事長が「国会で決議すればそれでいいと思う」と述べた。(日本経済新聞 2001/05/14)

首相『報復なら支持』
政府は12日、米中枢同時テロ事件で、今後、米国が犯行グループに報復行動を取った場合、「支持」する方針を決めた。小泉純一郎首相は同日夜、首相官邸で記者団に「黙って見過ごすわけにはいかない。犯人を捜し出し、この重大な犯罪行為に対して断固たる処置を取ることはブッシュ米大統領にとって当然のことだ」と述べ、米国が報復すれば支持する考えを明言した。
米国が報復行動を取っても「国際社会の強い支持が見込める」(外務省幹部)だけでなく、米国支持が日米同盟関係の強化に役立つと判断した。また、10月に行われる予定のブッシュ米大統領の訪日を成功させたいとの思惑も込められているものとみられる。(東京新聞 2001/09/13)

危険伴っても自衛隊派遣 首相「戦闘状態」も想定 テロ報復支援
【ワシントン24日豊田洋一】訪米中の小泉純一郎首相は24日夜(日本時間25日朝)、ワシントン市内のホテルで同行記者団と懇談し、米中枢同時テロに対する報復攻撃を行う米軍などへの後方支援について、「『自衛隊を危険なところに出しちゃいかん』では話にならない。武力行使はしないが、危険を伴っても自衛隊に活動してもらうということに、国民の理解を得ていくことが大事だ」と述べ、自衛隊による後方支援が戦闘に巻き込まれることも想定していることを明らかにした。
首相は、危険を伴う後方支援について、具体的に医療、難民支援、情報収集活動を挙げた。
自衛隊が危険を伴う後方支援を担うことに伴い、武器使用要件の緩和については「常識的な対応が必要だと思う」と述べ、緩和が不可欠との考えを示した。
27日召集の臨時国会に提出する予定の「米軍等支援法案」(仮称)については「民主党と協力できる方が望ましい。(法案の)内容をよく話し合う必要があると思う。早く提出することも大事だが、早く成立することがより大事だ」と述べ、民主党の協力で早期成立を目指す考えを示した。
また、今回のテロ対応を機に、集団的自衛権の行使を禁じた政府の憲法解釈を見直す可能性については「それとは別だ。米国の個別的自衛権と国際協調と、その中で日本は何ができるか、何をすべきかということだ」と否定的な見解を示した。(中日新聞 2001/09/25)

自衛隊と米軍、共同機関設置へ 対テロ支援 役割、権限を協議
テロ対策支援法案に盛り込まれている米軍への協力支援活動で、防衛庁は27日、支援活動の実施前に日米の制服組同士による共同機関を設ける意向を明らかにした。連絡系統や補給作業手順などの共通基準や実施要領などを検討する。自衛隊が、軍事作戦を展開中の米軍と一緒に行動するのは初めてのケースで、活動現場における互いの役割や権限を明確にした運用システムを定める方針だ。
共同機関の規模やメンバーなど具体的な中身は米側との協議が必要だが、防衛庁の構想では、自衛隊側は統合幕僚会議と陸海空の代表者で構成する。個々の支援項目について、自衛隊の(1)規模や装備(2)活動期間(3)活動内容──などを米軍と調整し、具体的な運用方法を定める。現場での米軍の要請方法、自衛隊の拒否権を含む権限など、互いの役割と位置付けも明確にする方針。
自衛隊の協力支援には憲法上の制約があり、米軍の指揮に組み込まれての活動は集団的自衛権の行使にあたり認められない。だが現状では、米軍と一緒に行動する現場で一体化との線引きをどのようにするか不透明なほか、攻撃された場合などの緊急時に主体性を維持できるのか疑問の声もあり、事前調整でどのような取り決めがされるか注目される。
政府は法が成立後の11月1日、「日米安全保障高級事務レベル協議」(SSC)を東京で開き、自衛隊の協力項目を米側と詰める作業に入る。ただ実際に活動を始める前に、制服レベルの共同機関を設け共通の運用基準を定める必要があると判断している。(毎日新聞 2001/10/28)

三菱電など4社、イージス艦防空システム生産に参加
三菱電機や三菱重工業など日本の防衛関連メーカー4社は、イージス護衛艦に搭載する高性能の防空システムの生産に初めて参加する。制御ソフトやミサイル発射装置など米軍が開発したイージスシステムと呼ばれる基幹部分の3割相当を国産化する方針。米政府から一括購入してきたが、日米防衛協力が緊密化する中で、メーカーと関係当局が高度な防衛技術の共有化を一段と進める。
生産に参加するのは、海上自衛隊が2002年度に調達、2007年度に配備予定のイージス艦に搭載する設備。日本側4社はシステムの主契約者である米ロッキード・マーチンとライセンス契約を結んで一部を国産化する方向で詳細を詰めている。三菱電機は米側のシステムと国産の武器など日本側固有のシステムを連携させるソフトを構築。三菱重工業はミサイルを連続発射できる垂直発射装置、沖電気工業とNEC系の日本アビオニクスが汎用技術を使ったコンピューターとソフトを担当する。(日本経済新聞 2001/11/02)

米軍事行動、他国に拡大時 テロ特措法で支援…外相見解
田中外相は27日の衆院安全保障委員会で、米軍がフィリピンのイスラム武装勢力などアフガニスタンのタリバン以外に攻撃対象を拡大した場合の日本政府の対応について、「今回のテロに関係していれば、テロ特措法を使うのは言うまでもない」と述べ、米軍などに対する後方支援は可能との見解を示した。民主党の首藤信彦氏の質問に答えた。
米国の対テロ軍事作戦をめぐっては、ブッシュ米大統領が26日の記者会見でイラク攻撃を示唆したほか、米主要メディアはフィリピンやソマリアの関係組織を攻撃する可能性を指摘している。(読売新聞 2001/11/28)

有事法制 対テロも想定 政府検討 法案、来年にも提出
他国から武力攻撃を受けた場合に備えた有事法制で、政府はNBC(核・生物・化学兵器)テロなどを想定した対テロ戦にも対象を広げる方向で検討に入った。これまで国による直接的な侵略に対応する研究が続けられてきたが、米国の同時多発テロを踏まえ、「緊急事態」法制の側面を強めることにした。与党内で合意が得られれば来年の通常国会にも法案を提出する。(朝日新聞 2001/12/07)

PKO協力法:改正案が成立 武器使用緩和
国連平和維持軍(PKF)本体業務への参加凍結解除と派遣隊員の武器使用基準の緩和を柱とする改正国連平和維持活動(PKO)協力法が、7日午前の参院本会議で自民、公明、保守の与党3党と民主党などの賛成多数で可決・成立した。
採決では、賛成を党議決定した民主党の岡崎トミ子、円より子両氏が棄権した。
PKF本体業務とは、停戦監視や放棄武器の収集など、より武力行使の可能性が高くなる任務で、法成立以来凍結されてきた。今回解除されることで、例えばアフガニスタンでの地雷処理任務に携わることが可能になる。武器使用基準は、現行の「自分や一緒にいる隊員」だけではなく「自己の管理の下に入った者」を加え、他国の要員や非政府組織(NGO)要員も守ることができるようになる。(毎日新聞 2001/12/07)

テロ後3カ月 小泉首相、テロ根絶に闘う米国を支持
小泉純一郎首相は11日、米国で同時多発テロが発生してから3カ月がたったことを受け、「我が国は今後とも、国際的なテロの防止と根絶に向け断固として闘う米国を支持し、国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与していく」との談話を発表した。アフガニスタンの和平と復興に向けた協力、周辺国への支援、避難民支援などに努力することも改めて表明した。(朝日新聞 2001/12/11)

PKO協力法の再改正に言及 防衛庁首脳
防衛庁首脳は21日、臨時国会で改正した国連平和維持活動(PKO)協力法を、来年の通常国会で再改正する方針を明らかにした。(1)他国部隊の活動を武器を使って守る「警護任務」を新たに付与する(2)そのため、自衛隊の武器使用条件をさらに拡大し、任務遂行のための武器使用を可能にする(3)「紛争当事者間の停戦合意」がなくても自衛隊を派遣できるようにする−−といった内容だ。
いずれもPKO参加5原則の見直しにつながるとして、政府・与党が臨時国会で改正を見送ったいきさつがある。同首脳は「今回の改正では、武器使用条件などで国際標準と開きがある。再改正が必要だ」と述べた。(朝日新聞 2001/12/23)

有事法制、まず基本法・政府方針
政府は日本が直接武力攻撃を受けた場合などに備えた有事法制に関する基本方針を固めた。21日召集の通常国会で有事法制の基本理念などを明記した「緊急事態基本法」(仮称)を制定、具体的な個別法の法制化は今秋の臨時国会以降とし、二段階で整備する。「人道援助法」と「米軍支援法」の新法を制定、戦争捕虜などの扱いや日本有事での米軍への協力内容を定める。
政府は内閣官房を中心に法案の条文化作業を加速させ、基本法については3月中の国会提出を目指す。ただ、国民の私権の制限につながるため、公明党や自民党の一部には慎重論もあり、法案提出までには曲折が予想される。有事法制の整備にあたっては(1)対象を日本が直接武力攻撃を受けて首相が自衛隊に「防衛出動」を命令した場合に限定せず、大規模テロや周辺有事への対応も含める(2)首相の権限を強化し、閣議決定を経なくても防衛出動を命令できるようにする──などを明確にする。(日本経済新聞 2002/01/06)

有事法制、民間人への罰則規定も 防衛庁まとめ
政府が今国会への法案提出を目指す有事法制について、現行法令の見直し検討の中で、民間人への罰則規定が盛り込まれていることがわかった。日本が攻撃されるなどの有事に、自衛隊の作戦行動をいかに円滑に進めるかを検討する作業で、物資の保管命令に従わない民間人に懲役を含む罰則を提示している。検討内容は、防衛庁と各省庁が協議してきたものをまとめた。首相官邸や防衛庁内にも罰則規定に慎重論があり、今後、議論を呼びそうだ。
政府が今国会への法案提出を目指す有事法制について、防衛庁や各省庁所管の現行法令をどう見直すかなどを検討した内容が明らかになった。法案化のもとになるもので、日本が攻撃されるなどの事態を想定し、自衛隊の作戦行動をいかに円滑に進めるかを検討している。自衛隊法で規定された命令に従わなかった民間人への罰則規定や陣地構築のためには保安林でも許可なく伐採を可能とすることなど、具体的に踏み込んだ内容だ。検討内容は、防衛庁と各省庁が協議してきたものを防衛庁がまとめた。今後、官邸での議論を経て法案化される見込みだ。
防衛庁による有事法制の研究は77年から始まり、84年までにその内容が公表されている。防衛庁所管法令に関する問題点を「第1分類」、他省庁所管分を「第2分類」、所管が明確でないものを「第3分類」とした。
今回の検討内容は1、2分類を整理する形で見直したもの。法案化に向けた前段の作業で、日本が攻撃され、自衛隊への「防衛出動」発令を想定し、自衛隊の活動を円滑にするための項目が100以上に及んでいる。
現行の自衛隊法では、防衛庁長官らの要請で、知事が必要な関係者に業務従事命令を出すことができる。今回の検討では、その対象に医師ら医療従事者のほか、土木技術者や空港港湾の運送従事者らを含んでいる。
また、同法の規定では、自衛隊の作戦行動に必要な食料や燃料などの物資を保管するよう業者に命令できる。検討内容には、従わなかった場合、災害救助法に準じて6カ月以下の懲役か30万円以下の罰金を科すようにしている。物資確保に実効性をもたせるための措置のようだ。
戦時には自衛官が弾薬など大量の火薬類を所持したり、輸送車に積み込んだりして民間フェリーに乗船することがあるが、現行では禁止されているため、適用を除外するとしている。
敵の上陸に備え、海岸に船舶から物資を荷揚げする際、海岸法で定められた管理者との協議を免除し、国立公園や保安林に陣地を構築するときは、環境相や知事の許可などを経ないで伐採できるようにするとしている。(朝日新聞 2002/03/14)

有事法制 米軍行動を円滑化
政府は19日、日本が武力攻撃を受けた場合に備える有事法制整備について、米軍の行動を円滑にするための新法案と、安全保障会議の機能を強化する安保会議設置法改正案を新たに今国会に提出する方針を固めた。すでに提出方針が決まっている武力攻撃への基本方針を定める包括法案、自衛隊の行動を円滑化する自衛隊法改正案と合わせ、関連4法案を4月上旬にも提出する。こうした方針を20日の与党緊急事態法制整備協議会に諮り、与党側と調整を進める。
米軍の行動については、日米安全保障条約で日本への武力攻撃の際、自衛隊と共同対処すると定められている。このため米軍にも自衛隊と同等の権限が必要だと判断。武力攻撃時の米軍の移動や陣地構築などで、国内法の規制を受けないようにする規定を創設する。
国防に関する重要事項を審議する安保会議の機能強化については、専門的な立場から同会議を補佐する組織を新設。この新組織の助言を受け、安保会議が首相に武力攻撃への対処方針を答申するシステムをつくる。
包括法案は、(1)武力攻撃に対する基本方針の閣議決定(2)首相を長とする対策本部の設置(3)首相の各省庁や地方自治体などに対する権限―などを規定。自衛隊法改正案では、防衛出動待機命令を受けた隊員の武器使用権限の整備や、同法による食糧や燃料などの保管命令に従わない場合の罰則規定の追加を検討している。(東京新聞 2002/03/20)

有事法案:武力攻撃事態への対処方針 国会承認求めず
政府は26日、有事法制の推進法案(包括法)が定める武力攻撃事態への対処基本方針について、国会承認を義務づけず、国会への報告にとどめることを決めた。政府による武力攻撃事態の認定を国会承認とする案も検討されたが、自衛隊の防衛出動には自衛隊法に基づく国会承認が必要なため、それ以上の国会の関与は必要ないと判断した。
これにより、他国から武力攻撃を受けるか、その恐れのある場合、(1)首相は武力攻撃事態の認定と対処基本方針案を安全保障会議に諮問する(2)安保会議の答申を受けて基本方針を閣議決定する(3)基本方針を国会に報告する(4)基本方針に基づいて対策本部を設置する──という有事対処の流れが固まった。
自衛隊の活動に伴う国会手続きについては、新たな法整備のたびに問題になってきた。国連平和維持活動(PKO)協力法では、国連平和維持軍(PKF)の本体業務については国会承認が必要とされ、日米防衛指針に基づく周辺事態法でも自衛隊の対応措置に関する国会承認が義務づけられた。昨年制定されたテロ対策支援法には事後承認を必要とする規定が盛り込まれている。(毎日新聞 2002/03/27)

日米共同で飛行実験 ミサイル防衛で米国防総省
【ワシントン6日共同】米国防総省が2005会計年度(04年10月−05年9月)に、ミサイル防衛構想に基づく日米初の迎撃ミサイル共同飛行実験を計画していることが6日、米国防総省の内部文書で明らかになった。実験は日米が共同研究している部品を搭載した迎撃ミサイルを使い、約2年間続く見込み。日本はこの成果を踏まえ「研究」から「開発」段階への協力移行を決断する見通しだ。共同実験の設定は、日米協力に対する米側の強い期待を浮き彫りにしたもので、配備を前提とした「開発」段階への日本参加の流れが強まってきたといえる。(共同通信 2002/04/06)

小沢党首、中国の軍事化牽制「日本は一朝で核保有」
自由党の小沢一郎党首は6日午後、福岡市内で講演し、軍事力増強を続ける中国を批判し「あまりいい気になると日本人はヒステリーを起こす。中国は核弾頭があると言っているけど、日本がその気になったら一朝にして何千発の核弾頭が保有できる。原発にプルトニウムは3000、4000発分もあるのではないか。そういうことになったら(中国に)軍事力でも負けない。そうなったらどうするんだ」と述べた。
小沢氏は、最近会った中国共産党関係者に伝えた言葉としてこの発言を紹介した。小沢氏は「願わくば中国が、日本と共生できる社会であることが望ましい」と述べ、中国の民主化促進と両国の連携強化を求めるのが真意だと強調した。だが、核武装の可能性まで持ち出し中国を牽制(けんせい)する姿勢は、内外で波紋を広げそうだ。

【小沢氏発言の要旨】
中国や北朝鮮がある北東アジアが世界で最も不安定だ。政治形態や経済のレベルも違う。中国は超大国の仲間入りしようと軍事力増強にいそしんでいる。米国に準じた軍事大国になりつつある。
日本人の中には核武装すべきだという少数意見があるが、そういう状況になったらどうするのか。この前、中国共産党の情報部の人が来たので「あまりいい気になると日本人はヒステリーを起こす。核兵器をつくるなんて簡単。一朝にして何千発の核弾頭を保有できる。日本はそういうことになれば軍事力だって負けない」と言ってやった。
中国共産党の一党支配は維持できない。市場経済が広がって、一方では独裁的権力を持っている。だから中国の問題は汚職、腐敗だ。早く民主化して日中の運命共同体的関係になることが、世界平和にとって大事だ。中国の混乱はアフガニスタン、ユーゴスラビアの比じゃない。世界的な大動乱になる。1日も早い民主化と日中の連携を望んでいる。 (産経新聞 2002/04/07)

日本の再処理政策を批判 米反核団体が小沢発言で
【ワシントン9日共同】自由党の小沢一郎党首が、原発からのプルトニウムによる核武装の可能性に言及したことに対し、米国などの反核団体は9日、「日本のプルトニウム利用政策は核不拡散上問題だ、との指摘が実証された」などとする声明を発表した。
米国の市民団体、核管理研究所のエドウィン・ライマン代表は同日「日本国内の原発のプルトニウムから大量の核弾頭が簡単にできるとした小沢氏の発言は、技術的に正しい」と、使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出す日本の原子力政策を指摘した。
国際環境団体グリーンピースも、海外からの返還分も含めると日本は2006年から10年ごろまでの間に、4万5000キログラム以上のプルトニウムを保有、青森県六ケ所村の再処理工場が稼働すればこの量はさらに多くなると批判。「プルトニウムを備蓄してきた日本の潜在的な核武装の姿が、小沢発言によって明らかになった」と指摘した。(共同通信 2002/04/09)

小沢発言は「政治的に危険」=核問題シンクタンクが声明−米
【ワシントン9日時事】核問題を専門とする米シンクタンク、核管理研究所は9日、自由党の小沢一郎党首が「日本の核武装は簡単」などと発言したことについて「技術的には正確だが、政治的には危険である」との声明を発表した。(時事通信 2002/04/09)

ref. JAPAN, NUCLEAR WEAPONS, AND REACTOR-GRADE PLUTONIUM
(NCI 2002/03/27)

ref. JAPAN CAN CONSTRUCT NUCLEAR BOMBS USING ITS POWER PLANT PLUTONIUM
(NCI 2002/04/09)

有事法制:攻撃を受けた場合「国民の協力」規定盛り込む 政府
政府は11日、有事法制の柱として今国会に提出を予定している武力攻撃事態法案に、日本が武力攻撃を受けた場合に、国民が国や地方自治体への協力に努めるとの「努力規定」を新たに盛り込むことを決めた。同日の自民党国防部会などの合同会議に法案要綱の修正案を提示し、了承された。
これにより同法案には、自衛隊の武力行使に伴い国や地方自治体が実施する措置に対し「国民は必要な協力をするよう努めるものとする」と明記されることになった。
「国民の協力」は、自民党や保守党が義務として盛り込むよう政府に要請していた。しかし、公明党が慎重なため、非協力の場合の罰則規定は設けず、訓示規定にとどめられた。
国民が協力行為に伴って受ける損失に対しては「必要な財政上の措置を併せて講じる」との規定が加えられた。(毎日新聞 2002/04/11)

武力攻撃事態法案
(国民の協力)第八条 国民は、国及び国民の安全を確保することの重要性にかんがみ、指定行政機関、地方公共団体または指定公共団体が対処措置を実施する際は、必要な協力をするよう努めるものとする。

迎撃ミサイルに核搭載 国防長官、開発に前向き
【ワシントン11日=杉本宏】11日付のワシントン・ポスト紙は、ブッシュ政権のミサイル防衛(MD)の一環としてラムズフェルド国防長官が核弾頭搭載の迎撃ミサイル開発の検討に前向きな姿勢を示していると報じた。
国防長官の諮問機関「防衛科学委員会」のシュナイダー委員長が同紙に明らかにした。それによると、長官は核弾頭搭載の迎撃ミサイル構想の是非を委員会が検討することに「非常に興味を示した」という。
国防総省が現在、開発を進めているのは非核の迎撃体による衝突で目標ミサイルを破壊するシステム。だが、敵のおとりミサイルなどと標的を識別して命中させるのは技術的に極めて難しいといわれている。核弾頭による迎撃は、命中しなくても、周囲で核爆発を起こせば、おとりも含めてすべて破壊できるとされる。(朝日新聞 2002/04/12)

有事法制で沖縄戦引用/石破氏が持論
「安全な場所」避難すれば悲劇なかった
「(沖縄戦で)米軍が上陸してきた時、民間人は軍とは別の安全な場所に避難すれば、悲劇は起きなくてすんだのではないか」―。16日の衆院有事法制特別委員会で、石破茂氏(自民)が「ものの本を読むと」と断った上で、持論を語った。だが、野党の県選出議員は「沖縄戦の実情を全く理解していない」と反発している。
発言の趣旨は、有事の際に民間人を守るため、民間防衛のための法整備が不可欠―というものだが、沖縄戦については「沖縄の先生方に教えていただきたい。自分の考え方が間違っていたら、おしかりをいただきたいと思う」と述べ、今後論議する姿勢を示した。
発言を聞いた赤嶺政賢氏(共産)は「安全な場所にいた住民を追い出したのは日本軍だ」とまず指摘した上、「住民避難のための有事法制をつくる口実に、沖縄戦を持ち出すのは許せない」と怒り心頭。
東門美津子氏(社民)も「石破氏は沖縄戦の実態を知らないのでは」と不快感をあらわにし「民間人が壕(ごう)から追い出され食糧を奪われ、戦争に協力させられたのが沖縄戦だ」とカンカンだ。(沖縄タイムス 2002/05/17)

核使用発言:「従来の政府解釈を紹介」 安倍官房副長官が釈明
安倍晋三官房副長官が講演で「核兵器の使用は憲法上問題ない」と発言したとされる問題が21日の参院外交防衛委員会で取り上げられ、安倍氏は「核兵器の保有は憲法上禁止されていないとする従来の政府解釈を紹介したものだ」と釈明した。また「政府としては唯一の被爆国という立場から非核3原則を堅持しており、保有することはできない」と述べた。社民党・護憲連合の大田昌秀氏の質問に答えた。
安倍氏の核使用発言は、13日に行われた早稲田大での講演内容として、21日発売の週刊誌「サンデー毎日」が報じた。(毎日新聞 2002/05/21)

非核3原則見直しも 核保有も可能と福田長官
政府首脳は31日夕、歴代内閣が堅持してきた非核3原則について「憲法のようなものだ。しかし(最近の世論は)憲法も改正しようというぐらいになっているから、非核3原則も変えようとなるかもしれない」と記者団に述べ、将来、非核3原則を見直す可能性もあるとの考えを示した。
これに関連して福田康夫官房長官は午後の記者会見で、原子爆弾などの核兵器保有について「私個人の理屈から言えば持てるだろう」と述べ、理論的には保有できるとの認識を示した。安倍晋三官房副長官も5月13日の非公開の講演で、小型であれば原子爆弾の保有も問題ない、と発言している。
核容認と受け止められる発言を政府高官が相次いで行ったことは、野党などの反発を呼び、有事関連法案の審議に影響するのは確実。また政権中枢の発言だけに、中国など周辺国の反響を呼びそうだ。(共同通信 2002/05/31)

平和主義衰退し核保有発言 NYタイムズが1面で紹介
【ニューヨーク8日共同】9日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(早版)は福田康夫官房長官の非核3原則見直し発言など日本の政治家による最近の核兵器保有に関する発言を紹介する記事を1面に掲載した。
こうした発言について記事は「中国の台頭や米国による効果的な安全保障への懸念から、有力政治家の一部が半世紀の政策を破って核兵器の保有を検討し始めた」と位置付けている。
東京発の記事で同紙は日本の非核3原則が生まれた経緯などを説明した上で福田官房長官や安倍晋三官房副長官の核保有に関する発言のほか、自由党の小沢一郎党首が中国の軍事的な脅威を念頭に「日本の核武装を事実上、予言してみせた」などと紹介。
さらに東京都の石原慎太郎知事が福田長官の発言に「激励の電話をかけた」と伝え、一連の発言は「日本の平和主義が少なくとも政界では衰退しつつある中で行われた」と分析した。
同紙はまた、国際情勢の変化から日本が非核3原則を貫くことが難しいとする専門家のコメントも掲載したが、米政府当局者は同紙の取材に「日本の政策に変化はない。日米の同盟関係はかつてなく強まっている」と語ったという。(共同通信 2002/06/09)

専門家ら「選択肢として無理」 核武装の可能性、政府は過去に研究
非核3原則見直しをめぐる福田官房長官の発言は、日本の核武装に対する周辺諸国の懸念を呼び起こした。政府は部内で秘密の研究を繰り返し、米国の核の傘の信頼性が崩れない限り、核武装の選択はありえないことを確認している。その研究に携わった専門家たちは「今もそれは変わらない」(蝋山道雄・上智大名誉教授)と強調する。政治家の安全保障戦略に対する、見識と姿勢が問われていると言えそうだ。

◇2度の否定

これまで政府は分かっているだけで2回、核武装の可能性を探る研究を行っている。
1回目は67年から70年にかけて行われた「日本の核政策に関する基礎研究」。内閣情報調査室が、蝋山氏を含む国際政治学者や科学者に委託した。
研究会の発足は佐藤内閣で非核3原則を打ち出す直前。核不拡散条約(NPT)調印を控え、核政策が課題になっていた。
報告書は中国からの核の脅威を想定してまとめられた。技術的には「プルトニウム原爆を少数製造することは、比較的容易」としながら、もし踏み切れば「中国に一層の警戒心を抱かしめるばかりでなく、ソ連や米国の猜疑(さいぎ)心も高める」とし「日本の外交的孤立化は必然」と分析。「核兵器を持つことはできない」と結論づけた。
2回目は村山政権下の95年。防衛庁内で冷戦終結という新たな戦略環境を踏まえ、部内の専門家に研究させた。関係者によると、ソ連崩壊によって東西間の核の「均衡と抑止」が崩れ、米国の抑止力が機能しない可能性が出てきたとの認識に立ちながらも、やはり「日本が核武装する必要は認められない」という結論に至ったという。

◇同時テロ後

昨年9月に米国で起きた同時多発テロは、米国の圧倒的な通常戦力と核戦力をもってしても、抑止できない大量破壊の脅威があることを、世界に見せつけた。
これを受けて米国は、軍事戦略の大幅な見直しを進めている。自殺攻撃をしかけて来るような抑止の効かない敵には、先制攻撃も辞さない姿勢を示す一方、核兵器使用の敷居を下げることも検討中と伝えられている。
米政府は明言はしていないものの、日本を含む同盟国が、米国の核の傘に疑念を持たないようにする狙いもあると見られる。

◇続く米依存

冷戦期から一貫して、日本が核武装に走る必然性があるのは、米国が日本を見捨てるなど、核の傘の信頼性が著しく傷ついた場合に限られるというのが、専門家に共通した見方だ。
ポスト「同時多発テロ」の新たな戦略環境の下でも、日本が核武装する選択肢は現実的にはないとの見方が支配的だ。防衛庁の研究に参加した専門家の1人は「日本の核兵器は中国かロシアの先制使用を抑止するため。米国の核の傘が効かない場合には、仕方なく自分でやるということになるが、米国を超える抑止力は持てない」と語る。
しかも、実際に日本が核の脅威にさらされると想定されるのは、台湾海峡危機が起こり、中国が日本の米軍支援を阻止しようとする場合ぐらいだという。日本が核武装を完了するほど長期にわたるとは考えられず、「核武装を合理化するものとはならない」というのが専門家たちの見方だ。(朝日新聞 2002/06/17)

米中央軍に自衛隊員派遣 対イラク攻撃に備え
【ワシントン24日共同】アフガニスタンでのテロ掃討軍事作戦を統括し、対イラク攻撃計画を策定している米中央軍司令部(フロリダ州タンパ)に日本政府が、自衛隊員を連絡調整官として派遣する計画を進めていることが分かった。日米両政府筋が24日、明らかにした。
同司令部は、イラク攻撃を開始した場合は作戦を指揮する。日本政府筋は「米軍の動きをいち早く把握し、的確な政策判断を下すには自衛隊員の派遣が不可欠」と指摘しているが、米軍の軍事行動に引き込まれかねないとの慎重論も出そうだ。
両政府筋によると、日本の安全保障専門議員団(団長・額賀福志郎元防衛庁長官)が今春に訪米し同司令部を視察した際、デロング副司令官が同盟国の協調を示す狙いから自衛隊員の派遣を要請したという。
日本側も「日本の存在を示すとともに、対イラク攻撃の動向を把握する上で連絡調整官の配置は有効」(外務省筋)と判断。外務省と防衛庁は派遣の方針を固め、首相官邸と最終調整に入る。
派遣を予定しているのは、一等海佐と二等空佐の計2人で「出張」扱いで中央軍司令部に常駐させる。ラムズフェルド国防長官が22日の会見で明らかにしたところでは、同司令部には現在35カ国の連絡調整官が常駐している。
日本は米軍によるアフガンでの攻撃開始後、自衛隊艦艇による洋上給油についてバーレーンの米海軍第五艦隊司令部と調整するため、在バーレーン日本大使館に一等海佐と三等海佐の2人を派遣。
また、ハワイの米太平洋軍、太平洋艦隊、太平洋空軍の三司令部に米中枢同時テロ前から常駐している自衛隊員3人のほかに同時テロ後に1人を追加、計4人がグアム島と在日米軍基地間の輸送業務を調整している。(共同通信 2002/07/24)

有事に国民の思想・良心・信仰の自由に制約も 官房長官
福田康夫官房長官は24日、衆院有事法制特別委員会の質疑で、武力攻撃事態での国民の権利制限についての政府見解を示した。このなかで「思想、良心、信仰の自由が制約を受けることはあり得る」として、思想や信仰を理由に自衛隊への協力を拒否することが認められないケースがあるとの考えを明らかにした。また、国民保護法制については、秋に予定される臨時国会に「主要な論点整理」を提示する考えを示した。
政府見解は、5月の前原誠司氏(民主)の要請にこたえた。
見解は、武力攻撃事態に対処するために国民の自由と権利に制限を加えることについて「国及び国民の安全を保つという高度の公共の福祉のため、合理的な範囲と判断される限りにおいては、その制限は(個人の尊重などを定めた)憲法13条等に反するものではない」と指摘。思想、良心、信仰の自由については「内心の自由という場面にとどまる限り絶対的な保障である」とする一方、「外部的な行為がなされた場合には、それらの行為もそれ自体としては自由であるものの、公共の福祉による制約を受けることはあり得る」と明言した。
制約がありうる「外部的な行為」の例として福田長官は、3法案のうち自衛隊法改正案が定める物資の保管命令に対し、命令を受けた人が思想や信仰を理由として自衛隊に協力しないケースをあげた。「作戦行動の中で、教会や神社、仏閣の撤収や除去は可能か」との前原氏の質問については、津野修内閣法制局長官が「根拠となる法律は必要だが、収用されることはありうる」と答えた。
福田長官はまた、国民保護法制のほか、米軍の行動の円滑化に関する法制、捕虜の取り扱いに関する法制についても「国会終了後、速やかに検討体制を整え、内容を深める作業に着手したい」と表明した。(朝日新聞 2002/07/24)

陸自隊員らに天然痘ワクチン=生物兵器対策で接種へ−防衛庁
防衛庁は10日、ウイルスや細菌を使用したテロ行為(バイオテロ)に対処するため、陸上自衛隊の隊員らを対象に天然痘ワクチンの予防接種を実施する方針を決めた。生物兵器に対する自衛隊の防護能力を強化すると同時に、テロ行為への抑止力を高めるのが狙い。バイオテロが起きた場合に感染の危険にさらされる化学防護隊員などから順次接種を進めていく考えだ。(時事通信 2002/08/10)

三菱電機、イージスシステム補修に参入
三菱電機は米ロッキード・マーチンなどと共同で、防衛庁のイージス護衛艦に搭載しているイージスシステムの保守事業を国内で始める。米政府が全面受託してきた事業だが、一部を2005年度から請け負う。防衛庁が秋にも主契約企業を決める5隻目のイージス艦では同システムの2―3割を初めて国産化する計画で、生産・保守の両面で国内化が進む。
イージス艦は高性能のレーダーを搭載し、10以上の目標を同時に迎撃でき、その中枢部分となるのがイージスシステム。米政府から購入して搭載しており、防衛庁は保守も全面的に米政府に委託してきた。このため有事の際などに米国側の手が日本まで回らない可能性もあった。(日本経済新聞 2002/08/26)

陸自に300人 対テロ部隊 防衛庁04年3月発足へ
防衛庁は侵入したゲリラや特殊部隊に対処する陸上自衛隊の「特殊作戦群(仮称)」を2004年3月、習志野駐屯地(千葉県船橋市)に新規編成することを決めた。部隊は300人、それ以外は「詳細は明らかにできない」としているが、「本当に役に立つのか」と疑問視する声が陸自内部からも出ている。
防衛庁は来年度の概算要求にゲリラや特殊部隊の侵入対処として193億円を計上した。その目玉が特殊作戦群で、既に本年度予算で対人狙撃銃や監視器材を購入し、発足準備を進めている。
陸自は部隊編成や装備品を明らかにしていないが、関係者によると、指揮官は1等陸佐で戦闘要員は数個部隊からなる約200人。配属後、全員が落下傘降下の空挺(くうてい)資格を取得する。
装備品はサイレンサー付き拳銃、閃光(せんこう)手りゅう弾、無線起爆装置などの特殊武器を導入。水中や上空から隠密裏に接近できるよう潜水器材や船外機付きボート、降下用ナビゲーターも購入する予定という。
出勤時の足として木更津駐屯地(千葉県木更津市)から差し向ける大型ヘリコプターを使用するが、問題はテロがどこで起きるか分からないことだ。陸自幹部は「着くころに相手は逃げてしまうだろう。一番近い駐屯地から出動させ、大人数で掃討した方が合理的」と指摘する。
例えばアフガニスタンで戦う米国の特殊部隊は、戦闘攻撃機が発射する誘導ミサイルの目標物を発見するのが主な任務で、ベトナム戦争のような肉薄戦は兵士の人命を尊重してまず行わない。
別の幹部は「特殊作戦群をどう使うのか、しっかり決めておかないと時代遅れの部隊になりかねない」という。さらに自衛隊には防衛出動、治安出動以外に武器を使用できる権限はなく、警察と比べ、出動の場面は限りなく少ない。
しかも警察には特殊訓練を積み重ねた「サット(特殊急襲部隊)」がある。「治安出動は事実上、警察のギブアップを意味する。相当な事態にならない限り、自衛隊の出番はないだろう」との見方も庁内にある。
特殊作戦群は1999年3月に起きた能登半島沖の不審船事件でゲリラ活動の実態に触れたことが新編のきっかけ。海上自衛隊は不審船に備え、既に3個部隊80人からなる「特別警備隊」を設立し、広島県江田島町での訓練を開始している。(中日新聞 2002/08/31)

防衛庁、アラビア海の米英軍支援哨戒ヘリに機関銃装備
防衛庁は23日までに、米英軍支援のためアラビア海に派遣している海上自衛隊の哨戒ヘリコプターに機関銃を常時装備することを決めた。イエメン沖のタンカー爆破事件など新たなテロが相次ぎ、米軍などによるイラク攻撃の可能性も浮上していることから、派遣部隊へのテロ対策を強化するのが狙いだ。テロ対策特別措置法では、対テロ掃討作戦を行っている米英海軍の艦艇に燃料補給を行うため、海自の補給艦2隻と護衛艦3隻の計5隻の派遣が認められている。艦隊交代時期の現在は補給艦1隻と、哨戒ヘリ計4機を搭載した護衛艦2隻がアラビア海に派遣されている。
しかし、哨戒ヘリには、昨年11月の派遣当初から、攻撃に対処できる装備がなかった。このため、9月に日本を出港した護衛艦2隻に、7.6ミリ機関銃を積んだヘリを搭載。さらに、哨戒ヘリへの機関銃の常時配備を決めた。25日に出港予定の護衛艦の哨戒ヘリにも搭載する。(読売新聞 2002/11/24)

日本の核武装の可能性論議 北の核が刺激と米専門家
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発などアジアでの核兵器拡散の懸念が強まる中、日本や韓国、台湾の核武装の可能性についての関心が米国の安全保障専門家やアジア専門家の間で高まっている。日本の核武装の可能性は極めて低いとの見方で専門家は一致するが、米国の防衛負担軽減のため、核保有を日本の判断に任せるべきだとの議論も出ている。
最近、ワシントンで開かれた北朝鮮に関するシンポジウムで、米シンクタンク、ケイトー研究所のカーペンター副所長(米安全保障政策)は、北朝鮮が核武装した場合は、米国は日本と韓国の核保有に反対せず、日韓両政府に判断を任せるべきだと指摘、他のパネリストと議論になった。
米軍の大規模な海外展開に批判的な姿勢で知られる同氏は、現状は米国が北朝鮮の核の脅威を一手に引き受けなくてはならない「最悪のケース」とし、北朝鮮が核武装するなら日韓両国が核を持つ方が抑止の観点から望ましいと述べた。
これに対し、ワシントン・ポスト紙の元外交専門記者オーバードーファー氏は「北東アジアの核武装を後押しするのは正気のさたではない」と厳しく批判。ウッドロー・ウィルソン・センターのハリソン上級研究員も「日本の核武装は地域にとどまらず、世界規模に拡散する恐れがある」と懸念を表明した。
カーネギー国際平和財団が最近開いたシンポジウムでも「アジアの新たな核(保有)国家」をテーマに議論。キャンベル国際戦略研究所副所長は、日本などの核保有の引き金になり得る要因として、(1)米国のアジア離れ(2)北朝鮮などならず者国家の台頭(3)日本と中国など地域的対立の激化―など10項目を指摘。特に日本については「経済などの悲観主義」が核保有に結び付く恐れがあるとした。
スチムソン・センターのベンジャミン・セルフ上級研究員は、日本の大量のプルトニウム保有は、核兵器開発の可能性を残す戦略的な判断に基づいていると説明。ただ、日本の核保有の可能性はほとんどなく、台湾が中国の通常戦力増強に対抗して核保有を検討する可能性を挙げた。
キャンベル氏は、こうした議論が展開されている背景について、インドやパキスタンの核保有などで「核のタブー」が弱まっていることを指摘。ただ、日韓などの核武装は「今すぐ心配する問題ではない」と述べ、重要なのは、米国が外交や米軍の国際展開を通じ、アジア諸国が核武装を検討しないで済む環境を維持することだと強調した。(ワシントン共同=渡辺陽介)

日本の核武装で対中抑止も

槌田敦・名城大教授(環境経済学)の話 兵器にも使用可能な高濃度プルトニウムが作り出せる高速増殖炉「もんじゅ」の建設を支援した米国は、既に日本の核武装を許していると言える。1987年には純粋なプルトニウムを素早く取り出す軍用の「遠心抽出機」を、国内の「核不拡散法」に違反してまで対日輸出した。そんなことも知らず議論するのは(米国の)専門家としてはうかつだ。北朝鮮が原爆を作れたとしてもせいぜい1、2発だが、もんじゅは長崎型原爆30発分の高濃度プルトニウムが1年でできる。極東の核問題は極東の国同士で解決させるというのが米国のやり方。米国は言うことを聞く日本に核武装させ、中国やインドなど保有国に対する抑止力として利用しようとしているのが実態だ。(共同通信 2002/12/15)

米は日本の核武装支持を 北朝鮮政策で対中圧力
【ワシントン3日共同】米紙ワシントン・ポストのコラムニスト、チャールズ・クラウトハマー氏は3日付の同紙コラムで、北朝鮮の核開発阻止に消極的な中国の態度を変えさせるためには、米政府は日本の核武装支持を表明すべきだと論評した。
「ジャパンカード」と題するコラムは、米国がこれから取ろうとしている北朝鮮孤立化策について、中国と韓国が乗り気でないことが成功に向けた大きな問題点と指摘した。特に中国については、北朝鮮に対しプルトニウム抽出に必要な化学物質を輸出したと伝えられるなど、米国の方針に従うつもりは全くないと批判。
一方、北朝鮮の核ミサイルの射程内にある日本は「いつまでも脅威にさらされることは望んでいない」と分析。「中国が北朝鮮を揺さぶるわれわれの行動に参加しないつもりなら、米国は日本の核武装を支持すると中国に率直に伝えるべきだ」と主張した。(共同通信 2003/01/03)

日韓核武装で北朝鮮に対抗 米シンクタンクが論文
【ワシントン7日共同】米有力シンクタンク、ケイトー研究所のテッド・カーペンター副所長(米安全保障政策)は6日、北朝鮮の核武装を阻止する対抗措置として、米国は日本と韓国が核武装することを容認すべきだとの論文を発表した。
日本の核武装を認めるべきだとの声は米国では極めて少数だが、北朝鮮の核開発問題を契機に東アジアの核問題への関心が高まっており、論文は核武装容認派の立場を示した見解といえる。
論文は北朝鮮の核開発を阻止する政策の選択肢として(1)米朝枠組み合意と同様、北朝鮮に物質的利益を供与(2)核施設を先制攻撃(3)経済制裁で圧力強化―の3つがあるが、いずれも実効性がないと説明。
その上で論文は北朝鮮が10年以内に米本土を核ミサイルで攻撃できる可能性を指摘し「アジアの同盟国のために米国の都市を攻撃の恐れにさらすのは危険すぎる」と強調。「理想的選択でない」としつつも、日韓の核武装の可能性を示すことで、北朝鮮に核開発を放棄させる必要性があると述べている。
特に世界第2の経済大国、日本が「自国の死活的な国益を損なう安全保障問題の解決を他国に委ねているのは哀れ」と指摘した。(共同通信 2003/01/07)

防衛庁、生物兵器テロで初訓練
炭疽菌、天然痘など細菌を用いた生物兵器が国内で使用されたとの想定で、防衛庁が対テロ図上訓練を実施していたことが25日までに分かった。内局、陸海空各自衛隊が参加する初の図上演習で、同庁は「特定の国を想定していない。あくまで研究レベル」と説明しているが、生物兵器の保有が指摘される北朝鮮の存在も意識した内容になっているという。(共同通信 2003/01/25)

派遣隊員に天然痘ワクチン テロ対策で初めて、防衛庁
防衛庁は29日までに、国連平和維持活動(PKO)協力法に基づく中東・ゴラン高原の国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)へ派遣している自衛隊員約50人に、天然痘ワクチンの接種を行った。防衛庁によると、生物兵器テロを想定したワクチンの接種は初めて。医官が日本から搬送したワクチンを使い、24日に自衛隊員の意思を確認した上で接種したという。米国やイスラエルでは生物兵器テロの恐れが高まっているとして、医療関係者や軍人に対する天然痘ワクチンの接種を進めている。(共同通信 2003/01/29)

日本が核武装推進と論評 民主朝鮮
【ソウル12日共同】ラヂオプレスによると、北朝鮮の政府などの機関紙、民主朝鮮は12日、日本の核燃料サイクル開発機構の東海再処理施設(茨城県東海村)で、プルトニウムが推定量より約200キロ少なかった問題に関し「日本は既に核武装を戦略目標と設定し、秘密裏に推し進めている」などとする論評を掲載した。論評は「国際原子力機関(IAEA)は日本に対する監視や規制を行わなかった責任がある」とし「IAEAが朝鮮半島と日本の核問題を扱う際、2重基準を適用する限り、現在の問題は決して解決しない」と訴えた。(共同通信 2003/02/12)

日本が核保有で再考も 米次官補が証言
【ワシントン共同】ケリー米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は13日、下院外交委員会の公聴会で北朝鮮情勢について証言し、北朝鮮の核開発問題は「極めて深刻な衝撃を日本に与えている」と分析した上で、「日本はあらゆる立場について再考を促されることになるだろう」と、将来的に核保有の是非を含めて判断を迫られるとの考えを示した。(共同通信 2003/02/14)

米上院議員:北朝鮮核問題で日本核武装論を展開 テレビで
【ワシントン佐藤千矢子】米共和党のジョン・マケイン上院議員は16日のFOXテレビで、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発問題に関連して「中国が危機解決に迅速に取り組まなければ、日本は核武装するしか選択肢がなくなる。日本には自国民の安全を守る義務がある」と述べ、朝鮮半島の危機が解消されない場合は日本は核武装せざるを得なくなるとの認識を表明した。同じ番組に出演したライス大統領補佐官は「日本が(核武装で)国益を見出している証拠はない」と否定的な見方を示した。
米国の有力シンクタンク、ケイトー研究所のカーペンター副所長が1月、北朝鮮の核開発を放棄させるために日韓両国の核武装を容認するべきだとの論文を発表したのをきっかけに、静かな論争になっていた。日本の核武装を論じること自体が、北朝鮮や中国へのけん制になる側面もあり、論争はしばらく続きそうだ。(毎日新聞 2003/02/17)

「日本も核ミサイルを」 拉致被害者「救う会」会長
「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)の佐藤勝巳会長は18日、東京都議会であった都民集会で、北朝鮮の核開発に対抗するためとして、「我が国が核ミサイルをもつこと」の必要性について発言した。
集会は「北朝鮮に拉致された日本人を救出する地方議員の会」主催。佐藤会長は拉致問題解決のための制裁を政府に求めたうえで、「向こうは制裁を宣戦布告とみなし、ミサイルを撃ち込むということに必ずなる。『日米安保条約を発動し対応する』と首相は答えるべきだ。戦争を恐れてはならない。長期的には我が国が核ミサイルを持つこと。要するに、核に対する防御には相互抑止力しかない」と述べた。
集会後、佐藤会長は発言について「問題提起のために言った。日本からこういう発言が出るのは北朝鮮の核開発のためであるという議論が、周辺諸国でも起こることを期待する」と語った。(朝日新聞 2003/02/18)

日米、ミサイル防衛構想の協力強化
【ワシントン=秋田浩之】石破茂防衛庁長官は17日朝、ラムズフェルド米国防長官とワシントン郊外の国防総省で約一時間会談し、日米が現在、共同技術研究を進めている弾道ミサイル防衛構想について「将来における開発・配備を視野に入れて検討を進めていく」と表明した。
ラムズフェルド長官は「ミサイル防衛は基本的に防衛的なものだ」と応じ、同構想は日本の専守防衛に合致するとの見解を強調した。ミサイル防衛での日米協力を巡って、米側は北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威を念頭に置いて、開発段階への移行に強い意欲を示しているが、日本はこれまで判断を留保していた。石破長官は会談後の記者会見で、開発・配備段階への移行を検討する意向を伝えたことについて「当然のことを言っただけだ。開発・配備に移行すると言ったわけではない」と説明。具体的な移行のスケジュールに関しては「全く決めていない。色々な情報をもとに判断していく」と述べ、費用対効果なども含めて精査する考えを示した。(日本経済新聞 2003/02/18)

04年度にも迎撃実験 弾道ミサイル防衛で日米
日米両国政府は17日までに、共同技術研究している弾道ミサイル防衛構想に関し、早ければ2004年度後半から迎撃実験に着手する方針を固めた。北朝鮮が弾道ミサイル開発を進めるなど朝鮮半島情勢が緊迫化する中、日本としても迎撃システムの配備を視野に共同研究を加速させたい考えだ。
迎撃実験は04年10月から06年9月までの間にハワイで2回実施。日本側の分担費用は十数億円程度とみられる。
弾道ミサイル防衛は、レーダーなどで弾道ミサイルを探知し、迎撃ミサイルで撃ち落とすシステム。北朝鮮が1998年に弾道ミサイル「テポドン」を発射したのをきっかけに、政府は99年度から、大気圏外を飛行中のミサイルをイージス艦装備のミサイルで迎え撃つ「海上配備型システム」について米国との共同技術研究を続けている。
政府は2003年度予算案に研究試作費として約19億円を計上しており、関連予算の総額は156億円に達する。ただ、日米共同研究中の迎撃ミサイルは「次世代」のミサイルと位置付けられ、開発・配備の見通しは立っていない。このため防衛庁は、米国が04年から初期配備を開始する別の迎撃システム導入の是非も検討している。(東京新聞 2003/02/18)

北朝鮮ミサイル発射、「自衛隊は災害派遣で出動」
石破茂防衛庁長官は3日午前、衆院予算委員会での外交問題に関する集中審議で、北朝鮮の弾道ミサイルが日本に向けて発射された場合の自衛隊の対応について「基本的には、いかにして被害を最小限にするかに限定せざるを得ず、たぶん災害派遣になる」と述べ、発射実験の場合には、自衛隊を防衛出動ではなく、災害派遣で出動させる考えを明らかにした。
小泉純一郎首相は北朝鮮情勢について「国際社会から孤立し、焦燥感があると思う。冷静、慎重に対応しながら関係国と緊密に連携し、北朝鮮に国際協調への転換を働き掛けていく」と強調。イラク問題への対応では「イラクが査察に全面的に協力すれば、戦争は起こらない。国際協調体制と日米同盟を両立させるように全力を尽くしていく」と表明した。川口順子外相はイラクへの首相特使派遣を決めた理由について「新しい決議案が出て、最後の外交努力を加える時だ。リスクはあるし、結果は必ずしも保証できないが、最後の翻意を促すことが大事だ」と指摘した。自民党の池田行彦、民主党の伊藤英成、首藤信彦各氏への答弁。(日本経済新聞 2003/03/03)

北朝鮮ミサイル:「日本に着弾した場合は防衛出動」 防衛庁
防衛庁首脳は6日、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合の対応について「弾頭に実弾が搭載されていて、日本の領土に着弾した場合は(自衛隊の)防衛出動になる」との見解を明らかにした。
北朝鮮の弾道ミサイルをめぐっては、石破茂防衛庁長官が3日の衆院予算委員会で、着弾時の初動は自衛隊の災害派遣で対応する考えを明らかにしている。首脳の発言は、実弾が搭載されていれば、北朝鮮が日本を攻撃する意図は明白で、防衛出動の要件を満たすとの判断を示したもの。石破長官の答弁から一歩踏み込んだ。(毎日新聞 2003/03/06)

対イラク・安保理新決議案支持を強調──小泉首相
小泉純一郎首相は6日の参院予算委員会で、米国などが国連安保理に提出した新決議案について「イラクのフセイン大統領に、場合によっては戦争に入らざるを得ないという自覚を促すものだ」と述べ、武力行使を容認する意味も含めて決議案を支持する姿勢を強調した。
また、川口順子外相は「仏独露が武力行使をしてはいけないと言ったことがいかにイラクに間違ったメッセージを送っているか」と決議反対を宣言した3国を批判した。いずれも筆坂秀世氏(共産)の質問に答えた。(毎日新聞 2003/03/07)

国連決議前提に新法策定/治安部隊に自衛隊派遣も
政府は8日、米国の対イラク攻撃の可能性が強まったことを受け、戦闘後の復興支援のため、治安維持部隊などの創設を盛り込んだ新たな国連決議を前提に、自衛隊の後方支援などを可能にする新法の具体的検討に着手した。米英両国も戦闘後、イラクに駐留して暫定政権樹立や復興支援にあたるには新たな決議が必要との認識で一致しており、政府はその採択に向け、国連安保理理事国に働き掛けていく方針だ。
自衛隊参加の形としては、輸送・通信・補給業務やイラクが保有していた化学兵器の廃棄処理を検討。ただ化学兵器については「処理能力の面からも困難」と、防衛庁内にも慎重論があるため、輸送などの後方支援にとどめることも想定している。
政府は湾岸戦争の教訓から、フセイン政権後の国造りで目に見える貢献策を模索。国連主導の復興支援の枠組みができれば自衛隊の派遣に対する世論の理解も得やすいと判断した。(四国新聞 2003/03/08)

ミサイル防衛、「決定する時期」 参院決算委で石破長官
石破防衛庁長官は10日の参院決算委員会で、北朝鮮のミサイル発射実験に関連して、日米が共同で技術研究を進めているミサイル防衛(MD)について「安全保障会議の議を経て決定する時期だろうと思っている」と述べ、導入に向けた本格的な議論を進めるべきだ、との考えを示した。
ミサイル防衛については、開発・配備への移行は別途判断するというのが従来の政府方針。石破氏は昨年12月、米国のラムズフェルド国防長官と会談した際にも「将来の開発・配備」に言及したが、その後、「検討するとは言っていない。今までの政府のラインと変わらない」などと釈明していた。
決算委で、石破氏は「現実問題として米国で配備されるようになったこと、冷戦時代は米ソしか持っていなかった弾道ミサイルを45、46カ国も持っていることをどのように考えるか。政府として大きな責任を有している」と述べ、大量破壊兵器の拡散が進んでいることなどを踏まえた対応が必要と強調した。
また、小泉首相は日本全土を射程内とする北朝鮮の弾道ミサイルについて「日本への攻撃とみなした場合、米国は自国への攻撃とみなすとはっきり言っている。これが大きな抑止力になっている。それを間違えるような馬鹿なことは北朝鮮はしないと思う」と述べ、日本へ向けて発射される可能性は低いとの認識を示した。いずれも江本孟紀氏(民主)の質問に答えた。(朝日新聞 2003/03/11)

日本は新決議案支持 「国際社会は断固たる姿勢を」
【ニューヨーク12日=内畠嗣雅】日本の原口幸市・国連大使は12日、国連安全保障理事会のイラク問題に関する公開討論で発言し、国際社会はイラクに対して断固たる姿勢を明示すべきだとし、米英両国とスペインが提示している新決議案への支持を表明した。
原口大使は7日の国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長らによる安保理報告に言及し、イラクの査察への協力が限定的だというのは国際社会の共通した認識だと指摘。イラク問題の平和的解決はイラク政府が抜本的に姿勢を改めるかどうかにかかっており、安保理は国連の権威と実効性を守るためにも新決議を採択すべきだと訴えた。
安保理は11、12の両日、理事国以外の国・機構がイラク問題での見解を表明する公開討論を開催、計56カ国・機構の代表が発言した。(産経新聞 2003/03/13)

防衛庁長官「ノドン迎撃は改良型PAC2では困難」
石破茂防衛庁長官は14日の閣議後の記者会見で、7月から配備する地対空誘導弾・改良型PAC2が北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」を迎撃できる可能性について「極めて限定的だ」と述べ、事実上困難との見方を示した。政府はノドン迎撃のため、米国の海上配備型ミサイルや地対空誘導弾・PAC3を購入する方針を決めている。
防衛出動の手続きに時間が掛かることに関しては「時間を短縮したりする方法はある」と指摘した。緊急時に首相の権限である防衛出動命令を防衛庁長官が代行する案を念頭に置いた発言とみられる。(日本経済新聞 2003/03/14)

米ミサイル導入に予算要求 防衛庁が04年度で検討
防衛庁は14日、米国が独自に開発し2004年から配備を目指している海上発射のミサイル防衛(MD)システムの導入に向け、海上自衛隊が保有するイージス艦4隻の改修経費などを04年度予算に要求する方向で検討に入った。
防衛庁は、米国が開発した地上配備型の新型パトリオットミサイル「PAC3」導入も検討している。
日米両国は共同技術研究を進めているが、実用化までには「さらに7、8年はかかる」(防衛庁幹部)。北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に、日米研究とは切り離しMD導入を急ぐべきだとの判断に傾いた。
ただ予算化は、政府決定が前提。米システム導入に対しては与党内に強い慎重論がある上、集団的自衛権行使を禁止した憲法との関係や経費面など検討すべき課題が山積しており、政府・与党内の調整は難航が必至だ。(共同通信 2003/03/15)

日本海にイージス艦3隻を 北朝鮮への抑止力で政府検討
政府は14日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の弾道ミサイル発射などの脅威に備え、テロ対策特別措置法に基づきインド洋に派遣している海上自衛隊のイージス艦「きりしま」を今春にも撤収、同艦を含め稼働可能なイージス艦3隻をすべて日本海に展開させるための検討を始めた。政府関係者が明らかにした。
北朝鮮は、黒鉛減速実験炉の再稼働や、弾道ミサイル「テポドン」の燃焼実験を準備するなど「瀬戸際政策」をエスカレート。このため、最新鋭の防空システムを搭載したイージス艦を展開、北朝鮮の脅威に対する「抑止力」とすることが必要と判断した。
インド洋へのイージス艦派遣には、イラク攻撃に向け準備を進めている米軍への「間接支援」の意味合いがあったことから、今後、艦船の交代に関し米国側と調整する。(共同通信 2003/03/15)

日本が核武装検討の恐れ 米副大統領、初めて言及
【ワシントン17日共同】チェイニー米副大統領は16日、北朝鮮の核開発について、米NBCテレビとの会見で「この地域の軍拡競争をあおると思う。例えば日本が核(武装)問題を再検討するかどうかの考慮を迫られるかもしれない」と述べた。米政府の首脳級の高官が日本の核武装に言及したのは初めて。
副大統領は、日本で核武装論議が起きることは「中国の利益にならない」と語った。副大統領は4月に中国、韓国などの歴訪を計画しており、それを前に日本の核武装論を持ち出すことで、北朝鮮への影響力を持つ中国に暗に核開発阻止に向けた協力を求めたものとみられる。米国では議会や専門家の一部に、北朝鮮の核開発が日本を核武装に走らせるとの懸念が出ている。保守派の一部からは核武装支持論もある。
米紙ワシントン・ポストのコラムニスト、チャールズ・クラウトハマー氏はことし1月、「ジャパンカード」と題したコラムで、北朝鮮の核開発阻止に消極的な中国の態度を変えるために、米政府は日本の核武装支持を表明すべきだと論評した。米国の防衛負担軽減のために核保有を日本の判断に任せるべきだとの議論もある。
しかし、米政府高官は日本の核武装について「日本は、国益に合致しないことを理解している」との見方を度々表明。アーミテージ国務副長官も「米国が核の傘を提供する限り、ない」との見解を示している。(共同通信 2003/03/17)

首相が武力行使支持表明 日米同盟を重視
小泉純一郎首相は18日午後、ブッシュ米大統領のイラクに対する最後通告演説を受け、米英両国が武力行使に踏み切った場合でも「決断を支持する」と明言した。
武力行使の根拠については「国連安保理決議1441、678、687の決議が根拠となり得る」と指摘した。
首相は、これまで日本独自に平和的解決に向け努力してきたことを強調するとともに、「日米関係の信頼性を損なうことは国家利益に反する」と日米同盟関係が重要との判断から米国支持の姿勢を鮮明に打ち出した。首相官邸で記者団に政府見解として発表、国民に理解を求めた。
政府は18日夜、安全保障会議と経済関係閣僚会議を開き、国民の安全確保や経済対策を協議する方向。
首相は記者団に、イラクの国連決議違反は国際社会も一致していると説明、「平和的解決の道は残されている。フセイン大統領の決断いかんにかかっている」と重ねてイラクが国際社会の要請に応えるよう促した。(共同通信 2003/03/18)

世論反対でも「決然と進める」=小泉首相、イラク攻撃支持に理解求める
小泉純一郎首相は19日午前の参院本会議で、国内世論にイラク攻撃への反対意見が根強いことに関し、「大多数の国民の理解を得にくい問題でも、政治家として決然として進めなければならない時もある」と述べ、米国などの武力行使支持を決断したことに理解を求めた。大江康弘氏(自由)への答弁。(時事通信 2003/03/19)

空自AWACS、日本海で活動へ 北朝鮮警戒で米軍を支援
政府は20日、イラク戦争に連動して北朝鮮が挑発行動に出ることを警戒し、航空自衛隊の早期警戒管制機E767(AWACS)を日本海上空での警戒活動にあてる方向で調整に入った。日本海では、米軍のAWACSが警戒・監視にあたっており、こうした活動に空自のAWACSを加えて警戒を強化したい、との要請が、米軍から日本側にあったという。
AWACSは、地上のレーダーでは確認できない低高度や遠方から侵入する航空機を素早く察知する能力にすぐれており、空自浜松基地に4機配備されている。米軍が空自のAWACSの派遣を要請したのは、北朝鮮の戦闘機が今月2日、米軍の偵察機に異常接近した事態を踏まえ、日本海の空域監視を強化する必要がある、との判断からだ。
仮にAWACSが得た情報をもとに、米軍機が北朝鮮機などを攻撃した場合には、集団的自衛権の行使にあたる可能性も指摘されている。
この点について、防衛庁は「米軍が攻撃をする場合、自前で情報を取り直さなくては攻撃ができないシステムになっている。空自のAWACSが米軍とできるのは、一般的な情報交換にとどまる」(幹部)としている。
北朝鮮情勢をめぐって、政府は今月上旬から、警戒・監視のためにイージス艦「みょうこう」を日本海に派遣、P3C哨戒機なども投入して警戒活動を続けている。政府は保有するイージス艦4隻のうち1隻はインド洋に派遣しており、残る3隻のうち最低1隻はいつでも日本海で任務につける状態にしておく方針だ。(朝日新聞 2003/03/20)

治安維持に自衛隊派遣を 米がイラク復興で要請
日本政府が検討しているイラクの戦後復興支援に関連して米国が日本に対し、占領行政中の治安維持に自衛隊などを派遣するよう要請していることが23日、分かった。
政府は、国連安保理でイラク復興決議が採択されることを前提に、新法による自衛隊派遣の検討を既に始めている。米国の打診を受け、治安維持部隊の後方支援として輸送・補給業務、医療活動やインフラ整備などを軸に法案化作業を加速させる。併せて文民警察官派遣も検討する。
国連平和維持活動(PKO)協力法では停戦の合意や当事国の受け入れ同意などが派遣の条件であるため、自衛隊派遣は事実上不可能。政府は新法が必要と判断しているが、その場合でも国連決議の採択は不可欠として、米英両国などに働き掛けている。(共同通信 2003/03/24)

「日本は再武装を」 石原都知事が米紙に
【ワシントン24日共同】石原慎太郎東京都知事は、24日付の米紙ワシントン・ポストとの単独会見で、北朝鮮の軍事的脅威に対抗するため、日本は軍備を強化すべきだとの見解を示した。
石原知事は北朝鮮問題について「日本は明日にでも(通常戦力の)強化を表明するべきだ。日本は自国の領空、領海を守らなければならない。そのために日本は再武装(英語ではリアームと表現)しなければならない」などと述べた。さらに北朝鮮への違法送金の即時停止も必要とした。
国政復帰の可能性について石原知事は、自分が首相になることは日本や東京のためになるとしながらも、現時点では首相になることは考えていないと言明。しかし日本の政治が混乱するなどした場合、「その可能性は排除できない」と述べ、将来首相就任を目指すことに含みを持たせた。(共同通信 2003/03/24)

日本がミサイル基地攻撃「検討に値する」 防衛長官
石破防衛長官は27日午前の衆院安全保障委員会で、弾道ミサイル発射基地への攻撃について、「今は相手への打撃力を全面的に米国にゆだねている。日本が全部(自国で)やることはできるはずもないが、検討に値することだと思っている」と述べた。
北朝鮮が「瀬戸際外交」の一環として弾道ミサイルを発射する可能性があるとされる中で、ミサイル基地を攻撃するために自衛隊の装備体系の見直しが可能かどうか、検討する考えを示したものと見られる。(読売新聞 2003/03/27)

クラスター爆弾:空自が148億円分保有 予算書にも明示せず
不発弾が多く「第2の対人地雷」と批判されているクラスター爆弾を、航空自衛隊が87〜02年度の16年間で総額約148億円分購入し、現在も保有していることが分かった。防衛庁は予算書などで購入を明示しておらず、配備中に国会で保有の是非が質疑されたことはなかった。同爆弾は米軍のイラク攻撃にも使われて国際的な問題になっており、国会への報告や情報公開のあり方が問われそうだ。
防衛庁によると、クラスター爆弾は87年、「敵が上陸した際、通常爆弾より広範な攻撃が可能」として配備を始めた。米企業が開発した「CBU―87/B」型を、技術提携した国内企業から毎年8億〜10億円分購入。02年度で配備を完了した。保有数や配備状況は未公表だが、全米科学者連盟によると、同型の90年当時の単価は約1万4000ドル(約170万円)で、空自の保有数は数千個と推計される。空自の支援戦闘機と偵察機に搭載できる。
同爆弾の購入は、予算審議の際に国会議員に配る明細書や添付書類で、ミサイルなどとともに「弾薬」として一括計上された。99年以降行われている全防衛装備品の契約状況の公表でも、随意契約のため入札公告などがなく、事前周知されていない。
一方、00年前後に一部の基地の航空祭に展示され、限られた専門家やマニアだけが知る情報だった。先月、政府は小泉親司参院議員(共産)の質問主意書に答弁書を出し、保有を認めた。
同爆弾は湾岸戦争などで使われ、民間人約2000人が死亡したと推計されている。不発弾に触った子供が多く含まれ、90年代初めから赤十字国際委員会などが規制を求めていた。非人道的兵器を規制する「特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW)」を締約した90カ国は先月、不発弾処理の検討を始め、年内にも具体案をまとめたいとしている。
防衛庁防衛局計画課は「保有を隠しているのではない。予算書などには主な内容しか書けないので、弾薬の内訳は慣例で省略している」と説明。同局国際企画課は「米国や中国など多数の国が保有しており、禁止が世論の大勢という認識はない。CCWの会議には防衛庁も出席しているが、不発弾の処理方法の検討で、保有を規制する内容ではない」と話している。【大治朋子】

<クラスター爆弾> クラスターは英語でぶどうの「房」。投下された親爆弾が花びらのように開き、中から200個以上の子爆弾が約200×400メートルの範囲に飛散、わずかな衝撃で爆発する。ベトナム戦争当時から米軍が使い始め、湾岸戦争、コソボ紛争、アフガニスタン攻撃などで約6万4000個使われた。全米科学者連盟によると不発率は5%で、イラクなどに残る不発弾(子爆弾)は64万個以上とされる。(毎日新聞 2003/04/17)

日本周辺 米先制攻撃でも適用可能 防衛庁長官 有事法制で答弁
衆院有事法制特別委員会は24日午後、野党側が武力攻撃事態法案など有事法制関連3法案の質疑を行い本格審議に入った。石破茂防衛庁長官は、米国が日本の周辺国を先制攻撃して緊張が高まった場合、同法案の「武力攻撃事態」や「武力攻撃予測事態」を適用することもあり得るとの見解を示した。
共産党の木島日出夫氏は米国のイラク攻撃を踏まえ「米国の先制的な武力行使が周辺国で開始され、相手国がわが国に対しても攻撃の意図を表明したり、推測される状況となった」との想定で、武力攻撃事態や武力攻撃予測事態が適用される可能性をただした。
石破長官は「適用されることもあると思う。前提がそう(米国による先制攻撃)だったから、発動できないとか発動するとか、そういう議論をするつもりはない」と答えた。
有事法制関連3法案は、日本に対する武力攻撃に至らない段階の「有事」の定義があいまいで、その判断は政府の裁量にゆだねられることが大きいと指摘されている。(中日新聞 2003/04/25)

通知表に「愛国心」、広がる 11府県で評価項目に(朝日新聞 2003/05/03)

自民憲法調査会:改憲素案 復古色強く反発も (毎日新聞 2003/05/03)

集団的自衛権の行使は可能、中曽根・宮沢両氏
憲法記念日の3日、与野党で発言が相次いだ。自民党の中曽根康弘、宮沢喜一両元首相はNHK番組で、憲法9条で禁じられているとされる集団的自衛権の行使について、日本周辺に展開する米艦艇などを防衛できるようにするため、一部容認すべきだとの見解をそろって表明した。
中曽根氏は「集団的自衛権は今の憲法でも行使できる。日本防衛のために来ている米空母が攻撃を受けたとき、日本が手を出せないというバカなことはない。小泉首相が行使できると一言言えばいい」と憲法解釈の変更を促した。宮沢氏は「(行使は)常識ではないか。ただ、カリフォルニア沖で米軍が攻撃されたときに行使するというのは常識を外れた議論だ」と述べ、集団的自衛権の行使は限定的にならざるを得ないとの考えを示した。
衆院憲法調査会の中山太郎会長(自民党)は、2004年中をメドにまとめる最終報告書について「各党、各会派の意見を聞いてまとめれば、方向は自然と出てくる」と述べ、一定の方向性を出したい考えを示した。(日本経済新聞 2003/05/04)

政府、クラスター爆弾使用を容認
政府は9日の閣議で、イラク戦争で米軍がクラスター(集束)爆弾を使用したことについて「米国はクラスター爆弾の投下に当たっては、その特性にかんがみ、注意深く目標を選定、民間人が巻き添えになることを防ぐよう努めてきた」として事実上、容認する答弁書を決定した。
民主党の桜井充参院議員の質問主意書への回答。同爆弾は、湾岸戦争やアフガニスタンでも使用された。爆弾の中に多数の小型爆弾を内蔵し、投下後に拡散、約5000平方メートルの広範囲で敵に被害を与え、殺傷力も高い。イラク戦争では約1500発使用された。
答弁書は「クラスター爆弾は、対人地雷禁止条約の規制対象ではなく、その使用を禁止する他の国際法規もない」と指摘している。(産経新聞 2003/05/09)

海外で攻撃受けたら「有事」 『自衛隊出動できる』 石破長官見解
石破茂防衛庁長官は9日午後の衆院有事法制特別委員会で、有事法制関連3法案に関連し、海外で自衛隊艦船などが攻撃を受けた場合、これを「有事」と認定し、自衛隊が防衛出動することについて「可能性は排除されない」との見解を明らかにした。
これは、同法案によって、自衛権行使を理由に、他国の領土を含めてどこへでも自衛隊が出動し、武力行使することが法律上認められるとの考えを示したもの。国是の「専守防衛」の枠を超え、自衛隊の活動範囲が拡大する恐れがある。
民主党の筒井信隆氏が「法案では、対象を日本の領土に限っておらず、海外派兵も理論上あり得るのではないか」などとただした質問に答えた。
石破長官は、自衛隊の武力行使が許される自衛権発動の3要件を挙げた上で、「要件に当てはまるとすると、法理論上は排除されない」と述べ、自衛隊による海外での武力行使もあり得るとの考えを示した。
ただ、「現実には極めて起こりにくい事態だ。『専守防衛』(の方針)を変えて、海外で武力行使を行うとの指摘はあたらない」と強調した。

自衛権発動の要件

政府は、自衛のための武力行使について、(1)わが国に対する急迫不正の侵害(2)これを排除するために他に適当な手段がない(3)必要最小限の実力行使にとどめる−の3要件を設定。これに該当すると政府が判断した場合に限り、武力行使できるとの見解をとっている。(中日新聞 2003/05/10)

沖縄返還交渉「密約」を暴露 若泉氏、特使だった 佐藤元首相秘書官証言
沖縄返還交渉における核兵器持ち込みの「密約」を自著で暴露し、密使を務めたとされる若泉敬・元京都産業大教授(故人)が、実際に日米交渉で公的な立場の「首相特使」として派遣されていたことを、当時の佐藤栄作首相の首席秘書官、楠田実氏(78)が共同通信に語った。密使としての若泉氏の存在を認める米側の証言はあったが、日本側交渉関係者が具体的に語ったことはこれまでなく、若泉証言の信ぴょう性を高めるものと言えそうだ。
沖縄は第2次大戦で地上戦の末、米軍に占領され、1951年のサンフランシスコ講和条約で米軍統治下に入り72年5月15日、日本に返還された。
若泉氏は94年、キッシンジャー元米大統領補佐官らとの交渉経緯をつづった本を出版。佐藤首相とニクソン米大統領(当時)の会談で、緊急有事の沖縄への核兵器の持ち込みと通過について「日本政府は事前協議が行われた場合、遅滞なく(米側の)要求を満たす」などとする極秘文書に両者が署名したと書いた。しかし、日本政府は密約の存在を否定し続けている。
楠田氏は、密約そのものについては「実際に見ていないし、やるという約束も聞いてない。サインするとまでは知らなかった。若泉さんの独壇場だった」「紙は残ってない。(佐藤首相は)形で残すことをする人じゃないから」と、日本側に文書が残っていないとの見解を示した。
楠田氏によると、当時京産大教授で民間の「沖縄基地問題研究会」の研究員だった若泉氏は首相特使として秘密裏に米国に派遣され、楠田氏が訪米の日程調整や連絡の手順など「細かいおぜん立て」をした。「特使料は払っていない」という。

<核密約> 1969年11月、佐藤栄作首相とニクソン米大統領が沖縄返還について会談。緊急有事の際(1)核兵器の沖縄持ち込みと通過(2)沖縄の核貯蔵基地の使用−を日本側が秘密裏に認めたとされる。沖縄の米軍基地から核兵器を撤去する「核抜き・本土並み」返還を米側が容認するための条件だったとの説が強い。(中日新聞 2003/05/14)

日本に軍事力強化の動き
北朝鮮核問題を理由に日本が軍事力強化の方向に動いている。
日本自民党と最大野党の民主党が13日晩、これまで「禁忌事項」だった有事法制制定に合意したのは、防衛政策基本の枠組みが変わったことを意味する。
過去にも日本の軍事力は、主に北朝鮮の脅威を理由に強化されてきた。北朝鮮が1998年に大浦洞(テポドン)ミサイルを発射すると、日本は1年後に周辺事態法を制定した。
しかし今回作られる武力攻撃事態対処法・自衛隊法改正案・安全保障会議設置法改正案の有事法制関連3法案は過去の法案とは意味が違う。
有事法制は一言で戦争に対応したものだ。有事の際、総理の統帥権を強化し、自衛隊が国民の財産権を規制したり国民を動員できるようにしている。
日本憲法9条は軍隊の保有と戦争を禁止している。それでも保守勢力と防衛庁は、有事法制と、米国など同盟国が戦争をすれば後方支援を行う集団的自衛権の行使をずっと要求してきた。
日本主要紙は14日、1面トップで有事法制制定合意事実を報じ、「戦後安保議論の転換点」(朝日)、「安保議論新しい段階」(毎日)、「国家の空白を埋める合意」(読売)と評価した。
一部の市民団体や地方自治体は「冷戦時代にもなかったことをなぜ今つくるのか」「日本の平和が崩壊している」と批判している。
しかし有事法制制定を契機に保守勢力の軍事力強化の動きはいっそう露骨化し、憲法9条の廃止を骨子とする憲法改正要求もさらに強まる見通しだ。
石破茂防衛庁長官、安倍晋三官房副長官などの保守政治家は「北朝鮮たたき」を通じて、国民の危機意識を助長しながら安保強化を主張している。日本の基本防衛戦略である「専守防衛」原則を再検討すべきだという主張も出てきている。(中央日報 2003/05/15)

米軍支援法制「一刻も早く」 石破防衛庁長官
石破防衛庁長官は16日の閣議後会見で、有事下で米軍に物品や役務を提供することを定める「米軍支援法制」について「米軍が有事において支障なく行動できるよう法律によって担保することが一刻も早く必要だ」と述べ、早急に法整備が必要だとの考えを示した。
米軍支援法制は、国民保護法制と並んで政府が有事法制関連3法案成立後に整備するとしている有事対処のための法制の1つ。国民保護法制は「1年以内を目標」としているが、米軍支援法整備については時期的な規定がない。
石破長官はまた、日本と米国で結ぶ日米物品役務相互提供協定(ACSA)について「有事版ACSAのようなものを考えたとき、訓練ではできるが実際の有事でできないというのは極めて不自然だ」と述べ、日本有事にも適用できるようなACSA改定を念頭に置いていることを明らかにした。(朝日新聞 2003/05/16)

日本の有事法制、攻撃の兆しのみで民間土地を収用
日本が外国の武力攻撃を受けた際の自衛隊の対応方針などを定めた有事法制3法案が15日、衆議院で、与野党の議員およそ9割の賛成を得て通過した。
この日通過した有事法制は、武力攻撃事態法案、自衛隊法改正案、安全保障会議設置法改正案の3つ。自民党など連立与党と野党・民主党が修正協議を経て作成した。法案は今月19日から参議院の審議と可決手続きを踏み、最終的に通過する見込みだ。
武力事態法案などによると、日本政府は外国が攻撃の兆候を見せただけで「武力攻撃予測事態」と判断し、陣地の構築などのため民間の土地を収用することができ、実際に攻撃を受ける「武力攻撃事態」では、自衛隊に出動命令が下せる。
今回の有事法制通過は「専守防衛」に基づいた太平洋戦争敗戦以来、日本の防衛政策が一大転換期を迎えたとの評価を受けている。(中央日報 2003/05/16)

「戦争行為を合法化」 北朝鮮、有事法案を批判
【北京17日共同】朝鮮中央通信によると、北朝鮮の外務省スポークスマンは17日、日本の有事関連法案の衆院通過について談話を出し「日本が戦争行為を合法化しようとしている」とした上で「核問題で複雑な朝鮮半島情勢をさらに激化させ、軍事的な緊張を高めるだけだ」と批判した。同法案の衆院通過後、初めての公式反応。
談話は「互いの安全を脅かす行動は取らない」とした昨年9月の日朝平壌宣言に絡めては批判していないが「われわれを主要敵とみなす」法案だと警戒感を強めており、こう着している日朝交渉再開に向けた対話環境は一層、悪化する可能性がある。
さらに談話は、同法案の衆院通過で自衛隊は「専守防衛から完全に脱皮した」と指摘。「日本の軍国化の動きは、われわれが自衛的国防力を強めるのが正当なことを証明している」と述べ「われわれを主たる標的とする限り、これに対処し必要な万端の措置をより強力に講じることになる」と警告した。(共同通信 2003/05/17)

日本の衛星、笑いの種と北朝鮮
【北京・共同】北朝鮮の朝鮮中央通信は19日、海外での報道を引用しながら、日本が3月に打ち上げた情報収集衛星が、各国の天文マニアの間で「監視の対象」になっており、軌道まで公開されてしまい「笑いの種となっている」と報じた。同衛星については、フィンランドのアマチュア天文家が撮影に成功したほか、軌道もインターネットで公表された。(時事通信 2003/05/19)

対米支援:約70億円計上 自衛隊の活動延長で
政府は19日の事務次官会議で、テロ対策支援法に基づく自衛隊の対米支援活動延長(5月20日〜11月1日)に伴う必要経費として、約70億円を今年度予算の予備費から計上することを決めた。20日の閣議で正式決定する。01年11月から始まった対米支援の費用は今年3月31日現在、計229億円。(毎日新聞 2003/05/19)

自衛官募集:個人情報、557市町村で提供 3村では本籍も
自衛官募集の適齢者情報収集問題で、防衛庁は19日、最新の調査結果を公表した。住民基本台帳法上で閲覧可能な4情報(氏名、住所、生年月日、性別)以外の個人情報を提供していた自治体は、前回の追加調査時よりさらに100以上増えて557市町村に達した。提供された情報には、これまで明らかになっていた世帯主名などのほか、プライバシー性の高い「本籍」が含まれていたことも判明した。
4情報以外を提供していた自治体は、問題発覚直後の先月23日の調査では332、25日の追加調査では441だったが、今回はさらに116市町村増えた。
「本籍」の提供があったのは山形県大蔵村▽同戸沢村▽山梨県小菅村──の3自治体。本籍については、出身地によって選別される可能性があるとの指摘があり、プライバシー性の高い、いわゆるセンシティブ情報とされている。
このほかの4情報以外を提供した自治体数は▽世帯主431▽保護者等88▽筆頭者4▽続き柄153▽郵便番号39▽電話番号25▽一連番号165▽自治会等162▽学校11▽年齢75▽住民区分19▽職業5▽父兄5──と発表されている。(毎日新聞 2003/05/19)

米議会で「日本の核武装論」が提起
北朝鮮の核開発を阻止し、金正日(キム・ジョンイル)政権を崩壊させるためには米国が「日本の核武装」カードで中国に圧力を加えるべきだという主張が、米議会で提起されている。
米下院国際関係委のマーク・カーク議員(共和党)は、16日、議事進行発言を通じ「現在中国はエネルギー供給中断と国境検問緩和を通じた北朝鮮脱出者許容のような北朝鮮には致命的といえる手段を有しているが、北朝鮮共産主義体制が変わったり政権が崩壊したりすることを決して願わないことから、北朝鮮に対する圧力行使に限界がある」とし、このように主張した。
すなわち、今後中国が北朝鮮の核保有を阻止できない場合、米国は日本の核武装を容認せざるを得なくなり、これは台湾・韓国などの周辺国の核武装まで触発する可能性があるという方法で中国を追い詰めるべきだということだ。 同議員は「実際に中国には北朝鮮政権の崩壊よりも日本でも台湾の核保有がより大きな脅威」と断言した。
また「現在、日本は米国よりも多くの38トンプルトニウムを保有しており、いつでも7000個以上の核弾頭を開発できることから、実際に北朝鮮のミサイル脅威以後、現在核武装と平和憲法改正に対する議論が活発な状態なので、米国のこのようなカードは中国に決して非現実的であったり、しばらく後の脅威として反映されないだろう」と付け加えた。 これに先立ち、カトー(CATO)研究所も2月、北朝鮮核問題に対する解決法で「日本・韓国核武装」を代案として提示したことがある。(中央日報 2003/05/19)

首相『自衛隊は軍隊』 将来改憲にも言及 有事法制審議
小泉純一郎首相は20日の参院有事法制特別委員会での答弁で、自衛隊について「実質的には軍隊だろうと(思う)。それを言ってはならないというのは不自然だ」と指摘した。そのうえで、「いずれ憲法でも自衛隊を軍隊と認め、不毛な議論なしに(自衛隊に対して)しかるべき名誉と地位を与える時期が来ると確信している」と述べた。
憲法9条は戦力の保持を禁止している。政府は戦力を「近代戦争遂行に足りる装備、編成」と定義し、自衛隊についてば「自衛のための最小限の実力は戦力に当たらない」との解釈を取っている。
首相の発言は、将来的には改憲し、自衛隊を戦力である軍隊として認めるべきだとの考えを示したもの。これは首相の持論だが、国会の場で「自衛隊は軍隊」と明言したのは初めて。
また、首相は他国が日本に弾道ミサイル攻撃をしようとする場合の対応について「はっきりと侵略の意図がある、組織的、計画的意図がある。それが分かっていながら、日本国民が被害を受けるまで何もしないわけにはいかない」と答弁。準備行為が確認されれば、ミサイル発射前の基地攻撃も可能とする政府見解を確認した。(中日新聞 2003/05/21)

核武装よりミサイル防衛必要=隣国との歴史認識一致は困難−麻生自民政調会長
自民党の麻生太郎政調会長は31日、東京大学で講演し、日本の核武装に関する質問に対し「安さだけでいったら、核(武装)の方がはるかに安い」としながらも、「ミサイル防衛(MD)の技術はこの10年で恐ろしく進歩した。日本が専守防衛をやるなら、MDを徹底してやった方がいい」と述べ、ミサイル防衛網の構築を急ぐべきだと強調した。麻生氏は「対中(国)等々を考えると、日本は人口密集度合いが全然不利。あちらは広い。撃ち返すのも大変だ」とも述べた。(時事通信 2003/05/31)

自衛官、自治体『有事』に関与 17都県市出向、再就職
有事関連法案をめぐり国民保護の在り方が問われる中、防衛庁のあっせんで、岐阜県や石川県輪島市など少なくとも全国の17都県市に、現職やOBの自衛官計22人が出向・再就職し、一部では住民の避難要領の作成など、自治体の有事対応に関与していることが5日、共同通信の調べで分かった。
防衛庁内には「自衛官の軍事知識は自治体に役立つはず」(幹部)として、自衛官の派遣を増やし有事対応の要にしたいとの意向もある。しかし、自治体側では、自衛隊出身者の役割は防災以外は決めていないところが多いのが実情だ。
防衛庁や各自治体によると、22人の内訳は陸上自衛隊20人、海上自衛隊、航空自衛隊各1人。自治体側から派遣を要請したケースが多い。
現職自衛官が出向しているのは東京都と鳥取県。東京都は今年4月から総合防災部の課長クラスに2等陸佐を、鳥取県では2001年8月から防災危機管理課の課長補佐クラスに1等陸尉をそれぞれ迎えている。
OBは北海道から九州までの自治体に、嘱託を含め20人が再就職。岐阜県では危機管理室長、石川県輪島市では交通防災対策室長を務めている。(中日新聞 2003/06/05)

有事関連法が成立
日本が他国から武力攻撃を受けた際の対処方針などを定めた有事関連3法が6日昼の参院本会議で与党3党と民主党などの賛成多数で可決、成立した。福田内閣当時の1977年の研究開始から4半世紀を経て有事法制が実現し、日本の安全保障政策は新たな段階に入った。一部を除き月内に施行される見通しで、今後は施行後1年以内を目標とする国民保護法制などの整備が課題となる。採決の結果は賛成202票、反対32票で、8割を超える賛成で可決した。民主党では神本美恵子議員が「思想・信条上の理由」で棄権した。
今国会最大の懸案だった有事関連法の成立を受け、政府・与党はイラクへの自衛隊派遣を可能にする「イラク復興支援法案」(仮称)のとりまとめ作業を本格化させる。
小泉純一郎首相は9日に自民党の青木幹雄参院幹事長らと協議し、新法の取り扱いや国会の会期延長問題について最終決断する方針だ。有事関連法は国の意思決定の枠組みや首相の権限の強化、自衛隊活動の円滑化などを規定するもので、武力攻撃事態対処法、改正自衛隊法、改正安全保障会議設置法の3本で構成する。(日本経済新聞 2003/06/06)

韓国政界が有事法に反発
【ソウル共同】韓国の与野党議員でつくる団体などが8日、日本での有事関連法成立を声明などで相次ぎ批判し、盧武鉉大統領が訪日する中、韓国政界で日本の「右傾化」への警戒感が強まっている。
韓国メディアによると、与党、新千年民主党(民主党)と最大野党ハンナラ党議員ら37人でつくる「反戦平和議員の会」は会見で、有事関連法を「事実上の戦時動員法」と非難した。(共同通信 2003/06/09)

巨額の経費、どう捻出=迎撃100%保証できず−「最後は国民の選択」・MD防衛
2004年度予算の概算要求を前に、ミサイル防衛(MD)システム導入に向けた検討が政府内で大詰めを迎えている。防衛庁には6月上旬、米国防省高官が相次いで訪れ、地対空誘導弾パトリオット「PAC3」とイージス艦搭載型ミサイル「SM3」による2段階迎撃網の有益性を強調した。しかし、配備には最低でも数千億円が必要。防衛庁幹部は「弾道ミサイルを確実に撃ち落とせる保証はない。導入の是非は最終的には国民の選択」と話す。(時事通信 2003/06/14)

米迎撃ミサイル、三菱重工にライセンス生産発注検討
防衛庁は24日、米国が独自に実戦配備の計画を進めている最新鋭の迎撃ミサイル地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の導入に際し、国内でのライセンス生産を前提に米側と調整する方針を固めた。ライセンス生産先は三菱重工業が有力。同庁は国内防衛産業の技術力の維持や、修理・整備の迅速性などを総合的に判断したとしている。
ライセンス生産は、日本企業が米国企業と契約し、技術や部品などの提供を受けて生産する仕組み。三菱重工は現在、自衛隊が実戦配備しているPAC2をライセンス生産している実績がある。防衛庁は北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」が日本全域をほぼ射程に収めていることを念頭に、この迎撃システムを早期に整備するのが不可欠と判断。イージス艦に搭載するスタンダードミサイル(SM)3と並び、PAC3を2004年度に新規契約する正面装備の目玉と位置付けている。SM3が弾道ミサイルが最高度に到達した時点で迎撃し、これで打ち損じたミサイルをPAC3が迎撃する二段構えになることから、両ミサイルの同時配備が必要だと説明している。(日本経済新聞 2003/06/24)

クラスター爆弾:NGOメンバーらが防衛庁に全面廃棄求める
小さな爆弾が広範囲に飛散し、戦後も不発弾による被害が後を絶たないクラスター爆弾について、NGO「ピースボート」のメンバーらが7日、防衛庁を訪れ、自衛隊が保有している同爆弾の全面廃棄を求めた。防衛庁は「専守防衛の趣旨にかない、わが国の防衛上必要」との見解を示した。(毎日新聞 2003/07/07)

ミサイル防衛:05年度導入へ 2年間で2000億円
防衛庁は11日、日本へ向けて発射された弾道ミサイルを迎撃するためのミサイル防衛(MD)システムを05年度から自衛隊に導入する方針を決めた。04年度予算の概算要求に導入経費を盛り込み、05年度までの2年間で約2000億円を投じて海上自衛隊のイージス艦4隻と航空自衛隊の1個高射群に迎撃ミサイルを配備する。将来的には国内6カ所に置かれている空自の高射群(対空ミサイル部隊)すべてに導入する構想で、総事業費は1兆円を超える見込み。8月に安全保障会議を開き、政府方針として決定する見通しだ。
防衛庁が導入を決めたのは、米国が04年から配備するイージス艦発射型の対空ミサイル「SM3」と地対空ミサイル「パトリオットPAC3」を組み合わせる2段階システム。日本に飛来する弾道ミサイルが大気圏外を飛行中(ミッドコース段階)にSM3で迎撃し、撃ち漏らした場合は大気圏に再突入後の着弾前(ターミナル段階)にPAC3で迎え撃つ。
MDは大量破壊兵器の世界的な拡散に対抗するため米国が開発、同盟国に導入を働きかけている。5月の日米首脳会談で小泉純一郎首相は「(導入の)検討を加速していく」と表明していた。
防衛庁は99年から約156億円をかけてSM3の将来システムとなる海上配備型ミサイルの日米共同技術研究を続けているが、核兵器・弾道ミサイル開発を進める朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の脅威を受け、現行システムの導入を急ぐ必要があると判断した。共同技術研究も継続する。
防衛庁は05年度までに、海自が保有するイージス艦4隻のレーダーやミサイル発射装置を改修し、SM3を発射できるようにする。またPAC3の導入には、弾道ミサイルより低速の戦闘機などを迎撃するパトリオットPAC2のシステムをPAC3用に改修する必要がある。2段階システムを連動させるため各自衛隊の指揮・通信システムの統合も進める。
戦車や戦闘機などの大型装備品を削減してMD導入費に充てる予定で、防衛力整備の根本的な改革につながるため、年末にも現在の防衛大綱を見直す方針だ。
ただ、MDシステムは「今の技術で100%の迎撃はありえない」(防衛庁幹部)と指摘されており、SM3は先月、米国が行った4回目の迎撃実験で初めて失敗している。このため、政府内には技術面や費用対効果の面で懸念も残っている。

<ミサイル防衛> 敵の弾道ミサイルをレーダーなどで探知し(1)発射直後の上昇時(ブースト段階)(2)大気圏外を飛行中(ミッドコース段階)(3)大気圏に再突入後(ターミナル段階)──の3段階で迎撃するシステム。米国はレーガン政権時代の戦略防衛構想(SDI)から曲折を経ながらも、総額10兆円といわれる巨費を投じて開発を進め、04年から本格的な実戦配備に入る。日本では98年8月、北朝鮮の弾道ミサイル「テポドン」が日本上空を越えたのを受けてMD導入論が噴出。99年から将来システムの日米共同技術研究を続けている。(毎日新聞 2003/07/12)

新非核3原則を世界に 広島市が政府に要望へ
被爆都市として核廃絶を訴えている広島市は24日までに、日本だけに限定していた従来の非核3原則を改め、世界共通ルールとする「新・非核3原則」を提唱する要望書を政府に提出する方針を固めた。28日に秋葉忠利市長が上京した際に伝える。
新たな3原則は「作らせず、持たせず、使わせない」とする内容。これまでの「持たず、作らず、持ち込ませず」は日本だけの原則だったが、各国に対しても自制を求めている。
広島市は北朝鮮の核保有問題や米国が小型核兵器開発を進める方針を打ち出していることから、新たな非核外交の展開が必要と判断。政府に働き掛けることにした。
8月6日の平和記念式典でも、世界に向けて呼び掛ける予定で、被爆地ヒロシマから、新たな非核外交の流れを作り出したい考えだ。(共同通信 2003/07/25)

米の核政策を強く批判 広島平和宣言骨子
「法の支配」と「和解」訴え
広島市の秋葉忠利市長は1日、6日の平和記念式典で読み上げる「平和宣言」の骨子を発表した。核拡散の危機が叫ばれ、イラク戦争をはじめ戦禍の絶えない世界情勢に、「力の支配」ではなく、国際社会のルールに則した「法の支配」と「和解」の重要性を訴える。被爆60周年の2005年に開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議を1つの節目ととらえ、核兵器廃絶のための緊急行動を世界に要請する。
宣言は、核兵器先制使用の可能性を明言し、小型核兵器の開発も目指す米の政策が、NPT体制を崩壊の危機にさらしているとの認識を表明。「核兵器は神」とする政策を強く批判し、ブッシュ大統領や核兵器保有を表明する北朝鮮の金正日総書記らに、核戦争の現実を直視するよう広島訪問を促す。
米国民への説得を意識し、「すべての人を永遠にだますことはできない」とのリンカーン元大統領の言葉を引用。劣化ウラン弾による放射能汚染をもたらしたイラク戦争を「平和をもたらす戦争」と正当化する主張を退ける。
さらに、米黒人運動の指導者、故マーチン・ルーサー・キング牧師が述べた「暗闇を消せるのは、暗闇ではなく光だ」との言葉を引用し、イラク戦争に象徴される「力の支配」は闇であり、「法の支配」と被爆者から生まれた「和解」の精神こそが光であるとのメッセージを盛りこむ。
「核兵器禁止条約」締結交渉を始めるよう各国政府へ働きかけるため、平和市長会議の加盟都市に05年のNPT再検討会議への出席など緊急行動を呼び掛ける。世界の各界のリーダーたちに戦争や核兵器を容認する発言を控えるよう求める。
日本政府には「作らせず、持たせず、使わせない」との新・非核3原則を国是とするよう求め、被爆直後の「黒い雨」を浴びた人たちへの援護充実にも初めて触れる。(中国新聞 2003/08/02)

原子力委、プルトニウム利用推進を確認
国の原子力委員会は5日、プルトニウムを通常の原子力発電所で燃やすプルサーマルや高速増殖炉の開発を柱としたプルトニウム利用政策を推進する姿勢を改めて確認した。東京電力の原発トラブル隠しなどでプルサーマル計画は実施のメドが立っていないが、ウラン資源の有効活用などの観点から国として推進する必要があるとした。
原子力委は東電のトラブル隠しを受け、昨年11月から原発立地自治体の首長や電力事業者、学識経験者らの意見を聞き、同委としての見解をまとめた。プルサーマル計画を推進する一方、「余剰プルトニウムを持たない」とする国際公約を守るため、電力会社などにプルトニウム利用計画を毎年公表するよう求める。
1月の名古屋高裁金沢支部判決で原子炉設置許可が無効とされた高速増殖炉原型炉「もんじゅ」についても、早期の運転再開が期待されるとした。(日本経済新聞 2003/08/05)

核武装の可能性を否定 福田氏、将来には含み
福田康夫官房長官は6日午前の記者会見で、日本が核武装する可能性について「今現在、核抑止力を持つ必要はないし持つべきではない。持てば他国の脅威になる」としながらも、将来に関しては「将来の方が考えるべきだ」と含みを残した。
これに関連して6日夕の記者会見では「わが国は非核3原則を堅持しており、考え方をしっかり持って、わが国もそれなりに努力することが必要ということだ」と釈明、非核3原則を堅持する考えを示した。福田氏は「わが国として方針を変えるのがいいと思ったことはない」と強調した。
午前の記者会見でも福田氏は「核の拡大は悲劇的なことだ」と表明、核拡散防止に向けた国際環境醸成の必要性を指摘した。(共同通信 2003/08/06)

「責任はイラクにある」 首相、長崎で戦争に理解求める
小泉首相は9日、長崎市長の平和宣言が米英両国によるイラク攻撃を非難したことなどについて、「日本としては国連決議にのっとって(米英を)支持した。イラクが国際社会の声を聞いて査察を受け入れれば、戦争は起こんなかった。イラクに責任がある」と述べ、改めてイラク戦争について理解を求めた。同市での平和祈念式典に出席後、記者団の質問に答えた。
首相はその上で、「人々にはいろんな意見がある。それはそれでけっこうだと思います。日本政府としては日本の平和と独立、世界の平和の構築に向けて努力していきたい」と語った。また、平和宣言が専守防衛の順守や非核3原則の法制化を求めたことについては「日本は専守防衛、非核3原則。この方針に変わりありません」と述べるにとどめた。(朝日新聞 2003/08/09)

検閲知りながら軍隊批判 旧陸軍の史料発見
日中全面戦争期に兵士が前線から家族、友人らに送った郵便物などの検閲結果を陸軍が分析した史料が11日までに、防衛庁の図書館で見つかった。検閲されることを知りながら率直な軍隊批判がつづられており、当時、前線で反戦ムードが広がっていたことを具体的に裏付ける点で貴重な史料といえる。
日露戦争後、初めてソ連軍と本格的に交戦し、大敗を喫したノモンハン事件では、自軍の装備の低劣さを兵士が激しく批判していたことも明らかになった。
吉田裕一橋大教授と明治大大学院生の松野誠也氏が、防衛庁防衛研究所図書館で発見した。史料は大本営陸軍部研究班が1940年9月に作成した「支那事変の経験に基づく無形戦力思想関係資料(案)」と題する文書。
日中全面戦争が始まった37年から、長期持久戦となり泥沼化した39年まで、憲兵隊が検閲した郵便や電報のほか、兵士の日記などの内容を分析したもので、当局にとって都合の悪い言動を多く取り上げ、軍としての対策を検討している。(共同通信 2003/08/11)

『米朝不可侵なら日本は核武装も』 防衛大校長、米紙に寄稿
【ワシントン14日共同】防衛大学校の西原正校長は14日付の米紙ワシントン・ポストに寄稿し、米国と北朝鮮が不可侵条約を結ぶようなことになれば、日米安全保障条約と矛盾を来し「日本の核兵器開発を正当化することにさえなるかもしれない」と警告した。
北朝鮮は核開発問題に関して27日から北京で開く6カ国協議を前に米国との不可侵条約締結を強く要求。ブッシュ政権内外では、対応を誤れば日本の核武装を招きかねないとの意見がかなり出ている。西原氏の主張はそうした米国の懸念を背景にした意見だが、日本の防衛大学校長の踏み込んだ発言として波紋を広げそうだ。
「北朝鮮のトロイの木馬」と題した寄稿で、西原校長は、米朝不可侵条約の危険性として(1)条約の交換条件である北朝鮮の核兵器開発計画放棄の検証は難しい(2)条約は米軍の韓国撤退への圧力につながる(3)日本国内でも在沖縄米軍撤退の圧力が強まる−を挙げた。
さらに北朝鮮が核を放棄したとしても、生物・化学兵器で日本を攻撃するかもしれず、その際に米国は不可侵条約のため日本防衛ができなくなる可能性があり「日本は米国との同盟をあてにできないので(北朝鮮への)報復のための核兵器開発を決定するかもしれない」と論じた。(中日新聞 2003/08/15)

日本の保有プルトニウム、国内外に38トン
国内外の原子力施設に保管されている日本のプルトニウムは02年末時点で38トンに上ることが2日、明らかになった。文部科学省などが国の原子力委員会に管理状況を報告した。内訳は、核燃料サイクル開発機構の再処理施設や燃料加工施設などに約5トン、再処理委託をしている英仏の施設に約33トン。(朝日新聞 2003/09/02)

イラン、日本の原子力政策に疑義はさむ
国際原子力機関(IAEA)の26日の理事会で、イランのサレヒ大使が、平和目的に限定している日本の原子力政策に疑問をはさむ一幕があった。今回のIAEAの対イラン非難決議採択に際し、日本は英独仏の提出したイラン寄りの当初決議案を甘すぎると批判した経緯があり、大使の発言は、イラン側の意趣返しとみられる。
サレヒ大使は「IAEAが(過去の日本の原子力施設への査察の結果)日本の核計画を完全に平和目的と結論づけられたかどうか。私の知る限りでは答えはノーだ」と発言。原子力政策を平和目的に限定しているとしている日本政府の説明は信用できないとの認識を示した。
日本の高須幸雄大使は同日の演説で、IAEAのエルバラダイ事務局長が今月10日に理事国に提出した報告書で「イランの核計画を平和目的とはまだ断定できない」としたことを引用していた。(ウィーン=高坂哲郎)(日本経済新聞 2003/11/27)

「日本、将来核武装も」 米政府機関2020年国際予測 公的文書、異例の言及
【ワシントン=近藤豊和】米中央情報局(CIA)の所属機関である米国家情報会議(NIC)が2020年の国際情勢を予測分析した報告書の中で、日本の防衛力拡大のための憲法改正と核武装の可能性に言及していることが分かった。日本の改憲や核武装をめぐる議論は米国内に以前からあるが、公的機関がまとめた報告書で言及されたのは極めて異例だ。
報告書によると、2020年までに、朝鮮半島や中台関係などをめぐって北東アジアの各国はそれぞれの異なる度合いで軍備強化を進め、日本はその中で最も技術的に優位な軍備を持つ地位を、駐留米軍とは別に保持すると分析。
そのうえで、「(日本は)自衛のための積極的な役割を増すことを可能とするために、憲法を改正するだろう」との見方を示している。
また、韓国は最終的に朝鮮半島の統一という国益を守るために軍備増強を続けると予測。中国については、台湾海峡への米国の干渉を制止するために、軍事力の近代化を進めるとし、北東アジアは他地域に比べても軍事的緊張が非常に高い地域になるとしている。
こうした状況の中で、朝鮮半島が統一された場合、日米同盟に圧力がかかることが予想されるほか、「北東アジアの駐留米軍の存在は、もはや韓国を防衛するということで(駐留を)正当化できなくなる」と指摘。こうした情勢変化は、日本と統一された朝鮮半島の双方を「核能力の獲得」へと導く可能性があるとしている。また、米国のこの地域での安全保障は継続されるものの、駐留米軍の再編や脅威への認識の変化によって「(同盟国との)結び付きは緩くなる」とも予測している。
日中関係については、中国が地域で確実に伸長する中で、日本は難しい選択を迫られ、地域での主導権を握ろうとするか、米国に接近するかのいずれかだと指摘している。
ワシントンのシンクタンク「スチムソンセンター」が12月に発行した「日本の核の選択」などによると、米国内での日本の核武装論議は一部で活発化しており、北朝鮮の核開発計画の中で、米国が中国などに「北朝鮮の核開発を中止させないと、日本が対抗上、核武装する事態になりかねない」との見方を示すことで、北朝鮮の核開発問題解決に中国を引きつけるという狙いが背景にあると指摘されている。
今回、NICが報告書の中で「日本の核能力の獲得」に言及したことも、こうした議論が影響している可能性がある。
しかし、「将来の日本独自の核武装の可能性」にNICの報告書が言及したことで、米国の「核の傘」という戦略は将来、日本には適用されなくなる可能性を示唆したとも解釈でき、日本の安全保障に重大な転機が来ることも予感させる内容となっている。(産経新聞 2003/12/31)

日本の核兵器保有も合憲 専守防衛条件に中曽根氏
中曽根康弘元首相は7日、東京都内の日本外国特派員協会で講演し、日本の核兵器保有について「憲法解釈論としては、(日本の防衛政策である)専守防衛に役立つ範囲の核兵器は憲法違反ではないと思う」と述べ、条件付きで合憲との認識を示した。
ただ「専守防衛の範囲内で核兵器を持つことは禁止されていない。その解釈を申した。持つか持たないかの政治的判断は別のものだ」とも指摘、実際に保有するには政治的な判断が必要と強調した。
今後の政局については「参院選で惨敗すれば(小泉純一郎首相の)対抗馬が生まれる可能性が極めて大きい」との見通しを示した。
また、今後、具体化する憲法や教育基本法改正をめぐり与野党で賛否が交錯しているとして「政界再編が2年か3年、5年の間には必ずあるだろう」と述べた。(共同通信 2004/01/07)

地方に「防衛局」創設 防衛庁方針、全国8施設局格上げ
防衛庁は20日、全国8カ所にある防衛施設局を「地方防衛局」(仮称)に格上げし、50の自衛隊地方連絡部を同局の直轄とする方向で組織再編する方針を固めた。
有事法制の整備に伴い、日本が外国から武力攻撃を受けた際の対応や平時の訓練などで、防衛庁と地方自治体との接点が今後、増大することを見越した措置で、自治体との円滑な協力体制を築くのが狙い。今年中にまとめる新たな「防衛計画の大綱」に明記、2005年度から具体的な作業に着手する見通しだ。
防衛施設局は現在、札幌、仙台、東京、横浜、大阪、広島、福岡、那覇に置かれており、自衛隊や在日米軍の基地の建設、米軍施設の返還などの問題で自治体との調整を行っている。また、地方連絡部は、すべての都道府県にあり、自衛隊員の募集や退職者の再就職支援を担っている。
組織上は施設局が防衛施設庁、地方連絡部は陸上自衛隊の方面総監部の下にある。「地方防衛局」構想は、防衛庁の下に両組織を一体化、有事対応の機能を持たせるのが目的だ。(共同通信 2004/04/20)

集団自衛権「認めるべきだ」=海自トップ、異例の言及−将来の海外活動増加前提に
防衛庁の古庄幸一海上幕僚長は20日の定例記者会見で、自衛隊の国際貢献活動が将来増えることを前提とした上で、集団的自衛権を認めるのが「当然だ」との見解を示した。自衛隊トップが憲法上の問題にかかわる見解を明らかにするのは極めて異例。政府は「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」としており、踏み込んだこの発言は今後、国会などで論議になるとみられる。(時事通信 2004/04/20)

「北核阻止できなければ米も台湾核阻止できず」
趙甲済(チョ・ガプジェ)月間朝鮮編集長は22日、「米国の消息筋によれば、チェイニー米副大統領は最近中国を訪問し、『中国が北朝鮮の核武装を阻止できなければ、米国も台湾と日本の核武装を阻止できない』というブッシュ大統領のメッセージを党政の首脳部に伝達した」と主張した。
趙編集長は同日、自分のホームページに載せた文章でこのように述べ、「ブッシュ大統領も大統領選を控え、これ以上北核問題でてこずるわけにはいかない。可視的成果があるべきだ」とチェイニー米副大統領が述べたと聞いたと主張した。チョソン・ドットコム(朝鮮日報 2004/04/22)

核武装は永久に放棄=自民幹事長、米シンクタンクで講演
【ワシントン29日時事】訪米中の安倍晋三自民党幹事長は29日、ワシントンの保守系シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」(AEI)で講演した。質疑の中で同氏は「核政策と憲法改正は関係ない。われわれは核武装を永久に放棄している」と強調した。
同氏は、自民党が進めている憲法改正について、現憲法が占領時代につくられたことや、憲法9条などが現状に合わなくなっており、日本の安全保障が担保されないことを指摘。その上で「今こそ自らの手で新たな憲法を持つ時代に来ている」と表明した。(時事通信 2004/04/30)

核製造能力:日本は70年代初頭に30個 米政府報告書
日本の核武装への懸念が米政府内で強まった60年代、米政府の軍備管理軍縮局が、日本は70年代初頭に年間で最大30個の核を製造する能力を持ち、70年代半ばまでには核搭載の弾道ミサイルも100基製造できるとの機密報告書をまとめていたことが10日、分かった。
当時のジョンソン政権が「日本は核開発能力を持つ」と判断していたことは知られているが、能力を具体的に分析した文書の存在は分かっていなかった。
文書は65年6月の「日本の核兵器分野における見通し」(45ページ)。当時のフォスター軍備管理軍縮局長が国務、国防長官、大統領補佐官に提出した。ジョンソン大統領図書館が機密指定を解除、沖縄国際大学の吉次公介助教授(国際政治)が入手した。
報告書は日本には非核世論が根強く、核武装に数年内に踏み切ることはないとしながらも(1)71年までに年間10〜30個の核を製造(2)75年までに核搭載の大陸間弾道弾(ICBM)などを最大で100基開発(3)71年までの核実験──が可能と結論づけた。
当時兵器級プルトニウムが製造可能な英国製原子炉が稼働し、国産宇宙ロケットの開発も進んでいたことを根拠としている。核戦力配備の総費用として13億〜25億ドルが必要とし、日本の経済力なら可能としている。
また日本独自の核武装を防ぐため、米軍と自衛隊の「核の共同管理」や日本への核兵器貯蔵を研究する必要性にも触れている。64年12月に佐藤栄作首相がライシャワー駐日大使に「他国が核を持てば(日本も)持つのは常識」と言明したことも明記している。(ワシントン共同)(朝日新聞 2004/05/10)

核持ち込みあり得る 非核3原則で外相
川口順子外相は2日の参院イラク復興支援・有事法制特別委員会で、国是とされる非核3原則の有事の適用に関し「使用目的でなく、日本に使わせないように、相手が持っているものを捕獲して廃棄するため一時的に(国内に)入れることは排除されない。非核3原則に違反するということではない」と述べ、例外的に核兵器を国内に持ち込むこともあり得るとの見解を示した。
石破茂防衛庁長官は、外国軍用品海上輸送規制法案が可能とする第三国商船への停船検査について「自衛権行使に伴う措置として第三国は受忍すべき立場にある。国連憲章上も憲法上も適法だ」と主張。外務省の林景一条約局長も「敵国の武力攻撃を排除するための行動は自衛権として正当化される。国際的規範としてわりと幅広く共有されている」と述べた。
民主党の榛葉賀津也、共産党の井上哲士両氏への答弁。(共同通信 2004/06/02)

日本の原子力計画は平和目的=IAEAが公式に宣言
【ウィーン14日時事】国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は14日、同日開幕した6月定例理事会での演説で、これまでの査察から日本の原子力計画は平和目的に限られ、軍事転用はないことが証明されたと公式に宣言した。
高い技術力を保持する日本には、核武装するのではないかとの疑惑がかけられていたが、その払しょくにつながるものとみられる。(時事通信 2004/06/14)

核武装「5年、2000億円でやれた」 中曽根氏が新回顧録
中曽根元首相が25日、回顧録の「決定版」として「自省録―歴史法廷の被告として」を新潮社から出版する。防衛庁長官時代の70年に、ひそかに日本の核武装の可能性を研究させた時のエピソードにも触れ、「当時の金で2000億円、5年以内で出来る」との結論を得たことを明らかにした。
研究は「現実の必要を離れた試論」として行われた。結論は、日本は国土が狭く核実験場を持てないなどの理由のため、現実問題として核武装はできないとされた。
中曽根氏は核武装には否定的だが、「自省録」では、「もし、米国が日本を核で守ることをやめる場合は話は別だ。日本も核武装の可能性も含めて検討しなくてはならない」と指摘している。(朝日新聞 2004/06/18)

キッシンジャー氏、米紙に寄稿 自立傾向強める日本
国際社会の主役へ行動範囲拡大
【ワシントン=古森義久】ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は9日付のワシントン・ポストへのアジア情勢を論じる寄稿論文の中で、日本がいまや自立傾向を強め、国際情勢に主役の一員としてのぞみつつあると述べ、将来の選択には核武装という道も含まれるという見解を明らかにした。
キッシンジャー氏は「流動の世界情勢」と題する論文でアジアの変容について論じ、「北東アジアでも最も複雑な変遷は日本で起きている」と指摘。日本は(1)第2次大戦後の半世紀ほど米国との安保条約に避難し、経済復興と政治的敬意の回復に集中してきた(2)この間、過去1000年以上の歴史で初めて対外政策を他国に従属させてきた(3)だがいまや自主的に対外行動の範囲を広げ始めた(4)その結果、国際舞台では米国の補助の役から主役の一員へと変わってきた(5)この変化は米国にとり挑戦であると同時に好機でもある(6)このプロセスは北朝鮮からの挑戦で加速された−と論評した。
同氏はさらに「日本が伝統的に朝鮮半島を自国の安全保障の本質的な一部とみなすため、北朝鮮の核武装も補完措置なしには受け入れないだろう」と述べ、北朝鮮の核武装が北京での6カ国協議である程度認められるとなると、日本は自国の核武装をも考慮するようになるだろう、という結論をぶちあげた。
キッシンジャー氏はまた、このような変化が中国の拡張でさらに加速されるとなると、日本は(1)対米同盟に基づく外交政策の継続(2)中国とのなんらかのパートナーシップをともなう欧州連合(EU)型のアジア政治連帯の探索(3)前2つの選択をせず、国益追求を最大目標とする非同盟型への志向−のどれかを目指すだろう、と予測する。ただし当面は日本は国益を追求することへのコンセンサスを築きながら、新たな事態の展開を待つ姿勢でいるのだという。(産経新聞 2004/07/11)

81年にも核武装検討 ソ連脅威論受け 防衛庁「あり得ぬ」と結論
アフガニスタン侵攻でソ連脅威論が高まっていた1980年代初頭、日本の核武装の可能性を防衛庁の防衛研修所(現防衛研究所)が検討していたことが、共同通信が入手した報告書で2日、明らかになった。
単なる原爆製造は可能だが、運搬手段も備えた戦術核や戦域核には米国の支援が必要で、本格的な戦略核武装は産業や技術基盤が負担に耐えないと指摘。さらに、対ソ戦の死者は人口の約20%に達し、軍事的効果も望めないと、否定的な結論を下している。
日本の核武装研究はこれまで複数明らかになっているが、今回の報告書は技術的な可能性に焦点を当てたのが特徴。防衛庁は「研究者の自由な研究で、公式なものではない」としている。
報告書は81年のプロジェクト研究「我が国防衛政策のあり方」の一部で「核装備について」との表題がついた7月30日付文書。当時の同研修所第6室の陸上自衛官と研究助手がまとめた。
技術的可能性について、プルトニウム原爆を数発製造、保有するだけの初歩的核武装から、大陸間弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイルを展開した戦略核武装まで5段階のシナリオを想定。
初歩的核武装は3―5年でできるが、それ以上の段階は、兵器級プルトニウムの分離施設や潜水艦用原子炉などの軍事技術で米国の支援が必要と指摘。さらに核実験場を提供してくれる友好国や、ウラン供給停止時の確保策が不可欠として「日本の防衛戦略に寄与し得る技術体系の建設はあり得ない」としている。
軍事的効果でも、ソ連との戦域核戦争を想定した場合、相手の死者は極東地域の約100万人だが、日本側は人口の21%に当たる約2500万人に達し、工業力もほぼ半分が破壊されるとして「わが国の被害が一方的に大きい」と推定した。
費用は爆撃機50機と中距離ミサイル100発、原潜3隻もそろえると2兆3500億円、原潜5隻に特化した場合は1兆9000億円と試算。システム運用で約9600人の増員が必要としている。
核物理の専門家として報告書をまとめた元助手は「当時、核武装は安く簡単にできるとの議論が防衛庁内外であり、システム全体では高くて困難だと示すのが狙いだった」と説明している。

■核戦争なら一方的被害 技術面も負担耐えず

【解説】日本の核武装は、国内的には原子力基本法で、国際的にも核拡散防止条約で禁じられている。しかしこれまで、中国の核実験や北朝鮮の核開発など、東アジアで軍事的緊張が高まるたびに核武装への積極論が台頭してきた。
今回の報告書をまとめた研究者も、1970年代後半のソ連によるアフガニスタン侵攻や弾道ミサイルSS―20の配備などによる脅威論の高まりを機に核武装の可能性を検討した、としている。
こうした研究は内閣調査室が68年と70年にまとめた「日本の核政策に関する基礎的研究」や、防衛庁の有志が95年にまとめた「大量破壊兵器の拡散問題について」など複数ある。中曽根康弘氏も防衛庁長官時代の70年に私的グループに研究させたと自伝で述べている。
人口が集中している日本側の被害が甚大になることや、米国の核の傘の下にいた方が現実的などの理由で、いずれも核武装には否定的な見解で一致している。
今回の報告書はこれに加え、ミサイルや潜水艦などを含めたシステムとしての核武装は負担が大き過ぎるとの結論が出ており、独自核武装に合理性がないことをあらためて示した形だ。

■荒唐無稽な内容だ 森本敏・拓殖大教授(安全保障)の話

報告書がまとめられた1981年は米ソ間の対立が最も厳しかった時代で、こうした研究が机上で行われていても不思議ではないが、外交的、経済的な視点がなく、荒唐無稽(むけい)な内容だ。
核武装するのが主要国の要件だという論調がたびたび現れるが、日米同盟を傷つけ、国家の安定や経済的繁栄を根本的に失うような独自核武装の選択肢は現実政治の中ではあり得ない。

■公式見解ではない 防衛庁のコメント

防衛庁のシンクタンク的な機関として、防衛研究所ではこれまで研究者独自の視点から自由な研究が行われており、この文書はその一環としてまとめられたもの。意図や経緯は不明だが、防衛庁の公式見解ではなく、政策に反映されたこともない。核兵器を造らないなどの非核3原則はわが国の防衛政策の基本であり、今後も堅持する。

■核武装

原爆、水爆などの核兵器はミサイルや爆撃機、原子力潜水艦といった運搬手段と組み合わされ、冷戦下で配備、増強された。米ソ間の全面核戦争に対応する戦略核兵器は、大陸間弾道ミサイルと潜水艦発射弾道ミサイル、爆撃機で構成。一方、隣国間などの限定された戦場向けの戦術核兵器は、短距離ミサイルなどで使用される。戦域核兵器はその中間で、当時のソ連と西ヨーロッパ間での使用が想定され、中距離ミサイルが主な兵器体系だった。(西日本新聞 2004/10/03)

「日本は核兵器保有国に」=政府研究院、02年に報告書−中国
【北京26日時事】中国政府の直属研究機関「中国工程院」が、「日本は原材料、技術、資金の面で、核兵器製造への障害はない。1年以内に使用できる核兵器を造ることも可能であり、核兵器保有能力があると認識されている」などとする報告書を作成していたことが26日分かった。中国が日本の軍事大国化に懸念を強める背景に、日本の核兵器保有への警戒感があるのは確実だ。
日本政府も、近く策定の「防衛計画の大綱」で中国軍近代化の脅威に「注目する」と指摘。双方で強まる相手国への警戒感が、日中関係に悪影響を及ぼす可能性は高い。
報告書は、中国工程院の工程物理研究院科学技術情報センターが2002年に「核武器と高技術」と題して作成。約60ページのうち9ページにわたって日本の核原料、核兵器の設計・製造能力などについて詳述している。(時事通信 2004/11/27)

日本の軍拡競争参加を懸念 米専門家
(CNN) 北朝鮮の核問題をめぐる朝鮮半島情勢や、台湾海峡問題を巡り、日本の関わり方を懸念する声が米国のアジア研究家からあがっている。
中国の経済成長について著書「China Inc」を発表したアジア研究家テッド・フィッシュマンさんはCNNに対して、「核兵器をもった日本は近い将来、全くあり得ない話では決してない」と述べた。
ロサンゼルスからCNNの取材に応じたフィッシュマンさんは、日本が北朝鮮の核兵器開発をめぐり、中国による北朝鮮説得を期待する一方で、その見返りとして中国が求めている武器禁輸の解除を強く警戒していると指摘。
欧州連合(EU)はフランスを中心に、1989年の天安門事件を機にした対中武器禁輸を解除する方向で動いており、ブッシュ米政権はこれに猛反対している。
フィッシュマンさんは、日本は苦しい立場に立たされていると話す。「核兵器をもった北朝鮮は日本にとって大問題だが、中国の軍事力強化も日本にとっては問題だ」
さらにフィッシュマンさんは、北朝鮮の核保有を前にして、日本も核兵器の保有を目指すかもしれないと指摘。「北朝鮮の核兵器を目の前につきつけられて、自前の核兵器を蓄える必要があると日本が考えるようになるのは、そう遠くない話しだ」
朝鮮半島情勢以外に台湾海峡問題が、アジア情勢をさらに複雑にしている。CNNの北京特派員スタン・グラント記者は、日米の国防・外務閣僚が日米共同声明で、「台湾海峡をめぐる問題の対話を通じた平和的解決を促す」と共同歩調を表明したことが、事態の混乱に拍車をかけたと伝えている。
共同声明が発表されると中国政府はただちに、「内政干渉」と反発するコメントを発表した。
朝鮮半島や台湾海峡の情勢を背景に、日本を含めたアジア諸国の軍拡競争が懸念される要因のひとつは、日本の国内情勢だ。日本国内では近年、異論の多い防衛上の問題について、以前よりも自由に議論する風潮が目立ってきている。
日本政府は昨年12月、新防衛計画大綱と中期防衛力整備計画を閣議決定。新大綱は自衛隊の海外活動を国土防衛と並ぶ主な任務のひとつに初めて位置づけ、テロや弾道ミサイル攻撃に対抗する即応性と機動性を重視する姿勢を明確にした。
また小泉純一郎首相は今月2日、衆議院予算委員会で憲法改正について質問され、憲法に「自衛隊」ではなく「自衛軍の明記に賛成だ」と言明した。
日本政府は北朝鮮によるミサイル攻撃の懸念が高まるなか、03年12月に「弾道ミサイル防衛システムの整備」について閣議決定。日本政府は当時、「テロや弾道ミサイルの新たな脅威等に実効的に対応しうる必要な体制を整備」する必要性を理由にあげ、米国開発のシステム導入を決定。07年の初期配備と11年の歓声を目指している。(CNN 2005/02/21)

岸政権の核武装を懸念 米CIAなど機密報告書
【ワシントン2日共同】米中央情報局(CIA)など米情報機関が1957年にまとめた機密報告書「国家情報評価」の中で、岸信介政権が「5年以内に核製造計画のための措置に出るだろう」と予測し、日本の独自核武装に一時期、強い懸念を抱いていたことが2日分かった。
シンクタンク「国家安全保障公文書館」のビル・バー研究員が情報公開法で入手した同報告書(57年6月18日付)に明記されていた。
CIAなどは日本の強い反核感情などを踏まえ1年後にはこうした見方を修正するが、報告書は57年に登場した「タカ派」の岸政権に対し、アイゼンハワー政権内の一部に強い警戒心があったことを物語っている。
報告書は、能力的に10年以内に独自核武装が可能な国としてフランス、カナダ、スウェーデンを列挙。その次に西ドイツを挙げ、日本については、64年に核実験に成功する中国と同列に扱い「恐らく核開発を模索する」と結論付けた。
背景として報告書は「影響力ある保守エリートが、日本防衛とアジアでの主導的な役割確立のため独自核開発は不可欠とみている」と指摘。岸政権が「核開発への世論の支持」を得るため指導力を発揮すると予測した。
CIAなどは約1年後の58年7月に新報告書をまとめ、日本の反核世論などを理由に「独自核開発に動くことはないだろう」と内容を大幅に修正した。日米安全保障条約改定へ向けた折衝が始まり、米側が岸政権の現実的な安保観を把握し見方を変えたとみられる。(共同通信 2005/06/02)

「日本3か月内に核製造可能」30年前、英政府大騒ぎ
【ロンドン=飯塚恵子】29日に公開された英機密公文書によると、1975年、日本の科学技術庁(当時)の原子力担当課長が在京の英国大使館に「日本は3か月以内に核兵器の製造が可能」と語り、この情報を基に英政府内が一時大騒ぎになったことが分かった。
75年6月26日付「日本の核潜在能力」と題された在日大使館からの公電によると、この課長は核武装可能発言のほか、「複数の装置を製造できる」と示唆。また、韓国についても「2年以内に核武装できる」と説明したという。公電は「もし事実なら、日本はすでに兵器の綿密な設計、重要部品を作れる特別な機械、さらにプルトニウムの抽出技術を持っていることになる」と緊迫して伝えている。
英外務省は緊急に、省内の軍縮部門や軍事専門家などに日本の核能力の調査を指示。約半月後、「技術的には、日本が近い将来、中国やソ連への抑止力として核兵器製造に着手できる能力はあるが、現在の日本の外交政策や、核物質を安定確保できない状況を考慮すれば考えにくい」(7月7日付)などの評価報告があがり、「発言は大げさだった」(同11日付)と結論づけられた。
同じく29日に解禁された英国のスパイ組織を束ねる統合情報委員会(JIC)の75年4月の報告でも「80年代には問題になると見ている」と分析されており、当時は日本の核武装の可能性が国際的に警戒されていたことをうかがわせる。(読売新聞 2005/12/29)

「日本の核武装に懸念」1974年にキッシンジャー氏
1970年代の米外交を主導したヘンリー・キッシンジャー氏が大統領補佐官と国務長官を兼務していた74年、インドが地下核実験に踏み切った直後に、日本が核開発に乗り出すとの認識を表明、独自核武装の動きを懸念していたことが3日、機密指定を解除された米公文書から分かった。
日本が当時、核拡散防止条約(NPT)を批准していなかったことなどが情勢分析の背景にあったとみられる。
フォード大統領は翌75年、三木武夫首相との首脳会談で初めて日本への「核の傘」供与を文書で確約するが、日本の核武装に対するキッシンジャー氏の懸念が影響を及ぼした可能性がある。
文書は、インドの核実験から3日後の74年5月21日にシリアで行われた同国のアサド大統領とキッシンジャー国務長官の会談録。シンクタンク「国家安全保障公文書館」が国立公文書館で発見した。
会談録によると、アサド大統領がインドの核実験の評価を尋ねたのに対し、国務長官だったキッシンジャー氏は「パキスタン、中国を神経質にするだろう」と発言。
さらに同氏は「日本も核を開発すると思う」と指摘。「80年までに日本の軍事力は甚だしく増大するだろう。核に対する大衆の感情も克服する。日本の歴史は実に好戦的だ」と語った。(共同)(産経新聞 2006/06/03)

北の挑発行為続けば、日本が核武装? 米紙社説
【ワシントン 有元隆志】北朝鮮が核や弾道ミサイルの開発をやめず、国際社会も手をこまぬくようだと、核武装も含め日本の軍事力増強は避けられない−。13日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルがこんな社説を掲げた。
社説は、国連安全保障理事会に提出された日本などによる北朝鮮制裁決議案に中国が拒否権行使を明言したり、韓国が日本国内の敵基地攻撃論を非難したりするのは、「日本に軍事力増強の必要性を認識させるだけだ」と警告した。
さらに「われわれは現状維持を望むが、北朝鮮の挑発的な行為は不安定な状況をつくりだしている」と指摘。「日本は米の核の傘の下にいる利益を理解している」と分析しながらも、「国家主義的な感情が高まれば、(核保有の)抑制は難しいこともありうる」との見方を示した。(産経新聞 2006/07/14)

日本が核兵器計画着手も=北核実験の悪影響警告−米下院報告書
【ワシントン3日時事】米下院情報特別委員会は3日、北朝鮮の軍事的能力やその影響を分析した報告書を公表、同国が核実験に踏み切った場合、「日本、台湾、そして恐らく韓国を独自の核兵器計画に駆り立てる可能性があり、地域安全保障に深刻な影響を与えかねない」と警告した。
北朝鮮の核兵器保有が北東アジア地域の核軍拡を招きかねないとの分析は珍しくないが、米議会の報告書が日本の独自核計画着手の可能性に具体的に言及するのは異例。(時事通信 2006/10/04)

核武装「ゼロから議論を」=キューバ危機に匹敵−中川自民政調会長
【ワシントン27日時事】訪米中の中川昭一自民党政調会長は27日、ワシントン市内で記者会見し、日本の核武装論について「情勢が急変する中で、日本の安全保障、抑止を真剣に考える必要がある。ゼロからのスタートだ」と述べ、北朝鮮の核に対する抑止力の選択肢として議論すべきだとの考えを改めて強調した。
これに先立ち中川氏は、ポートマン行政管理予算局(OMB)長官やクエール元副大統領、アーミテージ元国務副長官らと会談。北朝鮮の核実験によって、日本は1962年のキューバ危機に匹敵する切迫した状況に置かれていると主張し、核武装の議論に理解を求めた。(時事通信 2006/10/28)

核保有論議:中川氏「憲法上は持てる…現実は非核3原則」
自民党の中川昭一政調会長は30日夜、静岡県沼津市での講演で、自らが提起した核保有論に関して「憲法の政府解釈では、必要最小限の軍備の中には核も入るとしている。その片方で非核3原則がある。現実の政策としては核は持たないということになるが、憲法上は持つことができると政府は言っている」と述べ、改めて核論議の必要性を強調した。
核保有の可否をめぐる政府見解としては「自衛のための必要最小限度の範囲内にとどまるものである限り、核兵器であると通常兵器であるとを問わず、これを保有することは憲法9条2項の禁ずるところではない」(78年3月、参院予算委員会での内閣法制局長官)との答弁などがあり、中川氏の発言は政府見解を踏襲したものといえる。
これに関連し、塩崎恭久官房長官は31日午前の記者会見で、「憲法で定める『必要最小限度の自衛のための実力』と言う時、法理論的、技術的には核兵器も入るかも分からないということであり、それと政策とは別物だ。政府としては非核3原則は守ることを明確にしている」と述べた。(毎日新聞 2006/10/31)

核保有:政府が答弁書決定「自衛なら憲法に違反しない」
政府は14日の閣議で、「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度にとどまれば、保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」との見解を改めて示した答弁書を決定した。同時に「政府としては非核3原則の見直しを議論することは考えていない」とも強調した。鈴木宗男衆院議員(新党大地)の質問主意書に答えた。政府は従来「専守防衛的意味での核兵器は持てるが、別の法理や政策によってそうなっていない」との立場をとっている。(毎日新聞 2006/11/14)

「日本は核の倫理を語る責任」 IAEA事務局長
来日中の国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は3日、北朝鮮の核実験によって持ち上がっている日本国内での核保有論議の容認論に関して、「日本は唯一の被爆国であり、広島や長崎に大変な被害を受けた。日本は核の倫理を語る責任がある。これは本当の意味の政治の問題だ」と語った。一方、「日本政府からは非核政策を堅持すると聞いており、安心している」と述べた。京都大学(京都市)で開かれた対話フォーラムで、会場からの質問に対して答えた。
この中で、同氏は「もし日本が核兵器を得ようとすれば、韓国や台湾をはじめ、アジアのすべての国(の核兵器保有)を心配しなければならなくなる。我々は数十の核兵器保有国が存在する中で生きて幸せだろうか。それは文明の終わりの始まりだろう」と話した。(朝日新聞 2006/12/03)

核兵器保有の誘惑に駆られる日本・仏ルモンド紙が記事
14日付の仏ルモンド紙は「核兵器保有の誘惑にかられる日本」と題する解説記事を載せた。北朝鮮が核実験を実施した後の日本での一連の核保有論議を紹介。憲法9条改正問題とも絡め、「日本のリーダーは真の大国になるために(核兵器を含む)あらゆるものをそろえたいとひそかに考えている」としている。
「日本は非常に短期間に核兵器を造れるあらゆる手段を持っており、政治決定を待つだけだ」と指摘。政府の「現在、核保有の計画はない」との公式見解は「いずれ保有する可能性を排除していない」として、水面下では準備が進む可能性があるとの見方を示した。仏では安倍晋三首相についてタカ派的なイメージが強く、核兵器保有問題にはメディアだけでなく政府関係者の関心も高い。(パリ=安藤淳)(日本経済新聞 2006/12/14)

日本に非核堅持求める 国連総長メッセージ
【ニューヨーク=共同】日本の国連加盟から18日で50年となるのに合わせ、アナン国連事務総長が日本に寄せたメッセージの全文が17日、明らかになった。「世界で偉業を成し遂げるために国家が核兵器を保有する必要はない」と明言、北朝鮮による10月の核実験を受けて核保有論議が交わされている日本に非核政策の堅持を求めた。
今月末に退任するアナン氏は2期10年の任期中、米国主導のイラク戦争を阻止できなかったことが「最も残念」と振り返っている。軍国主義に走り第2次大戦に敗れた日本への最後のメッセージは、核保有論議を事実上けん制する内容となった。
メッセージは18日、天皇、皇后両陛下が出席され、東京都千代田区の九段会館で開催される日本の国連加盟50周年記念式典で、田中信明・国連軍縮局長(事務次長)が代読する。
メッセージは過去半世紀の日本について「民主的で、活力に満ち、繁栄した国へと目覚ましい変ぼうを遂げた」と評価。米国に次いで2番目に多い国連予算分担金を負担している日本が「人類の発展に世界各地で貢献してきた」と謝意を表した。
その上で、日本が「国連への積極的な取り組みと貢献」を外交政策の基本に据え、人道支援や核軍縮推進、京都議定書など地球温暖化防止に向けた努力、国連平和維持活動(PKO)に取り組んだとたたえた。
アナン氏は、日本が今後も国連改革で「大きな役割」を果たし、「将来の世代を戦争の惨害から救う」ことを前文でうたった国連憲章の「目標進展に必要な効率性と実効性の確保」に貢献するよう期待を表明した。

■メッセージ要旨…「人道支援今後も」

日本は(過去50年間に)民主的で、活力に満ち、繁栄した国へと目覚ましい変ぼうを遂げ、人類の発展に世界各地で貢献してきました。
国連への積極的な取り組みと貢献は日本の外交政策の基本原則となりました。人道支援に対する日本の貢献は、世界の核軍縮を推進する長年の努力や地球温暖化防止に向けた力強い努力、国連平和維持活動(PKO)へのさらに強力な支援とともによく知られています。
こうした支援は寛大で一貫した資金の拠出にとどまりません。実際のところ、日本は多国間主義や民主主義、さらに紛争予防や人権分野での第一人者として、世界に知られているのです。
国連の活動への日本の貢献は始まったばかりだと確信しています。日本が今後の国連改革で大きな役割を果たし、国連憲章の目標進展に必要な効率性と実効性の確保にさらに貢献するよう期待します。世界で偉業を成し遂げるために国家が核兵器を保有する必要はないのです。
私が事務総長を務めたこの10年間、多大なご協力をいただいた日本政府と国民に感謝の念を表したいと思います。今後も日本の方々が国連で一層重要な役割を成功裏に果たすよう祈念します。(ニューヨーク・共同)(中日新聞 2006/12/18)

日本の核武装の可能性示唆・米情報機関年次報告書
【ワシントン=共同】米情報機関を統括するネグロポンテ国家情報長官は11日、上院情報特別委員会に提出した「脅威」に関する年次報告書で、北朝鮮が今後も核開発を進め、脅威が増大した場合、「他の北東アジアの国」が核開発に踏み切る可能性があるとの認識を示した。国名は明記していないが、直接的な脅威にさらされる日本を念頭に置いているとみられる。
報告書は北朝鮮を「最も懸念のある国」と指摘。米情報機関が昨年の北朝鮮の核実験やミサイル発射について、まとまった評価分析報告を公表したのは初めて。(日本経済新聞 2007/01/12)

「日本が多数の核製造も」キッシンジャー氏懸念 74年の米公文書
フォード米政権の国務長官だったヘンリー・キッシンジャー氏が1974年8月、「日本は現行の核拡散防止条約(NPT)の枠組みで、多数の核爆弾を製造することができる」と述べ、日本の核武装に強い懸念を示していたことが7日、機密指定を解除された米公文書で分かった。
70年代の米外交を主導したキッシンジャー氏は、74年5月にシリアのハフェズ・アサド大統領(当時)との会談でも日本の核武装に言及したほか、最近の論評でも日本の核保有の可能性を指摘。今回の文書は、同氏が日本に対して根深い不信感と警戒感を抱いていたことを物語っている。
国家安全保障会議(NSC)の会談記録(極秘)によると、キッシンジャー氏は同年8月21日にオーストラリアのショー駐米大使(当時)と会談し「私は日本が核を保有すると常に信じてきた」と言明した。
会談はインドによる初の地下核実験の3カ月後で、同氏は核拡散を懸念する大使に、NPTは核兵器を製造し爆発させた国だけを「核保有国」と定義していると説明。日本が核実験をしないまま「多数の核爆弾」を獲得する可能性に言及した。
日本が開発中だった気象衛星打ち上げロケットについても「気象観測だけが目的ではないはずだ」と述べ、核弾頭を運搬できる軍事ミサイルへの転用の恐れを示唆した。(共同)(産経新聞 2007/04/07)

核密約、通話記録を発見 沖縄返還交渉
【東京】沖縄返還交渉(1969年)の際、佐藤栄作首相の密使を務めた若泉敬氏(元京都産業大教授、96年死去)とキッシンジャー米大統領補佐官(当時)が核持ち込みに関する日米密約について話し合った通話記録などが米国立公文書館で見つかっていたことが19日までに分かった。若泉氏が核密約について暴露した著作「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」の内容を裏付けるもので、両氏の通話記録の存在や若泉証言に関する公式文書が発見されたのは初めて。
若泉氏の著書出版後も日本政府は核密約について「存在しない」と否定し続けているが、信頼性を裏付ける物証の発見で、苦しい立場となりそうだ。
資料を見つけたのは日本大学の信夫隆司(しのぶたかし)教授。内容は2種類の通話記録89点や若泉氏がキッシンジャー氏に対し送ったメモの一部など。メモの中には黒塗りで非開示にされているものもある。
若泉氏の著書によると、若泉氏は「ヨシダ」という偽名を使ってキッシンジャー氏と接触。盗聴の危険を避けるために核問題については「項目1」、核持ち込みについて決めた合意議事録は「小部屋」などの暗号を用いたとされる。
信夫教授が入手した通話記録でも「ヨシダ」の偽名や「小部屋」などの暗号が頻出。暗号の取り決めについて記したキッシンジャー氏直筆メモも見つかった。合意議事録に日米両首脳がサインするため極秘にやりとりした会話も著作の記述とほぼ一致している。
信夫教授は「核密約の存在を裏付ける客観的で明確な証拠だ。沖縄の米軍基地を自由に使えることが返還の前提だった実態が浮き彫りになった」と強調。我部政明琉球大教授は「生々しい通話記録だ。若泉氏の発言に対する米側の受け止め方や、米側が当時日米で摩擦になっていた日米繊維問題の解決にあせる様子も読み取れる」と話した。(琉球新報 2007/06/20)

沖縄の核抜き返還に反対 佐藤ニクソン声明で周辺国
沖縄の「核抜き・本土並み」返還に合意した1969年11月21日の佐藤栄作首相とニクソン米大統領の共同声明をめぐり、東アジア有事の際に米軍の足かせとなることを危惧(きぐ)した当時の韓国や中華民国(台湾)が「核抜き・本土並み」返還に強く反対、沖縄の米核兵器を温存し、米軍が基地を自由に使う権利を保持するよう日米に迫っていたことが20日、機密指定を解除された米公文書から明らかになった。
韓国などが冷戦時、ソ連や中国、北朝鮮など共産主義陣営の脅威にさらされていたとの背景がある。米国が「核抜き」返還に慎重姿勢を貫き、基地の自由使用にこだわった経緯は知られているが、その裏に日本の周辺国からの強い要請があったことが判明した。
公文書は法政大法学部の河野康子教授(日本政治外交史)が米国立公文書館で発見。69年4月12日付の中央情報局(CIA)文書によると、韓国は同月8日、駐韓米大使への覚書で「地域防衛における沖縄の不可欠の役割」を強調。日本への返還に伴う韓国防衛への悪影響に「懸念」を示した。
67年9月12日付の国務省文書によると、中華民国の魏道明外相は同年5月15日、返還による米軍の機能低下は「深刻な戦略、軍事上の問題を引き起こす」と米高官に警告。同文書は「中華民国は返還に反対している」と結論付けた。
在日米大使館からロジャース国務長官にあてた69年11月6日付の機密公電によると、韓国は同月5日、米軍基地が返還後「核撤去や米軍機の使用制限など『本土並み』になると共同声明で表明されれば、韓国防衛に大きな影響が生じる」と日本にも警告した。
佐藤、ニクソン両首脳はこうした主張も踏まえ、有事の際の核持ち込みを認めた「密約」を取り交わしたとされる。

<佐藤・ニクソン共同声明> 沖縄の施政権を1972年、米国から日本に返還することを確認した文書。当時の佐藤栄作首相とニクソン米大統領が合意、69年11月21日に発表された。日本側は国民の反核感情や政府の非核3原則から、沖縄の米核兵器を撤去し、日米安保条約に基づく事前協議制を返還後の沖縄にも適用する「核抜き・本土並み」を求め、採用された。声明は同時に、返還が「極東諸国の防衛のために米国が負っている国際的義務」を妨げないことを確認。両首脳は有事の際の核持ち込みを認めた「密約」を取り交わしたとされ、東アジア有事における米軍の行動の自由を確保した。(共同)(産経新聞 2007/11/21)

日本の核兵器保有の可能性を指摘…74年CIA解禁文書
【ワシントン=宮崎健雄】米中央情報局(CIA)が1974年に作成した核兵器拡散の見通しに関する文書で、米海空軍の分析として、日本が1980年代初頭にも核兵器の保有を決断する「強い可能性」があると指摘していたことが14日、わかった。
ただ、文書の中では、日本の核保有に否定的なCIAなどの分析も紹介し、両論併記の形となっている。文書は74年8月23日付で、米民間機関の請求で最高機密指定が解かれた。
文書によると、米国が74年5月のインドの核実験に強い反発を示さなかったことや、イスラエルやエジプトに原子炉や核燃料を提供したことから、米海空軍の情報当局は、当時の日本で安全保障の不安が一部に広がり、米国の「核の傘」の下にいることに懐疑的な考えも出ていると分析。今後、中国、ソ連(当時)との関係悪化や核拡散が進めば、日本の指導者たちは80年代初頭にも核保有の結論に至る可能性が高いとしている。(読売新聞 2008/01/15)

米国:日本もし核武装なら、常任理事国入りダメ──米議会調査局、報告書提出
【ワシントン及川正也】日本が核武装すればアジアの軍拡競争を招き、米国の核不拡散政策に打撃を与える──。米議会調査局はこのほど日本が核兵器開発を決めた場合の影響を分析した報告書をまとめ、議会に提出した。日本の核武装が「アジア軍拡」を触発するとの見方は従前からあるが、対中脅威論の高まりを受け、米国内でも「日本の核武装容認論」が浮上している現状を踏まえ、改めて検討が加えられた。
報告書は9日付。「短中期的には日本が核オプションを追求することはない」とする一方、日本が核武装する場合の背景として▽米中が冷戦時の米ソのように冷却化するか、急接近し戦略的関係や核管理で合意する▽北朝鮮が核保有したまま南北朝鮮が統一し日本を敵視する、などの安全保障環境の変化を例示。
日本が核兵器開発を決断すれば、「韓国や台湾などが核開発計画に着手し、多くの核保有国が生まれる」と指摘。その結果、核拡散防止条約(NPT)など不拡散体制は「修復不可能な打撃」を受け、日本は「核不拡散の先駆者として国際的名声」を失い、「国連安保理常任理事国入りの可能性はなくなる」と警告した。(毎日新聞 2008/05/24)

核廃絶、日本が主導を=ダライ・ラマ
チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は3日、北九州市で記者会見し、唯一の被爆国である日本は「その体験を基に、原爆使用を食い止めるという大いなる責任を果たすべきではないか」と述べ、核兵器廃絶に向けて日本が主導的役割を果たすよう訴えた。
ダライ・ラマは「原爆は2度と使用されてはならない。日本はイニシアチブを取って食い止めていくべき立場にある」と強調した。(時事通信 2008/11/03)

「核兵器 テロに効かず」
英退役高官の発言相次ぐ
【ロンドン=小玉純一】「核兵器は脅威克服に役に立たない」と英国の核兵器政策変更を期待する退役軍高官の発言が相次ぎ、注目されています。英外務省も4日、「核の影を取り除く 核兵器廃絶への条件づくり」と題する政策を発表します。
北大西洋条約機構(NATO)大西洋軍元最高司令官のジャック・シーハン米海兵隊大将はBBCラジオ4のインタビューで、「英国は、核兵器を捨てる最初の国連常任理事国となると近く発言すると思う。英国政府はそうする十分な理由があり、世界の先鞭(せんべん)となるだろう」(1月29日、BBC電子版)と発言しました。同氏はさらに、「そうなれば、なぜフランスが核兵器システムを持っているのかが問題になる」と述べ、英国の核兵器廃棄宣言は大きな国際的影響力を持つと予測しています。
英紙タイムズには、ブラモール元英陸軍元帥ら3人の元将軍が、「英国に核抑止力は必要ない」(1月16日付)と題して寄稿。「英国がテログループなどから核脅迫を受けた場合、英国の核兵器を、誰にどんな方法で使用するのか、また脅迫に使うのかが問われなければならない。われわれが現在直面している脅威、とくに国際テロに対する抑止力として核兵器はまったく役に立たない」と断言しました。
英国政府は、核抑止力を維持するとしながらも、核兵器のない世界をめざす立場を表明しています。ミリバンド外相は昨年12月8日、英紙ガーディアンに「核兵器のない世界」と題して寄稿。「核兵器のない世界という構想だけでなく、それを実現する方法も共有する地球的連合をつくる必要がある」と強調しています。(しんぶん赤旗 2009/02/05)

敵基地攻撃、法的に可能=能力保有には言及せず−麻生首相
麻生太郎首相は26日夕、北朝鮮のミサイル発射基地への先制攻撃を想定した敵基地攻撃能力について「一定の枠組みを決めた上で、法理上は攻撃できるということは昭和30年代からの話だ」と述べ、法的には可能との認識を示した。ただ、能力を保有すべきかどうかには言及しなかった。首相官邸で記者団に答えた。
自民党内には、北朝鮮の核実験を受け、攻撃能力の検討を促す声が出ているが、首相の発言はこうした動きを後押しすることになりそうだ。 
敵基地攻撃能力をめぐっては、安倍晋三元首相が国会で「検討、研究していくことは当然だ」と答弁。また、首相も外相当時の2006年、北朝鮮の弾道ミサイル発射に関連し、「核を抱えたミサイルが日本に向けられるなら、被害を受けるまで何もしないわけにはいかない」とテレビ番組で発言している。(時事通信 2009/05/26)

攻撃的ミサイル防衛を 中谷元防衛庁長官
自民党の中谷元・元防衛庁長官は26日、同党の会合で、北朝鮮の核実験を非難し「北の核の小型化が実現すると(核を搭載した)ミサイルが我が国本土に着弾することになる。安全保障上の現実的な脅威だ」と指摘した。その上で、「待ち受け型だけでなく、アクティブ(攻撃的な)ミサイル防衛も考えるべきだ。(ミサイルを発射する)敵基地攻撃を検討しなければいけない」と述べた。
中谷氏は会合後、記者団に、「イージス艦に巡航ミサイルを搭載して(弾道ミサイル発射を)阻止するのは憲法の範囲内だ。座して死を待つようなことではいけない」と語った。(産経新聞 2009/05/26)

核持ち込み密約、外務次官ら管理 首相、外相の一部に伝達
1960年の日米安全保障条約改定に際し、核兵器を積んだ米軍の艦船や航空機の日本立ち寄りを黙認することで合意した「核持ち込み」に関する密約は、外務事務次官ら外務省の中枢官僚が引き継いで管理し、官僚側の判断で橋本龍太郎氏、小渕恵三氏ら一部の首相、外相だけに伝えていたことが31日分かった。
4人の次官経験者が共同通信に明らかにした。
政府は一貫して「密約はない」と主張しており、密約が組織的に管理され、一部の首相、外相も認識していたと当事者の次官経験者が認めたのは初めて。政府の長年の説明を覆す事実で、真相の説明が迫られそうだ。
次官経験者によると、核の「持ち込み(イントロダクション)」について、米側は安保改定時、陸上配備のみに該当し、核を積んだ艦船や航空機が日本の港や飛行場に入る場合は、日米間の「事前協議」が必要な「持ち込み」に相当しないとの解釈を採用。当時の岸信介政権中枢も黙認した。
しかし改定後に登場した池田勇人内閣は核搭載艦船の寄港も「持ち込み」に当たり、条約で定めた「事前協議」の対象になると国会で答弁した。
密約がほごになると懸念した当時のライシャワー駐日大使は63年4月、大平正芳外相(後に首相)と会談し「核を積んだ艦船と飛行機の立ち寄りは『持ち込み』でない」との解釈の確認を要求。大平氏は初めて密約の存在を知り、了承した。こうした経緯や解釈は日本語の内部文書に明記され、外務省の北米局と条約局(現国際法局)で管理されてきたという。

密約問題に詳しい日米関係史研究者の新原昭治氏の話 核持ち込みに関する密約は存在しないと言い続けた政府の答弁が、全くの虚言であったことが裏付けられた。複数の元外務事務次官の証言により、政府内における密約の極秘管理の実態や、密約に縛られた安保外交の内実が初めて明るみに出たことは重大だ。非核三原則を口にする唯一の被爆国政府の行為かとあきれ果てる。米核戦略上、核持ち込みは核使用戦略の前提行動だ。日本国内における米軍の核作戦行動をひそかに認めてきた政府は「ヒロシマ、ナガサキを繰り返すな」という国民的悲願を踏みにじっている。核密約から半世紀。米国追随でない非核平和の道を真剣に追求すべき時だ。

<核の持ち込み> 米軍による核兵器の持ち込みは、1960年改定の日米安全保障条約第6条(米軍による施設・区域使用)に関して両国政府が交わした交換公文で「装備の重要な変更」に該当し、同条約で定めた「事前協議」の対象になるとされた。日本側に事実上の拒否権を付与する事前協議は一度も行われておらず、日本政府は「事前協議がない限り、寄港も含め持ち込みはない」との見解を堅持。しかし核艦船などの通過・寄港を事実上、事前協議の対象としない秘密合意内容を記した「秘密議事録」(密約)が安保改定時に交わされた。63年には大平正芳外相とライシャワー駐日大使がその内容を確認した。

<非核三原則> 核兵器を「持たず、つくらず、持ち込ませず」とする日本政府の基本政策。1967年12月に当時の佐藤栄作首相が国会で公式に表明。71年11月には衆院本会議で沖縄返還協定に関連して三原則順守を盛り込んだ決議を採択し「国是」とされた。ただ、日本の防衛政策は米国の「核の傘」に依存している上、米側の開示公文書から、核搭載した米軍の艦船や航空機の日本への立ち寄り容認で日米が秘密合意していたことが判明、原則との矛盾が指摘されてきた。(共同通信 2009/05/31)

元米長官、日韓の「核武装」警告 中国に関与要求
【ワシントン31日共同】キッシンジャー元米国務長官は5月31日放映のCNNテレビで、北朝鮮の核開発停止に向けた取り組みについて「中国が何もしなければ、韓国と日本は核兵器を保有する」と警告。東アジアに核軍拡競争が起きる可能性に言及し、中国が米国と協調して北朝鮮への圧力を強める必要性を訴えた。
キッシンジャー氏は、中国の立場について「北朝鮮への圧力が効かなければ無力と見なされる」と述べるとともに、逆に圧力が効けば北朝鮮が政治的に混乱し難民が国境に押し掛けるだろうと説明。その上で、中国に切迫した状況を認識するよう求めた。
一方で北朝鮮については、核計画こそが国家を束ねる力になっていると指摘し、実際に核兵器放棄に追い込まれれば「(金正日政権そのものが崩壊する可能性がある」と対応の難しさを強調。核武装を正当化させないため、米国は軍事攻撃しないとの確証を与えるべきだとの考えも示した。
米国の一部で浮上している、北朝鮮に親米政権を発足させ中国の影響力を封じ込めるとの考えについては「まったく実行不可能」と退けた。(共同通信 2009/06/01)

非核三原則:修正、核艦船寄港の容認検討 74年、田中内閣時 大河原元駐米大使証言
1974年11月のフォード米大統領(当時)の来日に合わせ、日本政府が非核三原則の「持ち込ませず」を事実上修正し、核搭載艦船の寄港を公式に認める方向で検討をしていたことがわかった。外務省アメリカ局長から官房長に就任していた大河原良雄元駐米大使(90)が毎日新聞の取材に明らかにした。核搭載艦船については60年安保改定交渉時に結ばれた寄港を認める密約がある。現職米大統領の初来日をきっかけに密約を解消し米国の核の傘を明確化する動きだったとみられる。
大河原氏によると、フォード米大統領の来日を控えた74年秋、田中角栄内閣の木村俊夫外相(故人)、東郷文彦外務事務次官(同)、大河原氏らによる少人数の外務省最高幹部の会合で、木村外相が「米国の核の傘の下にいる日本として(核搭載艦船の)寄港を認めないのはおかしい」と発言。「非核三原則の『持ち込ませず』は陸上のこと。寄港は持ち込みに含まれない」と解釈を変更する案について検討を指示した。
木村外相は「総理にあらかじめ(解釈修正の諾否を)聞いたが、総理は『じゃあ(修正を)やるか』と言っている」と、田中首相が了承していることも伝えた。しかし、フォード氏来日直後の同年11月26日、田中首相は金脈問題などの責任を取り退陣表明、12月9日に三木武夫内閣が発足。木村氏に代わって宮沢喜一氏が外相に就任、話はそのまま立ち消えになったという。
政府の公式見解は、寄港も「持ち込ませず」の対象で「米側から事前協議の申し入れがない限り、核は持ち込まれていない」とするもの。しかし、74年9月にラロック退役米海軍少将が「米艦船は核兵器を積んだまま日本に寄港している」と証言。その一方で当時、米空母ミッドウェーが横須賀を母港にしており、米大統領の来日にあたって問題が焦点になれば日米関係が混乱する可能性もあった。外務省最高幹部の会合は、こうした状況を踏まえてのことだったとみられる。【須藤孝】

<非核三原則> 佐藤栄作首相が67年12月の国会答弁で「核の三原則、核を製造せず、核を持たない、持ち込みを許さない」と表明。71年11月に可決された国会決議で「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずの非核三原則を順守する」と明記され「国是」とされている。(毎日新聞 2009/07/08)

核搭載艦寄港 外務省に密約本文 元条約局長が証言
外務省条約局長などを務めた元同省幹部が10日、毎日新聞の取材に対し、1960年の日米安保改定交渉の際に合意した核搭載艦船の日本寄港を認める密約本文が、外務省内に保管されていたことを明らかにした。寄港密約は60年1月6日に、当時の藤山愛一郎外相(岸信介内閣)とマッカーサー駐日大使が結んだもので、外務省の元担当幹部が密約管理の実態を詳細に証言したのは初めて。
この幹部は密約については、米側で公開された公文書と同じものとしたうえで、英文で藤山、マッカーサー両氏の署名もあったと証言した。日本文も添付されていたという。
63年4月4日に当時の大平正芳外相(池田勇人内閣)とライシャワー駐日大使が、米大使公邸で上記の密約本文を再確認し、大平外相が「持ち込みは核の搭載艦船の寄港・通過には適用されないことになる」と認めたことを示す日本側の会談記録も保管されていたという。
さらに60年の日米安保改定交渉に外務省アメリカ局安全保障課長(当時)としてかかわった東郷文彦氏(後に外務事務次官、駐米大使)が密約の解釈や交渉経過などについて詳細にまとめた手書きの記録も残っていたとしている。
その手書き記録は、当時の外務省の書式である2行書いては1行空ける方式で書かれ、青焼きコピーが繰り返されて見えにくくなっていたという。村田良平元外務事務次官の証言でわかった事務次官引き継ぎ用の日本語の文書も含まれている。
これらの文書は外務省条約局(現国際法局)とアメリカ局(現北米局)で保管していた。
この幹部は、北米局長、条約局長らの幹部はこれらの密約文書を把握していたと指摘。ただ、01年4月の情報公開法の施行に備えるため「当時の外務省幹部の指示で関連文書が破棄されたと聞いた」と証言している。【須藤孝】

◇外務省、打算と保身

外務省条約局長を経験した元同省幹部が自ら確認した日米密約文書について詳細に証言した。外務事務次官経験者らが核搭載艦船の日本への寄港を認める密約について証言する一連の動きと無関係ではない。
こうした動きの背景には、同省有力OBの冷徹な打算もあるとも言える。北朝鮮の2回目の核実験やオバマ米大統領の新しい核政策を受けて、発言しにくい現役外務官僚に代わって、「米国の核の傘」を強化するメッセージを発したいという思惑も透けて見える。
それに加え、密約公開を掲げる民主党による政権交代の可能性が出てきていることから、先手を打ち密約をなし崩しに認めておこうという保身的側面もある。
しかし、現役、OB一体となって身を切るような密約隠しの検証を続けなければ、国民から理解は得られないのではないか。
ところが元外務事務次官の1人は「情報公開制度ができた時(01年4月)に、口頭了解など国と国の約束かどうか法的にはっきりしないものは整理した」と暗に破棄したことを認めた。
独立間もない日本の国力を考えれば、寄港密約を結んだ当時の外交を一方的に非難できないかもしれない。しかし、冷戦が終わって約20年が経過しても密約隠しを続けることが、日米同盟の深奥できしみを生じさせているのも確かだ。
日本を含めた北東アジアの核を巡る環境は緊張を高めており、日本は核政策について真剣に考える時に来ている。密約の証言はOBに任せ、政府・外務省の現役幹部が「密約はない」と言い続けるのは今後の日米関係にとって大きなマイナスだ。【須藤孝】(毎日新聞 2009/07/11)

核持ち込み密約:河野外務委員長「核密約を確認」 元次官と面会
自民党の河野太郎衆院外務委員長は11日、日米安保条約改定(1960年)時の両政府による日本への「核持ち込み密約」を認めた村田良平元外務事務次官と面会し、「核密約はあった」との証言を確認したことを明らかにした。
河野氏は11日、毎日新聞の取材に「村田氏など密約を知りうる複数の人と会い、確認した。密約はなかったとする従来の政府答弁を、認めるわけにはいかない」と指摘。次の外務委理事会で、委員長として政府答弁の修正を求める決議を提案する意向を明らかにした。ただ、見直しには、与党内にも慎重論が根強い。【犬飼直幸】(毎日新聞 2009/07/11)

ベルギー:「非核三原則」法制化へ 米の配備困難に
【ブリュッセル福島良典】市民に甚大な被害を及ぼすクラスター爆弾と劣化ウラン弾の禁止法を世界で初めて制定したベルギーで、核爆弾の使用、製造などを禁止する議員立法の準備が進められていることが分かった。一連の禁止法制定を推進してきたフィリップ・マウー上院議員(65)が核兵器禁止法案を9月初旬に議会に提出すると毎日新聞に明らかにした。オバマ米大統領が「核兵なき世界」の目標を掲げて核軍縮に取り組む中、核廃絶の法整備を目指す国際的な動きが広がる可能性がある。
禁止法案は核爆弾など軍事目的での核物質の国内での使用、製造、貯蔵を禁止する内容になる見通しで、ベルギー版の「非核三原則」法制化に相当する。ベルギーは非核保有国だが、北大西洋条約機構(NATO)加盟国として米軍の戦術核兵器が配備されており、禁止法ができれば、ベルギー管轄下の基地での核兵器貯蔵は原則、禁止される。
米科学者連盟(FAS)によると、ベルギー北部の同国空軍クライネ・ブローゲル基地には推定10〜20発の米軍のB61核爆弾がある。仏軍事シンクタンク「戦略研究財団」によると、2国間協定で核爆弾の安全管理や使用に際しての手続きなどが定められており、禁止法が成立すれば、協定の見直しが必要となるとみられる。
ベルギー政府は米軍戦術核の存在を「肯定も否定もしない」立場だが、昨年1月にはデクレム国防相が配備を認める発言をした後、撤回した。配備されている戦術核は欧米のきずなを象徴する政治的な意味合いが濃い。
ベルギーでは上下両院が05年、米戦術核の段階的撤去を求める決議を採択するなど、政界でも軍縮推進論が強く、禁止法案は可決の公算が大きい。禁止法案では、ベルギー国内に本店・支店を置く金融機関は核兵器の製造・開発への投融資や関連金融商品の取り扱いが禁じられる。
欧州ではベルギーのほか、ドイツ、オランダ、イタリアに米軍戦術核が配備されており、ベルギーで禁止法が成立すれば、撤去を求める動きが他国に波及する可能性がある。(毎日新聞 2009/07/19)

田母神氏が広島で講演 「被爆国として核武装すべき」
原爆の日の6日、政府見解の歴史認識を否定する論文を公表して更迭された田母神俊雄前航空幕僚長が広島市で講演し、「唯一の被爆国として、3度目の核攻撃を受けないために核武装すべきだ」と主張した。
日本会議広島が主催し、演題は「ヒロシマの平和を疑う」。参加者は講演に先立ち君が代を斉唱し、黙とうした。
田母神氏は「2020年までの核兵器廃絶は夢物語」と、秋葉忠利広島市長の平和宣言を批判。「核保有国同士は相手からの報復を恐れるため、先制攻撃は絶対にしない。国を守るため、日本も核兵器を持つべきだ」と持論を展開した。
秋葉市長は6月に「被爆者や遺族の悲しみを増す結果になりかねない」として、日程の変更を要請。県内の被爆者7団体も7月、連名で抗議文を送ったが、田母神氏や主催者は「表現の自由だ」などと応じなかった。
会場周辺では、田母神氏の主張に反対する横断幕を掲げ、シュプレヒコールを上げる団体と、右翼の街宣車が言い争う一幕もあった。(共同通信 2009/08/06)

「核密約、現在も有効」 元政府高官が新証言
米軍核搭載艦船の日本への領海通過・寄港を黙認した核密約問題に絡み、首相官邸で外交政策立案に関与した元政府高官は1日、密約の存在を認めた上で「日本が『核の傘』に守られている以上(通過・寄港を認める)取り決めがあるのは当然」と言明。「(日米間で核密約を)殺したわけではない」とも述べ、密約を記した「秘密議事録」は現時点でも外交上有効との見解を示した。
匿名を条件に共同通信に語った。
元高官の証言は核密約の存在を新たに補強し、歴代保守政権が通過・寄港を黙認してきた背景に、「核の傘」を最優先する政策判断があったことを明確に認める内容。核密約が現在も有効だとしていることから、密約の全容解明を掲げる次期民主党政権は今後、難しい対米交渉を迫られる可能性が出てきた。
元高官は、米国が冷戦終結後、核搭載艦船を日本に寄港させていない経緯から「(秘密議事録は)実態として死文化した」とする一方、仮に民主党政権が核密約を公開しても密約が失効するわけではないと語った。
さらに、朝鮮半島有事に米軍が日米安全保障条約上の「事前協議」を経ずに在日米軍基地を使用できるとした密約に関しても、消滅したわけではないと述べ、核密約同様、現在も有効との認識を示した。
元高官は「日本が守られているのに(核の通過・寄港を)ダメとは言えない」とし、「核の傘」堅持のために核密約が不可欠だったと指摘した。(共同通信 2009/09/01)

核密約は歴史的事実 米国務次官補、日本の調査に理解
来日中のキャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は18日、都内の米大使館で記者会見し、鳩山政権が真相解明を目指す核密約問題について「米側の開示文書は約50年前の日米間の合意に関する史実を明確に描いている」と述べ、核密約は歴史的事実との見解を表明した。
岡田克也外相との会談後に会見した次官補は「(核密約問題が)岡田氏と鳩山政権にとっていかに重要かを岡田氏は強調した」とも述べ、鳩山政権が現在進める核密約調査に理解を示した。
米側は既に、核搭載艦船の日本通過・寄港を容認した1960年1月署名の「秘密議事録」の草案や、同議事録が実際に署名された事実を確認する公文書を開示しており、次官補の発言は核密約を歴史的事実と位置付ける米側の従来姿勢を反映している。
次官補は一方で「(核密約は)基本的に過去の話だ」とし、「この問題が日米関係の強固さを損なわないやり方で処理されることを強く求める」と言明。日本の歴代政権下で築かれた良好な日米同盟関係に悪影響を与えない形で、日本で政治争点化した核密約問題の決着が図られるベきだとの考えを示唆した。
米公文書によると、核を搭載した米軍空母や潜水艦などが50年代から横須賀や佐世保に寄港していたが、米国は冷戦後、日本などに展開する海軍艦船から核を撤去。現在日本には核搭載艦船は寄港しておらず、日本への「核の傘」は大陸間弾道ミサイル(ICBM)などで担保されている半面、米国は朝鮮半島有事における潜水艦への核再搭載の選択肢を排除していない。(共同通信 2009/09/18)

密約関連文書をネット上に公開 米ジョージ・ワシントン大
【ワシントン=有元隆志】米ジョージ・ワシントン大の国家安全保障公文書館は13日、米軍核搭載艦船の日本通過・寄港を黙認する日米の「核密約」に関し、情報自由法に基づいてこれまでに入手した米政府の秘密文書を公開した。
機密指定が解除された文書のなかには、1960年の日米安保条約改訂の際、朝鮮半島有事で米軍が日本国内の基地から出撃する場合、日本との事前協議を必要としない内容を記したハーター国務長官用の説明資料、ライシャワー駐日米大使が63年4月に大平正芳外相(肩書はいずれも当時)と会談し、「核持ち込み」の定義について核兵器の陸揚げ・貯蔵に限ると説明した内容を伝えた公電などが含まれている。
同館では外務省内で行われている「密約」に関する調査を支援するため公開したとしている。同時に米政府に対し、機密指定解除されていない秘密文書がなお存在するとして、解除するよう求めている。(産経新聞 2009/10/14)

64年に大平氏と核密約を再確認 米、外相交代で危機感
核搭載した米軍艦船の日本領海への通過・寄港を容認した核密約に絡み、米政府が1964年、日本の閣僚が核ミサイルを積んだ米潜水艦の寄港を認めないと発言したことに危機感を募らせ、自民党有力者の大平正芳氏と密約内容を再確認していたことが1日、解禁された米公文書から明らかになった。
当時のライシャワー駐日米大使はこの前年、外相だった大平氏と核密約を記した「秘密議事録」の解釈を確認する作業を行っていたが、64年7月に大平氏が内閣改造で外相を退任。改造後の新任閣僚が密約をほごにするかのような国会答弁を行ったため、大使が大平氏に再確認を求めた経緯を伝えている。
核密約をめぐっては68年にも、日本側の認識に疑念を抱いたジョンソン駐日大使が日本側に内容を確認しており、今回の公文書から、日米間で確認作業が繰り返されていた実態が判明した。当時の日本側の引き継ぎに問題があった可能性があり、外務省が進める密約調査でも、こうした経緯が焦点となりそうだ。
公文書は日米関係史家の新原昭治氏と米シンクタンク「国家安全保障公文書館」が入手した。
64年9月4日付のバンディ国務次官補あての秘密メモは、7月に就任した小泉純也防衛庁長官ら新任閣僚が対潜水艦核ミサイル「サブロック」を搭載した原潜の寄港は「核持ち込み」に当たり、日米安全保障条約上の事前協議の対象となると発言したことを問題視。
さらに「これらの発言は(核搭載した)軍艦船の寄港や航空機の飛来は事前協議を要しないとした両国間の秘密了解と明らかに矛盾する」と指摘し、日本政府の「可能な限り高いレベル」と接触し「深刻な懸念」を伝えるよう在日大使館に指示した経過を記している。(共同通信 2009/11/01)

核持ち込み密約:沖縄持ち込みを認める文書、佐藤元首相宅に 日米首脳の署名
沖縄返還(1972年)の交渉過程で、当時の佐藤栄作首相とニクソン米大統領が69年11月に署名した、沖縄への有事の際の核持ち込みを認める密約文書を、佐藤氏の遺族が保管していたことが22日、明らかになった。草案などで密約の内容はすでに分かっていたが、両首脳の署名がある実物の存在が明らかになったのは初めて。
密約は69年11月にワシントンで行われた日米首脳会談の際、両首脳がひそかに署名した「合意議事録」。返還交渉で佐藤氏の密使を務めた若泉敬・元京都産業大教授(故人)が94年に著書でその草案の写真とともに明らかにした。今回の文書は文末にフルネームで署名があり、2通作成され、日米首脳がそれぞれ保管するとした本文の日本保管分とみられる。若泉氏は著書で「イニシャル署名する予定だったが、フルネームで署名したと佐藤首相から知らされた」と記述しており、符合する。
この密約は現在、岡田克也外相が進めている密約調査でも対象になっており、調査では「外務省には保管されていない」という結論になっている。密約をめぐるやりとりは外務当局とは別に若泉氏の「密使」ルートで行われたため、外務省には保存されていないとみられる。しかし、両首脳の署名が残っており、米側は有効な公文書と見なしている可能性が高い。
佐藤氏次男の佐藤信二元通産相によると、元首相から引き継ぎなどはなく、75年の元首相の死去後、元首相が使用していた書斎机を整理した際に見つかった。机は首相在任時に首相公邸で使っていて、その後、東京・代沢の自宅に運ばれたもので、元首相が文書を保管してそのままになっていたとみられる。
佐藤元通産相によると、文書を発見した際に、密約が結ばれた69年当時駐米大使だった下田武三氏(故人)ら複数の外務省OBに「(外務省の)外交史料館で保管したい」と相談したが「公文書ではなく、私文書にあたる」と指摘されたという。佐藤元通産相は「保管してほしいと思ったが、二元外交を否定しているのだと感じた」と話している。【中澤雄大】

07年にこの密約の存在を明記した米公文書を発見した日大法学部の信夫隆司教授(日米外交史)の話 若泉氏が著書に写真を掲載した草案は日付が69年11月21日だが、今回の文書の日付は(実際に署名されたとされる)11月19日になっており、書き直されている。署名がある本文が明らかになるのは初めてだ。

<沖縄核持ち込み密約> 1969年11月にワシントンで行われた日米首脳会談時に、当時の佐藤栄作首相とニクソン米大統領が署名した。首脳会談では沖縄の「核抜き本土並み」の返還が合意されたが、同時に密約で有事の際の沖縄への核兵器の再持ち込みを認めた。密約では、米国が核兵器を持ち込む事前協議を日本政府に申し入れた場合、「(日本が)遅滞なく必要を満たす」と明記しており、核持ち込みの事前協議の意味を事実上空洞化する内容となっている。若泉敬氏が94年に出版された著書「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」で内容や経緯を明らかにした。(毎日新聞 2009/12/23)

核密約、国会対策でうその答弁 元次官証言テープ見つかる
米軍核搭載艦船の日本への通過・寄港を日米安全保障条約上の「事前協議」の対象外とした核密約に関連し、密約が交わされた1960年に外務事務次官だった山田久就氏が生前、野党の追及をかわす国会対策の必要上、「通過・寄港も事前協議の対象に含まれる」とうその答弁を当時からしていたと証言した録音テープの存在が22日、明らかになった。
核密約をめぐり、日米間の事前協議対象となる「核持ち込み」に、通過・寄港が含まれるか否かで日米間に「解釈のずれ」(元外務省幹部)があったとの見方もあるが、山田氏の証言は、そうした食い違いが存在せず、日本側に密約の認識があったことを明確に示している。同氏は密約を記した「秘密議事録」の作成にも関与しており、密約問題を検証する外務省有識者委員会の議論に大きな影響を与えそうだ。
証言テープは、山田氏にインタビューした原彬久・東京国際大大学院教授(国際政治学)が81年10月14日に収録した。
山田氏は50年前の60年1月19日署名の改定安保条約をめぐる交渉で、通過・寄港の扱いが「(日米間で)問題にもならなかった」とした上で、「核持ち込み」とは「(日本の)陸上に大きな核兵器を持ってくる」ことを意味し、通過・寄港は「入っていない」と説明。安保改定の時点で通過・寄港が事前協議の対象外だったと「はっきり言っていい」と断言した。(共同通信 2010/01/22)

米軍が66年に本州へ核持ち込み 沖縄から、元当局者
【ワシントン共同】ライシャワー元駐日米大使(在任1961〜66年)の特別補佐官を務めたジョージ・パッカード氏が、米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」最新号で、米軍が1966年に沖縄から本州へ核兵器をひそかに持ち込んでいたと明らかにした。
パッカード氏は60年の日米安全保障条約改定時、米国の艦船や航空機が日本に立ち寄る際に核を搭載することを可能にする「密約」が結ばれたと指摘。66年の例については、具体的に本州のどこに、どれだけの量が持ち込まれたのかなどには言及していない。日本は67年12月に当時の佐藤栄作首相が国会で、核兵器を「持たず、つくらず、持ち込ませず」とする非核三原則を公式表明している。
日米両政府は安保改定の際に交わした交換公文で、米軍の核持ち込みについて「事前協議」の対象となるとした。日本側に事実上の拒否権を付与した形となっているが、米側から事前協議開催の申し入れが行われたことはなく、日本政府は「事前協議がない限り、寄港も含め持ち込みはない」との見解を堅持してきた。(共同通信 2010/02/24)

63年日米会談で密約化 核搭載艦船の立ち寄り容認
日米密約に関する外務省の有識者委員会の調査で1日、米軍核搭載艦船の立ち寄りを容認した核密約が、日米安全保障条約改定から3年後の1963年春、当時の大平正芳外相がライシャワー駐日米大使から「米軍核搭載艦船の通過・寄港は『持ち込み(英語のイントロダクション)』に含まれない」とする米側解釈を説明された秘密会談を経て密約化した経緯が明らかになった。
60年の安保改定時の状況に関しては日本側交渉担当者が米側解釈を認識しながらも、確認作業を故意に回避していた可能性が高いとも分析。委員会は来週前半、こうした内容を公表する。外務省、委員会の関係者が明らかにした。
朝鮮半島有事の密約や沖縄核密約のように、締結時に日米双方が互いの意図を明瞭に確認しながら署名した秘密合意とは違って、核密約が当初「暗黙の合意」の下に結ばれ、その後の確認作業を通じ段階的に確定していく歴史的経緯が報告書で示される見通し。これにより、50年前の日米安保改定以来、日米史の「最大の闇」とされてきた核密約が史実として確定する。(共同通信 2010/03/02)

66年に岩国で核兵器保管 米海兵隊、大使抗議で撤去
【ワシントン共同】ライシャワー元駐日米大使(在任1961〜66年)の特別補佐官を務めたジョージ・パッカード氏が15日、ワシントン市内で講演し、米海兵隊が66年に山口県の岩国基地内に核兵器を一時保管し、同大使の強い抗議を受けて撤去していたことを明らかにした。
米軍が秘密裏に核兵器を日本国内で一時保管していた実態が判明。ただ、パッカード氏は「知る限り、(こうした事例は)2度となかった」と語った。
パッカード氏によると、ライシャワー氏は岩国基地に核兵器が保管されていることを偶然知り、米国務省に対し、90日以内に撤去されないならば職を辞して、国防総省による日米安保条約違反を公にして批判すると通告。これを受け、米軍が撤去したという。
日本政府の核密約をめぐる調査によると、60年の日米安保条約改定時に核艦船の寄港容認に関する「『暗黙の合意』の萌芽(ほうが)」があり、63年のライシャワー氏と大平正芳外相(当時)の会談で「広義の密約」が確定した。ライシャワー氏が強く抗議したのは、核艦船の寄港容認の密約を超えて米軍が核兵器を岩国基地内に保管していたためとみられる。
パッカード氏は既に米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」で、米軍が66年に沖縄から本州へ核兵器をひそかに持ち込んでいたと明かしている。(共同通信 2010/03/16)

日本の核武装「懸念なし」 米科学者、先制不使用でも
【ニューヨーク共同】米科学者らで組織する「憂慮する科学者同盟」は23日、オバマ米政権が策定中の新核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」で「核の先制不使用」を宣言した場合も、米保守派が懸念する日本の核武装はあり得ないとする報告書を発表した。
NPRでは見送られる公算が大きくなっているが、報告書は日本政府当局者とのインタビューなどから「日本は先制不使用を支持する」と分析、オバマ政権に対し宣言に踏み切るよう促している。報告書は科学者同盟のグレゴリー・カラキ上級アナリストがまとめた。
報告書によると、カラキ氏は昨年、日本を何度も訪問、政府当局者や安全保障問題の専門家とインタビューを重ねた。
その結果、米政府が先制不使用を宣言しても日本政府は「米国の核の傘に対する信頼性が損なわれたとはみない」「核拡散防止条約(NPT)を脱退し、核兵器を保有することは安全保障上、利益にならない」と考えているとの確信を得た。
新たに入手した、日本の核開発に関する1995年の防衛庁(現防衛省)の未公開文書からも日本に核保有の野心はないと判断できるとした。(共同通信 2010/03/24)

安保改定時から密約認識 核持ち込み「明確に理解」
米軍核搭載艦船の日本領海への通過・寄港を容認した核密約に関連し、1960年の日米安全保障条約改定時に、藤山愛一郎外相が米国と交わした「秘密議事録」について、岸信介首相と藤山外相が密約だと認識していたことを示す米国務省文書が25日までに見つかった。同議事録には、通過・寄港を日米間の事前協議の対象外としたい米側の意向を反映した条項が盛り込まれており、文書は岸、藤山両氏がこの意味を「明確に理解していた」と記している。
安保改定時に日本側に密約の認識があったことを示す文書の発見は初めて。日米密約に関する報告書を3月に公表した外務省有識者委員会は、安保改定の3年後の63年4月、ライシャワー駐日米大使が大平正芳外相に「寄港は核持ち込みに当たらない」と伝えて以降「暗黙の合意」が固まり「広義の密約」になったと認定した。今回の文書はこれを覆す内容だ。
文書は、63年3月15日付で在日米大使館のアール・リッチー1等書記官が国務省の日本担当官ロバート・フィアリー氏に送った秘密書簡で、福島大の黒崎輝准教授が米国立公文書館で発見した。(共同)

米公文書館で発見の秘密書簡要旨

在日米大使館のアール・リッチー1等書記官が1963年3月15日付で、国務省の日本担当官ロバート・フィアリー氏に送った秘密書簡の要旨は次の通り。

一、フィアリー氏は62年2月12日付の書簡で、日米安全保障条約改定交渉の時、岸(信介首相)、藤山(愛一郎外相)が秘密議事録2項Cの意味を明確に理解していた、と記している。
一、事前協議に関連する条約交渉記録をすべて調べたが、協議用資料や会談記録など、いかなる種類の記録も見つけられなかった。
一、(日本への米軍)配置や戦闘作戦行動という、事前協議に関する他の問題点について文書が残っている点を考えると、(2項Cをめぐる)記録が欠如していることは重大な意味を持つ。
一、米大使館が当時、2項Cの解釈をめぐって日本政府との間で将来トラブルが起きる可能性を予見していた事実を踏まえると、なぜ岸、藤山両氏との協議記録がきちんと保存されなかったのか、理解に苦しむ。
一、(米軍)第7艦隊の艦船や航空機に搭載された核兵器の問題は、安保改定交渉時、あまりにも政治的に機微だった。そのため日本政府とのいかなる協議も、マッカーサー駐日大使と岸、藤山両氏の間に限定され、記録が残されなかったと(この時点で)結論付けざるを得ない。(共同通信 2010/06/25)

核密約で日本側「ひそかに同意」 61年、ケネディ政権
米軍核搭載艦船の日本への通過・寄港を認める核密約に関連し、1960年の日米安全保障条約改定後に登場したケネディ米政権が、61年の池田勇人首相との首脳会談用資料として、艦船や航空機に積んだ核兵器を日米間の事前協議の対象としない点について「日本政府は実際、ひそかに同意している」と明記した内部文書を作成していたことが1日、分かった。
共同通信がワシントン郊外の米国立公文書館で文書を入手した。
安保改定の時点で日本側が核密約の内実を認識していた実態が、安保改定を担当したアイゼンハワー政権からケネディ政権に引き継がれていたことを示す内容。最近、別の米国務省文書から、安保改定時の岸信介首相らが密約性を認識していた事実が判明しており、これを補強する新証拠だ。
文書は、61年6月20日からの日米首脳会談に備え、政策上の争点をまとめた同月14日付の秘密メモ。(共同)

核密約に関する米文書の要旨

1961年6月の日米首脳会談用に米国務省が作成した秘密メモ「池田首相のワシントン訪問」(同6月14日付)の要旨は次の通り。
一、原子力潜水艦が日常的に日本の港を出入りすることが望ましい。他の海軍艦船同様、横須賀と佐世保を利用したい。
一、原子力は日本で非常にデリケートな問題。原潜と言えば、即座に核兵器を連想するだろう。
一、国防総省の要請で、首相の訪米時、米原潜の日本寄港問題が取り上げられる。最初の措置として日本政府が原潜を招待することが望まれる。
一、日米安保体制の反対勢力は、米艦船寄港を容認する現在の取り決めへの(日本世論の)反発を呼び起こす要素として、原潜寄港問題を利用できる。
一、彼らが(艦船上の)核問題の懸念をあおれば、核兵器に関することは何にでも強く反対する日本人の大多数が共鳴する。米艦船の日本への進入をめぐる、申し分のない現在の取り決めが危険にさらされ得る。
一、条約上の取り決めでは、核兵器を日本に持ち込む前に(事前)協議が必要となるが、日本に立ち寄る艦船、航空機上の(核)兵器は問題としないとの点について日本政府は実際、ひそかに同意している。日本国民はこの秘密の取り決めを知らない。(共同通信 2010/07/01)

「三原則で核攻撃防げず」 68年、外務省が分析
佐藤栄作首相が非核三原則を表明した翌年の1968年、外務省の情報分析部局が「三原則を守って核攻撃を受けない保証はゼロだ」と指摘、抑止力確保の観点からは日本国土への核持ち込み容認が「有効」とする内部文書を作成していたことが、7日公開の外交文書で明らかになった。文書はまた、返還後の在沖縄米軍基地の在り方について「自由使用(核の持ち込みをも含めて)を前提として考えざるを得ない」と記載していた。
被爆体験を踏まえ、その後「国是」となる非核三原則をめぐり、表明直後から外務省内に異論があったことを示す内容。沖縄への核搬入についても容認論があった実態を浮き彫りにしている。核艦船寄港を認める核密約などを通じその後、三原則を空洞化させていく日本政府の「核抑止信仰」の根深さが読み取れる。
文書は68年5月23日付で国際資料部調査課(現在の国際情報統括官組織)が作成した「わが国の安全保障について」。外務省が7日午前、一般公開した60年の日米安全保障条約改定と72年の沖縄返還に関するファイル計37冊の一部。公開は、作成後30年が経過した文書の原則自動公開を定めた新制度で初の取り組み。
米国の核抑止力について文書は「日本の安全保障の基本」とした上で、独自核武装の選択肢を(1)米国が歓迎しない(2)経済的負担が極めて大きい−と否定。一方で「三原則を守った場合、日本が核攻撃を受けない、あるいは紛争に巻き込まれないという保証はゼロ」とし、「純粋に抑止力という見地から言えば西ドイツのように自国に核を持ち込ませることが有効だというのがむしろ論理的結論」と主張している。
さらに、国民感情などから当面は三原則見直しは得策でないとしながらも、70年の日米安保条約の自動延長を念頭に「冷静な検討、先入観にとらわれない政策樹立」が重要と強調。「安全保障を冷静に考えないような国民の心理状態」を改めるために「教育、啓発」が必要としている。(共同通信 2010/07/07)

米、「核抜き」に難色=抑止力低下を懸念−外交文書
1972年の沖縄返還をめぐり、日本側が求めていた「核抜き」返還に米側が交渉の最終局面まで難色を示していたことが、外務省が7日に公表した外交文書で裏付けられた。68年6月に当時の三木武夫外相とジョンソン駐日米大使の会談録では、沖縄からの核兵器撤去を求めた三木氏に対し、米側は「基地の有効性を減殺する」などと抑止力への悪影響を懸念して強く反論していた。
ベトナム戦争を背景に、米軍内では沖縄の戦略的重要性から核撤去への抵抗感が強かった。日米は69年の首脳会談で核抜き返還で合意したが、その際も佐藤栄作首相とニクソン大統領が、有事の場合は核再配備を認める内容の合意議事録を秘密裏に交わしていたことが明らかになっている。公開された文書によると、三木氏は会談で「世論は圧倒的に核抜き・本土並み(返還)に固まりつつある」と指摘。しかし大使は「日米間のはっきりした合意により沖縄に核兵器がないということが共産側に知られれば、沖縄の戦争抑止力を低下させることになる」などと切り返している。 
一方、70年の下田武三駐米大使とマケルロイ米国務省日本部沖縄担当官の会談録では、返還に伴い日本国内で沖縄基地の整理縮小を求める声が高まっていたことについて、マケルロイ氏が「米側の極東戦略はますます沖縄を基点にして考えられることとなる。期待を掛けられたら将来失望することになる」などと否定的見解を示したことが記録されている。
60年の日米安全保障条約の改定に関しては、日本の憲法問題などを理由に条約対象地域から当時米国の施政下にあった沖縄と小笠原を除外した経緯などが記されている。
7日に公開されたのは、安保改定と沖縄返還に関する文書ファイル37冊で、計約8000ページ。作成から30年を経過した文書を原則公開するとした外務省の新規則が初めて適用された。東京・麻布台の外交資料館で閲覧できる。(時事通信 2010/07/07)

独自核武装肯定論が一部に台頭 外務省が外交文書公開
1968年採択の核拡散防止条約(NPT)への参加の是非をめぐる60年代末の外務省内の議論で、米国の「核の傘」喪失や中国の核開発に対する懸念から、日本の独自核武装に肯定的な意見が一部に台頭していたことが29日、開示外交文書で分かった。日本は70年の署名から76年の批准まで6年余りの歳月を要したが、その背景に一連の懸念と核武装論が存在した実態が読み取れる。
同時に、核保有の選択肢を温存しながら、NPT体制下で原子力平和利用を進める方策が検討されていた事実も明らかになった。佐藤栄作首相が67年に非核三原則を宣言する背後で、核のオプションが論じられた被爆国の裏面史を伝えている。
66年11月作成の「日米政策企画協議記録」によると、牛場信彦外務審議官は米側に対し「(NPT加入で)永久に二流国として格付けされるのは耐え難い。中国の加入見込みがないのに日本が行動の自由を放棄することに鑑み、条約期限は3〜5年の短期間とすべきだ」と主張した。
68年11月20日の省内協議では、仙石敬軍縮室長が「(日米)安保条約がなくなったら国民感情は変わるかもしれない。その時に脱退して核兵器を作れと国民がいえば作ったらいい」と発言。鈴木孝国際資料部長は「すぐ核武装できるポジションを持ちながら平和利用を進めていくことになる」と、兵器転用可能な平和利用の道筋に言及した。
矢田部厚彦科学課長が用意した討議資料は「(核の傘に)安全保障を委ねきって安心していられる時代がそう長く続くとは思われない。85年までに日本は核兵器国となっている」と記している。
69年4月の省内協議では、社会党(現社民党)が政権を取り日米安保条約を破棄すれば「中国が核を背景に日本の国益を害する行動を取る恐れ」があると指摘され、NPT脱退の権利を担保する必要性を議論。同省外交政策企画委員会が作成した「わが国の外交政策大綱」には、「当面核保有しない政策を採るが、核製造の経済的・技術的潜在能力は常に保持する」との文言が明記された。
また外務省は29日、69年に旧西ドイツ政府と核保有の可能性を議論したことを事実上認める調査報告を発表。西ドイツ側関係者は外務省の聴取に「日本側から核保有の可能性に関する発言を聞いた」と証言したという。(共同通信 2010/11/29)

開示された外交文書の要旨 

開示された外交文書の要旨は次の通り。
▽1966年11月付「日米政策企画協議」での牛場信彦外務審議官発言
核拡散防止条約(NPT)に加入する結果、永久に二流国として格付けされるのは耐え難い。中国の加入見込みがないのに日本が行動の自由を放棄することに鑑み、条約期限は3〜5年の短期間とすべきだ。
▽68年11月20日付、外務省「外交政策企画委員会」での発言
(日米)安保条約は永久に続くわけではない。安保条約がなくなったら国民感情は変わるかもしれない。その時に脱退して核兵器を作れと国民がいえば作ったらいい。(仙石敬軍縮室長)
高速増殖炉等の面で、すぐ核武装できるポジションを持ちながら平和利用を進めていくことになるが、これは異議のないところだろう。(鈴木孝国際資料部長)
現在日本が持っている技術で爆弾1個作るには、半年〜1年半ぐらいあればいいと言われる。起爆装置もその気になれば半年〜1年ぐらいでできるのではないか。(矢田部厚彦科学課長)
米ソの核抑止力による安全保障体制が崩れた時は、NPTも消滅せざるを得ない。中国の核戦力は拡充されていくだろう。米国の核抑止力に安全保障をゆだねきって安心していられる時代がそう長く続くとは思われない。85年までに日本は核兵器国となっている。(矢田部課長の討議資料)
▽69年4月30日付「外交政策企画委員会」での発言
現在と違う政権ができて安保条約を破棄した場合、中国が核を背景に日本の国益を害する行動をとる恐れがある。(金沢正雄参事官)
基地は撤去しろ、米軍は撤退しろという議論をしつつ核抑止力だけは続けてくれというのは虫がよすぎる。(大河原良雄参事官)
もし実際に中国が日本に対する脅威になってくれば(条約脱退を規定した)第10条を援用して脱退することはあり得る。(小木曽本雄参事官)
安保条約がなくなっても、日本が(NPT)入っていた方が、米国が核の傘をかぶせてくれる可能性は多い。脱退したらほとんどなくなってしまうだろう。(斉藤鎮男官房長)
▽69年9月25日付、外交政策企画委員会作成「わが国の外交政策大綱」
当面核保有しない政策を採るが、核製造の経済的・技術的潜在能力は常に保持する。
▽69年11月7日の自民党会議での発言
NPT調印の時期はまだ具体的に考えていない。(愛知揆一外相)
25年にわたり核非保有の義務を課す重大な問題点を含む。日米安保条約の将来、中国の動向を見極めてから批准したい。調印には賛成だ。(有田喜一防衛庁長官)
米側に安保条約を破棄されてから核問題を考えるのでは間に合わないし、中国の核に米国が反撃してくれるか確信が持てないからNPTには賛成できない。(出席議員)

外務省調査報告書の要旨 

外務省調査報告書要旨は次の通り。
一、旧西ドイツ外務省のバール政策企画部長(当時)は日本外務省の聴取に対し、1969年2月4、5両日に神奈川県箱根で開かれた会合で、「日本側から核保有の可能性に関する発言を聞いた」と証言した。
一、バール氏によると、日本側代表を務めた鈴木孝・外務省国際資料部長は「朝鮮半島などから脅威が発生した場合、核兵器を作ることが可能になった」と主張。また日本側は「米国から自由になることを目的に協力しよう」との趣旨の発言をした。
一、バール氏が当時のブラント外相に提出した報告書によると、日本側は「核拡散防止条約(NPT)署名後、10年から15年のうちに異常な事態が生じるとみている。例えばインドの核武装や、米国が中国による核能力に関し取引を行うことなどだ」と述べた。
一、西ドイツ側の文書やバール氏への聴取では、会合などで核兵器保有の可能性に関し議論されたとする10月3日放映のNHK番組の内容に、部分的に符合する箇所もあった。
一、日本側出席者から、報道されたような内容に関連する発言が何らかの形でなされた可能性を完全に排除することはできない。
一、外務省関係者が会合で、NHK報道にある「10年から15年のうちに核保有を検討せざるを得ない非常事態が起こると考えている」などと発言したことは、日本側の記録には含まれていない。(共同通信 2010/11/29)

日本核武装論「被爆者だましていた」 当時の政府へ長崎から怒りの声
1968年採択の核拡散防止条約(NPT)への参加の是非をめぐる60年代末の外務省内の議論で、日本の独自核武装に肯定的な意見が一部に台頭していたことが29日に開示された外交文書で分かった。米国の「核の傘」喪失や中国の核開発に対する懸念からで、日本が70年の署名から76年の批准まで6年余りの歳月を要した背景になったとみられる。
被爆地長崎では、当時の政府への怒りの声が聞かれた。
長崎原爆被災者協議会の谷口稜曄会長(81)は「聞いたことのない話だ。原爆投下から二十数年でこの国は国民の苦痛を忘れてしまっていたのか。苦しい生活を強いられていた当時の被爆者をだましていたことにもなる。許されんことだ」と憤った。
日本の核武装論に詳しい土山秀夫元長崎大学長(85)は「あのころの核武装論者が先走った。西ドイツを抱き込んで一緒にやろうとしたが失敗した」と指摘。69年ごろから4年をかけて当時の内閣調査室が、日本の核武装のメリットとデメリットを専門家らに調査検討させ「日本は核武装の能力はあるが、すべきでない」という結論だったこと、さらに後年、当時の防衛庁内のチームが検討し「国益に沿わない」と結論付けている点を挙げ、「日本の核武装論は少なくとも2度、否定されている。しかし、それでも外務省OBの中には『日本は核武装できる』ということをちらつかせることが外交上、有利になると考えている人間がいる」と強調した。(長崎新聞 2010/11/30)

日本の核武装を予測=北朝鮮に対抗−シンガポール顧問相
【ワシントン時事】シンガポールのリー・クアンユー顧問相が2009年、北朝鮮の核開発に対抗し日本が核武装すると予測していたことが分かった。1日までに内部告発サイト「ウィキリークス」が公表した米外交公電に記載されていた。
同顧問相は同年5月30日、シンガポールで開かれた「アジア安全保障会議」に合わせ、スタインバーグ米国務副長官と会談。内容を記した公電は翌月4日、在シンガポール大使館から国務省に発出された。
公電によると、スタインバーグ副長官は、北朝鮮の(核保有をめぐる)決定は日本に影響を与えると発言。顧問相は、その場合、日本は「核武装に進む」に違いないと応じた。
顧問相はさらに、中国は日本の核保有を計算に入れると同時に、そうした事態になっても、北朝鮮の崩壊に伴い、米軍が駐留する韓国との緩衝地帯を失うよりましだと結論付けているとの見方を示した。(時事通信 2010/12/01)

米、憲法9条は防衛協力の障害 日米同盟で議会報告書
【ワシントン共同】米議会付属の議会調査局が今年1月にまとめた日米同盟に関する最新報告書で、戦争放棄をうたった憲法9条に基づき、集団的自衛権は行使できないとする日本政府の解釈が、より強固な日米の防衛協力を進める上で障害になっているとの見方をあらためて強調していたことが10日分かった。
米政府は、北朝鮮の核搭載ミサイルが5年以内に米本土への「直接の脅威になる」(ゲーツ国防長官)と警戒している。報告書はミサイル発射などの可能性を念頭に、米国が攻撃を受ける局面でも日本は何の対応もできないと懸念を示した。
報告書は「憲法と法的な制約」と題した項目で、日本側の幾つかの法的要因が日米協力の足かせになっていると指摘。最も根本的な問題は「戦後の占領期に米国が起草し、『国権の発動』としての戦争を放棄して『交戦権』を禁じた日本国憲法9条だ」とした。
さらに自国と密接な関係にある国が武力攻撃を受けた場合、自国が直接攻撃されていなくても実力で阻止できる集団的自衛権についても、日本政府が行使できないと解釈していることが「密接な防衛協力にとって障害」と問題視した。(共同通信 2011/02/10)

「広島に原子力施設」 1955年、米構想に日本賛意 原発輸出に呼応
被爆地広島に核センターなどの原子力施設建設を検討していた米国に対し、日本政府の重光葵(まもる)外相が1955年、賛同し、協力を表明していたことが、秘密指定を解除された米国立公文書館の国務省文書で分かった。米国の原発輸出解禁に呼応した日本政府の対応の一端を示すものといえる。これまで米下院議員が広島に原発を建設しようとしたことは知られていたが、日本政府の賛意表明が明らかになったのは初めて。(編集委員 徃住嘉文)

文書は、東京の駐日米大使館が米国務省に宛てた外電に添付した重光外相の55年11月2日付発言録。それによると、外相はアリソン米大使に「米国は広島にアジアの核センターを検討していると聞く。喜んで協力したい」と申し出た。核センターは、核の調査、訓練機関。(北海道新聞 2011/08/02)

日本への核配備狙う 50年代に米、平和利用協力で心理的壁打破
米政府が、日本への原子力技術協力に乗り出した1950年代半ば、原子力の平和利用促進によって日本国民の反核感情を和らげた上で、最終的には日本本土への核兵器配備にこぎ着ける政策を立案していたことが4日、米公文書から分かった。
米公文書は、当面は核兵器配備に触れずに「平和利用」を強調することで、米核戦略に対する被爆国の「心理的な障壁」を打破できると指摘。米国の原子力協力は54年3月の第五福竜丸事件を機に本格化したが、米側に「日本への核配備」という隠れた思惑があった実態が浮かび上がった。
日米史研究家の新原昭治(にいはら・しょうじ)氏が米国立公文書館で関連文書を入手した。
フーバー国務長官代行は55年11月18日付のロバートソン国防副長官宛て極秘書簡で、米統合参謀本部が核兵器を日本に配備する必要があると判断した経緯を記載。
「平和利用」への理解が深まれば「軍事的な原子力計画」への理解も進み、日本人の「心理的な障壁」を弱められるとの国防副長官の指摘を受け、米核政策への「好意的な理解」を日本の指導層に広めるため国務省と国防総省が「共同研究」を進めることに賛同した。
またスミス国務長官特別補佐官は、56年12月3日付のグレイ国防次官補への極秘書簡で「日本での核兵器貯蔵に対する政治的障害を減らす方策」が、アリソン駐日大使とレムニッツァー極東軍司令官の間で議論される見通しを説明。この問題で対日交渉を急ぐのは「危険」とした上で、当面は日米間の原子力協力に専念することで「米国にとって最善の結果」が得られるとの見方を示した。
他の公文書によると、米軍内では54年から日本への核配備を求める声が強まるが、国務省が第五福竜丸事件後の日本の対米感情悪化を踏まえ反対。米軍部は核分裂物質を含む核兵器の中核部分「核コンポーネント」の配備を目指すが、核分裂物質を含まない「非核コンポーネント」が54年末ごろに日本に搬入された。軍部は以降も日本への核配備を模索したが、最終的に実現しなかった。(中国新聞 2011/08/05)

石原慎太郎都知事:「原爆の模擬実験はスパコンで可能」
東京都の石原慎太郎知事は5日の定例記者会見で、日本の防衛戦略について「米国は新しいニュークリア・ウォーヘッド(核弾頭)のシミュレーションをやった。日本だってそのくらいのことをやったらいい。持とうと思ったらいつでも持てますよ、と。スーパーコンピューター駆使すれば原爆のシミュレーションなんかすぐできる」と述べた。
続けて石原知事は「日本は強力な軍事国家にならなかったら絶対存在感失う。北朝鮮、中国、ロシアが日本の領土をかすめ取ったりかすめ取ろうとしている。核を持って、歴然と敵意を持っている国に間近に囲まれているのは日本だけだ」と危機感を強調した。
ただ核武装は主張せず、「米が核弾頭を積まない新しい戦略兵器の開発を言い出した。そういう核に関係ないものを日本が作る努力をしたらいいじゃないか」とした。【柳澤一男】(毎日新聞 2011/08/06)

核兵器関連企業に300社が資金 豪NGOが報告書
【シドニー共同】オーストラリアの非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」は4日までに、核兵器の製造などに関わる企業として米ボーイング社など6カ国の計20社を選び、2008年以降の資金調達状況の報告書をまとめた。日本など30カ国の322の金融機関が資金調達に携わり、融資などの信用供与だけでも少なくとも計約487億ドル(約4兆円)相当に上るとした。
核関連企業との全取引を排する金融機関がある一方、多くは核兵器製造などを使途とする取引の禁止にとどまっていると報告書は指摘。一般業務目的と使途を明示せずに行われた融資などの一部が核兵器製造に使われているとして「間接的に核兵器開発を後押ししている」と、金融機関に取引の停止を求めた。
報告書は決算書などに基づき作成、5日に公表される予定。ボーイングなど世界的な巨大企業との全面取引停止はビジネス上容易ではないが、核関連企業との取引の排除規定を持つオランダの大手銀行ラボバンクなど2金融機関は調査対象の20社との取引は見つからなかったという。
日本では三菱UFJとみずほ、三井住友の各フィナンシャルグループが計約35億3000万ドル(約2886億円)相当の信用供与を、野村証券や大和証券グループが社債発行の引き受けなどをしていたと指摘。各機関は「個別の取引についてお答えできない」(三菱UFJ)などとしている。
一方、みずほグループによると、傘下のみずほコーポレート銀行は核兵器製造などを使途とした融資はしないと規定。大和証券グループは「核廃絶の視点をビジネスにどう組み込んでいけるのか、検討課題としたい」としている。(共同通信 2012/03/04)


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